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【まわりみち日記】8月21日:令和の文通

先日知人がSNSで「新しい万年筆を買ったので誰か文通しませんか?」と呼びかけていたので「えっ何それ面白い!この時代SNSでいつでも気軽にやり取りできるのにわざわざ文通するのやりたい!私は万年筆持ってないけど、やりますー!はーい!」と元気よく挙手した。300人くらいフォロワーのいる知人だったが、結局手を挙げたのは私一人だったらしい。私がいなかったら涙で枕をビショビショにするところだったと感謝された。こちらこそワクワクするような提案に感謝だ。

知人からは味のある厚紙封筒に同じく味のある厚紙便箋と一枚の風景写真が送られてきた。人と手紙のやり取りをするのはいつぶりだろうか。スマホを開けばすぐにでもその人にメッセージを送ることができるのに、その手紙に対する返信はDMに打ち込まずに自分の手で文字を綴るのだ。このアナログのもどかしさ、楽しい。ギリギリ昭和生まれとは言え、中学生の頃から携帯電話を持っていたので、自分で文字を綴って相手とコミュニケーションを取るのは、小学校の交換日記や授業中の手紙の交換以来かもしれない。

知人は縦書きで4枚にわたって手紙を綴ってくれていたので、私も同様に縦書きで複数枚書こうと思って書き始めたが、縦書きで綺麗に真っ直ぐ文字を書くのはどうやるのだったっけと思うくらい文字が踊ってしまい、縦書きは断念して横書きに切り替えた。近年の双方向コミュニケーションは基本的にテンポがよい。LINEやDMは吹き出しマークが交互に連なるようにテンポよく短文でラリーを進めるのが主流だ。一方で手紙は双方向コミュニケーションであるけれど、自分のターンが長い。「◯◯さんは今何にハマっていますか?」「◯◯さんは最近何を聴いていますか?」などと問いかけても当たり前だがすぐに返事がもらえる訳ではないので、続けて自分の話をするしかない。心ゆくまでずっと自分のターン。最近の1on1コミュニケーションではあまり起こり得ないことだったので、それがとても新鮮に感じられた。

書いた手紙に封をして、そう言えば切手を貼るときって水に濡らすんだったなということを思い出し、そんな初歩的なことも今となっては貴重な体験だなと噛み締めながら、近所のポストに投函した。スマホ一つで一瞬で言葉を届けられる時代だからこそ、この一手間一手間の体験が楽しい。家に戻り自宅のポストを覗いたら、先日帰省した時に会った姪っ子から手紙が届いていた。下半期の私のキーワードは「文通」になるかもしれない。姪っ子用のシナモロールのレターセットを取り出してまた手紙を書き始めた。


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