求めよ、さらば与えられん

N国とZ国両者の開戦のニュースを最初に知ったのは日本行きの飛行機を空港の待合室で待っている時であった。両国は隣国で、ある資源が産出される領土をめぐって熾烈な政争が行われていたのはもちろん知っていた。しかし、実際に戦争が起こるとまでは思っていなかったので、このニュースを知った時は正直驚いた。ただ、このニュースを見たとき私は「確実にZ国が勝つ、あるいは一定期間の占領がなされるだろう」と確信した。こんな予想をしているが、別に私は戦争の専門家ではない。Z国とN国でセールスマンとして働いたことがあるだけのただのサラリーマンだ。しかし、この読みは確実に当たると思う。これは私のセールスマンとしての勘だ。

N国は元々過去に何度か急激な経済発展を遂げたのだが、ここ2〜30年は停滞期が続いていた。この長い停滞によって、「もうこの国が経済成長することなんてないよね」と考えられるようになった。この結果、「明るい未来を実現するために頑張ろう」と考える人よりも「明るい未来を作るなんて無理ゲーだから現状に満足しよう、足るを知ろう」という考える人が多くなっていった。
N国はこういう人が多いで穏やかで優しい人が多く、プライベートでこの国の人と一緒に過ごしているとなんだか自分もいい人になれる。
しかし、この国でのセールスマンとしての仕事はとても大変だ。現状に満足している人が多いので新しいものに対する興味があまりないからだ。CMやSNSなど、あらゆるプロモーション施作を実施しても全然反応が良くない。どれだけいい商品を開発しても想定通りの売り上げが立たないのだ。この現象は私の会社だけではなく、国中の企業が軒並み同じような状況に陥っている。なので、会社もどんどん潰れていき国力もどんどん落ちていっている。

一方のZ国は元々発展途上国だったこともあって、多くの人が上昇志向と競争心を持っている。ただ、その上昇志向と競争心の裏返しで、何かとコンプレックスを抱えている人が多い。
N国と真逆で人々はSNSなどで他人のキラキラした映像や画像を見て、自分のコンプレックスをわざわざ自分で刺激し、そして不満を溜めて愚痴を吐く。なので全くこの国では友達を作ろうとは思わなかった。
しかし、この国でのセールスはとてもやりやすい。現状に不満を抱えている人が多いので自分を変えたいと思っている人が多いからだ。そういうこともあって、いい商品があればすぐに買うし、自己顕示欲も高いのですぐにSNSにみんなアップする。そしてその商品を見てまた羨ましがってみんな買う。N国とは真逆で企業全体がこんな感じなのでこの国の経済はどんどん発展している。

結果は予想通りZ国の勝利で終わった。N国は経済力の低下により、軍事への投資も少なくなっていった。一方Z国は好景気に伴って、軍事への投資もどんどん加速していき、その投資によって生まれたイノベーションによってまた経済が発展していき、それによってまた軍事への投資が進んでいった。専門家はそう指摘していた。

さて、次の私の赴任先はどんな国なんだろうか。

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