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アライグマシンポジウム備忘録、その3

「アライグマの被害対策と個体数管理について
 山本麻希(新潟ワイルドライフリサーチ副会長 長岡技術科学大学准教授)」

2.アライグマの個体数管理

野生動物被害対策の3本柱
被害防除→電気柵などで農作物を守って被害を減らす直接的防除
個体数管理→野生動物の数を調整して被害を減らす直接的防除
生息地管理→集落周辺の草刈り等による間接的防除

外来生物の場合は個体数管理がとても重要な意味をもつ。


中型獣の捕獲
折り畳み式メッシュ箱罠を用いる。

「株式会社三生」の箱罠https://www.sanseikouki.co.jp/product/008.php

→罠に動物が入るとトラップとともに窓が全て閉まりただの箱になる。外からは見えない→スレ個体を作らない密閉型箱罠

サージミヤワキ株式会社 楽捕りー(らくとりー)https://surge-m.co.jp/home/download/rakutori/

アライグマだけが触れるトリガー。アライグマがトリガーを引くことで扉が作動。
誘因餌→コーン菓子、揚げパン、果物、ピーナッツバター、えびせん…アライグマは多用な餌の好みがある。

エッグトラップ
アライグマのくくり罠に近い。他の動物がかかりにくくアライグマだけがかかる罠。


輸送も止めさしも安全に実施しましょう

画像:サージミヤワキ株式会社

サテライト(輸送BOX)で輸送が可能。隠れたい心理を利用するのでアライグマがスムーズにサテライトに移動する。


狩猟免許非保持者への規制緩和
・H29年度から家の敷地内、農業者の事業地内で小型の箱罠(もしくはつき網)で、アライグマ、ハクビシン、ヌートリア等の鳥獣を捕獲する場合
・ただし1日1回以上の見回りを実施するなど、錯誤捕獲により鳥獣の保護に重大な支障が生じないと認められる場合。
・許可を出すのは市町村・県→法廷猟具の使用、適切な殺処分の方法の啓発。罠を仕掛ける際の見回り義務、保険の確認。

動物福祉を考慮した捕獲
・安楽殺:人道的方法により迅速な無意識化とそれに続く苦痛を伴わない死をもたらす方法
できるだけ肉体的及び心理的苦痛を与えないようにするために安楽殺に近い状況を作ることが大切。→捕獲後の放置、餓死、水に沈める窒息死などは法律違反となる。
無免許の人はこのような知識がないので許可を下す前にしっかり講習しないと大変なことになる。許可を下す時はしっかり講習を行うこと。

薬剤を使用する安楽殺もあるが獣医師でないと用意ができないため一般の方は別の方法行う必要がある。
(日本獣医師会による特定外来生物の安楽殺処分基準)




安全な止めさしの技術
・電気止めさし器…安全に配慮した商品を使うように。(国の基準がまだない)
・二酸化炭素と小型罠のセット→北海道アライグマ防除技術指針。

(画像:サージミヤワキ株式会社)


被害防止のための集中捕獲
・被害発生直前(完熟前)に捕獲開始。動物は必ず被害を出す前からその場をチェックしに来ている。
・罠の個数はできるだけ多く。
・毎年被害のある場所と移動河川を中心(アライグマの場合)に。先回りして捕獲する。


アライグマは根絶できるか?
千葉県塩田川流域での集中捕獲の論文より
9km×3.5km=35㎢の地域に9ヶ月間、箱罠100個、平均近傍距離301m
集中捕獲したところ…

個体数の変化
集中捕獲によってメス成獣、幼獣は地域への定着性が高いためきちんと集中捕獲によって生息密度が減少するが、オスの完全制御は困難。
オスは行動範囲が広いため分布を拡大する性質がある。ある一定のエリアで捕獲をして密度を下げても隣の分布域から次々と流入してきてしまうと密度を減らすことができない。
(アライグマの行動範囲…メス0.1~1.4km、オス2.3~33km(最大275kmの記録あり))


アライグマは根絶できるか?
・集中捕獲(罠を200~300mに1つ設置、3ヶ月)で低密度化することは成功した。高密度から低密度にすることは可能のよう。
特に定着メスを排除することによって個体数の増加速度を落とすことができる。遅滞層の実現することができる。
・一方オスの完全制御は困難か?近くにある高密度地域からの移入があるため
数の少ないうちに早めの捕獲を。
ある一定エリアで集中捕獲する場合はそれより少し広域なエリアで協力して行わなければ根絶は難しい。


広域捕獲実施場所時期は?

生息数を減らすためにメス成獣を主なターゲットとする。→交尾期1~3月、出生3~5月に増やさない
メスのいるところ…幼獣の捕獲地点、メス成獣の捕獲地点 捕獲記録の集落単位分析、神社仏閣調査

広域調査の手順(1)

1.夏~秋に目指すや幼獣がどこにいるか位置を特定する
神社仏閣痕跡調査、カメラトラップ、モニタリングのための捕獲
500~1000mメッシュに数個ずつ配置
聞き取り調査(屋根裏の物音など)

広域調査の手順(2)
2.交尾~出生期(1~5月頃)に集中捕獲
250mメッシュごとに1~数個ずつ。繁殖地点が特定されたら罠で包囲、メス成獣を確実に捕獲していく
4月~生まれたての個体が獲れたら危険である。
基本捕獲は水系単位で実施


個体数管理のまとめ
・毎年集落内に増えた個体は箱罠を使用して捕獲する。アライグマについては専用の捕獲罠が便利である。

・アライグマは水系沿いに分布を拡大するので神社仏閣調査等である程度分布範囲を確認し、その後カメラで確認する。

・被害が出る前に集中捕獲を始める。農地を防除し集中してメスや幼獣がいるエリアに捕獲圧をかける。

・止めさしは動物福祉に配慮し安楽殺を実施する。


つづく🐦

引用画像を複数点使用しておりますが、それらは環境省等から配布されているもの、各社ホームページより引用したものを使用しております…のでシンポジウムで発表されていたスライドとはやや異なります。(スクショして参考資料として手元に保存しておりますが無断転載になってしまうので掲載しておりません)

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