カラリコロリ


「だから。もうすぐお別れ。」

夏祭りの帰り。
楽しかった。それ以上の言葉を口にできない僕に君は優しく言った。

「そんな下を向かないでよ…。」

突然の告白に僕はどうしていいか分からず、ただ俯いているだけだった。

考えるのは、君と一緒にいた時間のこと。
ブランコに揺れるその長い髪も。
教科書を見つめるその横顔も。
バスを待ちながら話すその声も。
屋台に浮かれるその浴衣姿も。
僕には鮮明に思い出される。

どの記憶の僕も、何者かわからない青い温度を抱えてある。

両手いっぱいに抱えたこの思いは…。

僕が。

君に対して抱えるこの温度は…。


まだ花火は続いていて。
帰り道の終わりももうすぐそこまで迫っていて。

沈黙を抱えたまま2人はただ歩いている。

あとどのくらい一緒にいられるだろうか。
あと何回「またね」をいえる機会が残っているだろうか。
次にまた会える時がくるだろうか。

もし次にまた出会えたときには続きから始められるだろうか。

最後の花火が君の後ろで上がる。
その光景は。きれいという情景だけでは説明がつかなくて。

「好きだ」

その言葉は僕の口から自然とこぼれた。

僕のこのアツさは。きっと体温だけじゃない。夏の暑さだけじゃない。

最後の花火は散って、また辺りに夜が戻った。

君の顔の影がすぅっと消えていく。

いつか花火を見たときには、僕はきっと君を思い出す。

この夏を思い出す。この春を思い出す。

少しの静寂の後。

君は。

笑って。

「私も。好きだよ。」

君は少し涙ぐんでいた。

それはきっと夏が僕らに甘い魔法をかけたから。
それはきっと最後の花火が切ない魔法をかけたから。

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