エンゲージメントを測定する

従業員のエンゲージメントを測定する方法には何があるのか、世間的にどのような事が言われているのか、ちょっと暇な時に考えていました。

How to measure employee engagement metrics

日本語の文献はほぼ見つけられてないですが、海外だとこの話題はよく語られているようで、色々な記事がヒットします

このうち、それらしい SaaS を提供している Vultus Inc.Linked In で書いている記事を取り上げてみてみます。
(理由は、metrics の種類が一番少ないので楽そう)

Engagement metrics

以下7つが定義されていました。

この中には、アンケートなどを取らないと把握が不可能な指標もありますし、従業員の行動や実績を観察することで把握することができる指標もあります。

メトリクス測定が容易と思われるものは以下。

3. Employee Retention Rate
7. Attendance and Punctuality

以下については工夫しだいで測定できるかもしれない。

4. Productivity Metrics
5. Employee Feedback and Suggestions

以下は、アンケートなどの定性的な手法によらず、デジタルに測定が可能そうなメトリクスについて、それぞれ私見を記載していきます。

Employee Retention Rate (定着率)

基本的に「離職率」を見れば良さそうです。この数字が低く、長期に渡って働いてくれる従業員が多いようであれば、定着率については高い評価ができそうです。
ただし離職率は0%でない限り、潜在的な何かしらの要素はあるとは思われます。重要な社員の turnover に繋がる前に assesment は定期的に行うのが良さそうです。

Attendance and Punctuality (勤務状況)

「事前予告の無い病欠」の比率を定期的にトラッキングすることで、ある程度測定できそうです。何か心理的に「会社に行きたくないな」というストレスを感じているメンバーは、逃げ道として「病欠」という手段を取ることが多いからです。

これは自分の肌感覚としてもしっくりきます。以前とある会社で技術部長をしていた事があったのですが、組織崩壊時(私のjoin直後)はメンバーの病欠率が極めて高く、チームの状況を改善した後は顕著に下がった、という実例があるからです。

もちろんインフルエンザの蔓延など、「病気」には流行や季節要因があるので、集計の際に seasonality をうまく指標に取り組めると、annomally な状況を把握することはできそうだと思います。

実際に、直近の組織でも集計を行ってみましたが、チームリーダーがメンバーとコミュニケーションを密にしているチームほど病欠率が低く、そうでないチームは病欠率が高い、というのが有意差を以て数字に表れました。

Productivity Metrics(開発生産性)

何をもって開発生産性とするか、の指標は定義は難しいと思いますが、多くの組織で測定しようと取り組みが行われている分野かなと思います。
測定されている会社であれば、エンゲージメントの指標としても有効に活用できそうです。

データを集めているが形骸化していて役に立っていないような組織の場合、測定するという行為自体が従業員のエンゲージメントを下げる効果があるので注意が必要です。
開発生産性の測定にはエンジニアの協力が不可欠で、それなりに定期的に労力を割いてもらう必要があることが多いです。それなのに集めたデータが活用されてないようであれば、「会社に言われた事を守るのがつらい」「言う事を聞くことに意味がない」という気持ちにつながり、結果的にエンゲージメントが下がります。

Employee Feedback and Suggestions(従業員のフィードバック)

個人的にこの指標は、業務に関わる・関わらないによらず、「会社のために何か貢献したい」という気持ちを従業員がどの程度所持しているか、の指標という印象を持っています。

測定しようとした場合、業務外の活動、業務とは言えない活動に対して、メンバーがどの程度協力的でいるか、を測定することである程度可視化できそうです。

まず最初に考えられそうなのが、組織がよく行う各種アンケートの回答率。これは集計すると顕著に状況が表れそうです。

各種イベントへの参加率、でも測定が可能と思われます。
たとえば、以下のようなリアルイベントへの参加率

・組織で定期開催している週次・月次イベント(TGIFや、月次振り返り会等)
・会社の全体会
・懇親会

これらの参加率が低い、もしくは下がっているようであれば、イベント主催側の問題もあるとは思いますが、会社に対する従業員のエンゲージメントが下がっている兆候になります。
(「参加しても意味ないんでしょ?」「 そんな無駄な事に関わりたくない」「どうせ一部の人が楽しむだけ」等々の心理状況の発露。)
必須参加のイベントで参加者での測定が意味がない場合、参加している人たちの発言数や、発言者の異なり数(色々な人が発言をしているか)等を見ると参考になると思います。

また、Advent Calendar などのバーチャルイベントについての参加率も、ひとつの指標になると思います。
会社によっては、「社員は増えているのに Advent Calendar の参加者が減る」みたいなことが起こることもありますが、これは社員のエンゲージメントが顕著に下がっていることを如実に表しています。
「面倒くさい」という感情もそうですが、「この会社でアピールしても自分には得にならない」「逆に宣伝に加担したくない」みたいな心理状況が発露している可能性が高いからです。
技術ブログなどについても、同じような事が言えると思います。

何がエンゲージメントを上げるのか/下げるのか

上げる方法というのは千差万別で、会社や組織の抱える課題に左右されることが多いとは思います。

ただ、下げる原因というのは極めて明確な部分があると思います。
その1つは「リーダーが自分のことしか考えてない組織はエンゲージメントが下がる」です。

開発生産性の測定のための工数を従業員に入力してもらってるけど、集めるだけで何にも使わない。メンバーからも苦情が寄せられている。にも関わらずその状況を放置していても平気でいるリーダー。
自分が酒が好きだという理由で社員の交流の場を遅い時間に開催する飲み会前提にし、子育て世帯や時短で働く方々を切り捨てて、いつも取り巻きに囲まれて嬉々としているリーダー。
まわりにもいませんか?

こういうリーダーを許容している組織が、結果的にメンバーのエンゲージメントが下がり、結果優秀な社員から離反し、最終的にそれらのリーダーや会社が苦しい思いをする。こんなのは「因果応報」としか表現ができません。

「エンゲージメントが大事だ!」と行動に移そうとしても、メンバーのエンゲージメントの水準が低い状態だと、「従業員満足度」「eNPS」などのメンバーに協力を強いる指標の測定をツールやSaaSで行っても、満足な意味ある回答が届かないケースが多いです。

上記でピックアップしたメトリクスは、リーダーがその気になりさえすれば、従業員に負担をあまりかけることなく、従業員の行動を観察し測定することで会社のエンゲージメントの状況を把握できるものです。
まずはこういったデータについて測定し、もしくは状況に気を配ることで、会社のエンゲージメントを向上する活動について進めていくことが、よい組織づくりには大事な観点な様に思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?