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カラリコロリ

「だから。もうすぐお別れ。」 夏祭りの帰り。 楽しかった。それ以上の言葉を口にできない僕に君は優しく言った。 「そんな下を向かないでよ…。」 突然の告白に僕はどうしていいか分からず、ただ俯いているだけだった。 考えるのは、君と一緒にいた時間のこと。 ブランコに揺れるその長い髪も。 教科書を見つめるその横顔も。 バスを待ちながら話すその声も。 屋台に浮かれるその浴衣姿も。 僕には鮮明に思い出される。 どの記憶の僕も、何者かわからない青い温度を抱えてある。 両手いっぱ

    • 決別の時

      いつもの通勤途中、とある一本の木が葉をつけていないことに気がついた。 (昨日からそうだっけ?) などと思いながら、目を逸らし、そのまま通り過ぎようとする。  と、何かの違和感に襲われもう一度その枯木の方に目をやる。少女がいた。  その少女は口を開けたり、閉めたり。なにか俺に話しかけているようだった。しかしその声が俺に聞こえることはなかった。まるで世界から音が消えたかのように。  その時、俺はその少女の方へ駆け出さなければいけないと思った。なぜかは分からない。けども確かに

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