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やさしい世界の創り方

note公式お題企画「#読書の秋2022」の課題図書の一冊、「マイノリティデザイン」を読んだ。おそらく課題図書になってなければ出会うことはなかった本だと思う。

選んだきっかけ

普段読まないような本をしっかり読んでみようと、課題図書をざっと眺めていた時に目に留まった一冊。
目を引くカラーの表紙、「マイノリティ」「デザイン」と各単語はわかるけど聞いたことのない組み合わせのタイトル、表紙に印刷された点字。

コピーライトも福祉の世界も、今自分が携わっている仕事とは縁遠い世界ではあるけど、「弱さ」を生かせる社会を作ろう、というフレーズは今の仕事の根本にあることに近い直感があり、この本を読んでみることにした。

結論からいうと、この直感は正しかったと思う。
本書を読んでみて、自身の仕事や生き方につながるヒントや共感をたくさん見つけることができた。

そもそも「マイノリティデザイン」とは何か

筆者はマイノリティをかなり広い意味でとらえている。
いわゆる社会的弱者ではなく、様々な弱さを持つもの、例えば運動が苦手な人は「スポーツ弱者」といった感じで、人はみな、何かの弱者・マイノリティであるととらえる。

きっかけは障害を持つ息子の誕生。
元々広告業界でコピーライターとして働いていた筆者は、生まれつき目が見えない息子の誕生をきっかけに価値観が大きく転換し、働き方・生き方を変えていく。
そして、「弱さ」が新しい価値になると気づき、すべての「弱さ」は社会の「伸びしろ」ととらえ、マイノリティを起点に世界をよりよくすること、これを「マイノリティデザイン」と名付け、人生のコンセプトとした。

共感ポイント

本書を読んで強く共感したのは、身近な人をきっかけに自分の仕事や生き方に大きな影響を受けた点だ。

私自身、3年ほど前に転職して、交通という今の仕事に携わっている。
転職のきっかけは「移動弱者」と呼ばれる人が増えており、その解決に少しでも関わりたいと思ったことだ。

「移動弱者」とは、マイカーに頼れず、また、公共交通が不便な地域に住んでいるといった理由で、買い物などの日常移動に不自由を強いられる人を指す。公共交通が不便でマイカー生活が当たり前だったにも関わらず、運転に不安を感じて免許返納した老人、などが該当する。そして「移動弱者」は地元にいる私の両親も当てはまる(正確には、まだ予備軍だが)。

公共交通の世界は課題がたくさんあるものの、モビリティ分野の技術発展で解決の糸口が見えているものも出てきている(本書からはそれるが、100年に一度の「モビリティ革命」と言われている)。AIを使った効率的な配車技術や自動運転が一例である。自動運転は、まだ公共交通を補う域には達していないが、自分で運転しなくてもある程度自由に移動ができるようになるという点では期待は大きい。現在、私はそういったプロジェクトにも関わっており、次世代技術の早期社会実装を目指している。

気付いたこと

本書を読んで気付いたのは、「課題を解決するぞ!」と構えなくてもいいんじゃないか、ということだ。

「移動弱者」は、交通事業者や行政が課題意識をもって解決せねばという意志を持って取り組んでいることが多いが、同じ言葉でくくったとしても「移動弱者」が求めているものは地域によって千差万別である。
もっとゆるっと、地域住民と共に、一緒に考えながら取り組むやり方もあるのではないだろうか。

本書では、「ゆるスポーツ」の立ち上げからそれを生態系に発展させていく過程やクリエイティブとしての「マイノリティデザイン」のつくり方についても書かれている。
そのまま自分の仕事に適用できるわけではないが、『つくって終わり』ではなく、生態系として成長する『つくって始まるクリエイティブ』の考え方は非常に重要だし、興味深い。

おわりに

読み終えて最初に思ったのは、課題解決を「マイノリティデザイン」で実現できれば、やさしい世界が創れるだろうな、ということだった。

弱さをなくす、ではなく、弱さを生かして、少しでも世界が良くなればいいなと思う。

以上

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