【ネスペ】試験勉強に使用した参考書(令和4年受験)

令和4年度(2022年度春)試験にネットワークスペシャリスト試験(NW)に合格しました。
筆者が試験勉強に使用したテキストを紹介します。

1.まずはじめに

 あくまで、私が使用した参考書を評価するものであって、その他の書籍等との比較はできておりません。
 「参考度」は、私が「どれくらい本書を参考にしたか(活用したか)」を示したものであり、必ずしもおすすめ度ではない点にご留意ください。

 

2.参考書の所感

①ネスペ教科書 改訂第2版(参考度:★☆☆☆☆)

 ◇ネスペ教科書 改訂第2版

【コメント】
・ネスペ試験対策本ではなく、試験で出てくる基本用語を解説。
・本書は「点」の解説であり、「線」としての知識にするためは更なる学習が必要。
・本書を理解できなければネスペ試験は諦めよう。

【特徴】
・ネスペ試験への入り口となる本であり、一般的なネットワーク用語が丁寧に解説されている。取り上げられた用語はいずれもネスペ試験で登場する基礎ワードであるため、これらは是非とも抑えておくべきものばかり。(抑えて"おきたい"ではなく、"べき"である点を強調したい。)
・ただし、ネットワーク知識ゼロの方向けではなく、「応用情報技術者試験の午前問題は理解できた」くらいの基本知識は必要とされるレベルで書かれている。

【おすすめの使い方】
~ネスペ試験を受けるか迷っている人は読んでみよう~
・本書で触れる内容は、ネスペ試験で直接問われる用語ではなく、ほとんどが問題文で出てくるレベルのワード解説なので、「これを理解していないと問題文を読めない」ということになる。
・もし、本書に書かれた内容を理解できなかったり、読み進めるのが窮屈・苦痛に感じる人はネスペ試験にはまだ早いと判断できる
(仮に本書の内容すべてを暗記したとしても合格できるものではない。)
・書かれている内容を(覚えていなくとも)分かるレベルになれば、スタートラインに立てていると理解してもらえればよい。

~知識の基礎固めにしよう~
・本書で知識の「点」を集め、後の学習で知識を「線」とするための布石との位置づけにする。
・本書の内容を覚えることがゴールではなく、そこからがスタートラインであることに留意したい。

【デメリット】
・ネスペ試験の午後問題は、ネットワークの流れや各技術を複合させた場合を問われるのだが、本書は、体系的な順序で掲載されているとはいえ用語解説が羅列されているだけであり、これ1冊ではネットワークの流れは理解するのは難しい。
・上では「覚えておくべきものばかり」と書いたが、時々、「これ重要?」というワードも存在する。そういった情報が並列され、覚えるべき優先度が分かりにくいように感じた。


②うかる!情報処理教科書 ネットワークスペシャリスト (参考度:★★★☆☆)

【コメント】
・過去問解説がPDFで提供されるので、iPadに入れておくことでいつでも学習できた。
・試験に必要な知識もしっかり解説されており、コンテンツは充実している。
・ただし、後述する一部デメリットから、必須ではないように感じた。

【紹介】
・平成21年度以~令和3年度試験の過去問解説をPDFでダウンロードできる。iPadで学習する方にとって、これはとても助けになる。ただし、直近の試験は書面でのみ掲載となる。(2023年版では、令和4年度(2022年春)試験分はPDFで提供されず、本編のみとなる。)
・ダウンロード期限があるため、旧版はこの点に注意が必要。

・本編では、ネスペ試験に必要な知識の解説が詰め込まれている。基礎から少し複雑な応用知識までが紹介されていたりと幅広い。
・例えば、IPsecのNAT越えの解説がある。IPsecとNATの知識を複合させたものであり、試験対策本なだけあってネスペ試験で狙われやすい点をきっちり抑えている。

【おすすめの使い方】
~辞書代わりとして手元に置いておこう~
・用語の理解だけであればネット検索でも十分だが、本書はノイズが少なくすぐに目的の場所にたどり着くし、何よりスマホの誘惑からも逃れられる。

・700ページ超のボリュームであるため、一から最後まで読み通そうとするとそれだけで相当時間を費やしてしまう。ネスペ試験はどれだけアウトプットの時間を確保できるかが鍵であるので、過去問演習等で分からない用語に出会ったとき、本書で理解を深める使い方が良いと思う。ついでに数ページ眺めてその関連知識も広げていくと◎。

~過去問解説PDFを持ち歩こう~
・これ一冊で10年分超の過去問をゲットできるのは大きなメリット。iPad利用者でなくとも、手持ちのスマホに仕込んでおけばいつでも学習できる。

【デメリット】
・紙だと重いので、本書を持ち運ぶのは少し億劫。主に家外で学習する人は家に置きっぱなしになり、結局ネット検索に頼って本書を使う場面が少なくなりそう。(私がそうでした。)
・電子書籍版であればこの点は解決するが、使い勝手は未知数。

過去問解説の文章が難しい。かっこよく書き過ぎていて初学者向きではないと感じた。
どういうことかというと、「そこまで突っ込まなくていいのでは?」と思うような点を深く追求して解説が遠回りしているように思え、理解するのにとても時間がかかった or 理解できなかった。
(あくまで私の印象です。これが個人的には大きなデメリットでした。)
結局理解できず、後述の「ネスペシリーズ」を購入した

・基礎・応用知識の解説では、痒いところまでは手が届いていないとの印象を持った。結局欲しい情報が得られず、ネット検索してしまう場面が多かった。


③マスタリングTCP/IP―入門編― (参考度:★★☆☆☆)

【コメント】
・ネットワークの流れについて解説された一般書であり、ネスペ試験対策本ではない。
・上記「②うかる!情報処理教科書」と併用して辞書代わりとして使用
・アウトプットの時間を確保しいたいがために、本書をあまり活用できなかった。

【紹介】
・ネットでは良書との評判が高い一冊。
・ネットワーク技術を網羅しつつ、深すぎないレベルに体系的にまとまっている。
・おそらく一読しただけでは頭に入らないだろうが、何週かするとその深みを味わえるはずである。

【おすすめの使い方】
~辞書代わりとして手元に置いておこう~
・理由は上記「②うかる!情報処理教科書」と同様だが、②とは違った着眼がされているので、両者を読んで知識を定着させる。(主観では、本書の方が読みやすかった。)

~ネスペ試験合格後も手元に置いておこう~
・合格後には不要となる「試験情報」や「過去問解説」等が書かれていない。ネットワークに携わる方にとって必要な情報のみが詰め込まれているので、試験後の活用も期待できる。

【デメリット】
・紙だと重い。(②よりも薄いが、サイズは一回り大きい。)

・「試験対策本」ではないので、これを読んでも直接的な即効性は弱い。

・「②うかる!情報処理教科書」にない情報を探そうとした場合に、本書で見つけられたことはなかった(少なくとも私が見た限りでは)。よって、情報としては②の補完にはならず、あくまで「別角度の解説」を求める場面に留まる。


④ネスペの基礎力(参考度:★★★☆☆)

【コメント】
・本書の中でテンポよく確認問題としてアウトプットを求められるので、インプット一辺倒とはならず、飽きさせない。(読書の苦手な筆者でも読み通せた。)
・平成28年度のネスペ試験過去問解説も含まれている。
・確かに良書であり評判は高いが、期待されるほどの効果は感じられなかった。
・一方で、令和4年午後問題の答えとなった「プロミスキャスモード」は本書序盤に登場し、試験本番中に本書に感謝した。

【紹介】
・ネットワーク基本知識を順序立てて解説する。上記「①ネスペの教科書」とは異なり、その流れを解説している点で差別化される。
・分かったつもりになっていた基礎知識の見直しと定着を目的とし、所々に確認問題が挟まれる。
・「20点伸ばし」とあるが、知識底上げによる「加点」と、記述解答での日本語表現のアドバイスなどから「減点を防ぐ」との両輪でこれを目指している(と筆者は受け止めた)。

【おすすめの使い方】
~午後問題演習の前に”とりあえず一周”してみよう~
・試しに午後問題を解いて、解説を読んでもあまり理解できない場合は本書の一周をお勧めする。
過去問演習をしていると、自分の解答と模範解答に少なからず乖離が出るが、最初は、それが的を射ているのか、見当違いなのか、部分点が期待できるのかといった相場感を掴むことは難しい。それを解決できる一冊になり得る。
本書では、なぜこの回答がNGなのかといった解説にも触れられ、「受験者ならでは」の悩みを汲んでくれている。

~平成28年度の過去問解説書として使おう~
・本書は基礎固めとしてだけでなく、平成28年度過去問の解説も含まれている。スペースの制限から他の同シリーズほど充実はしていないが、それでも十分丁寧に解説されている。

【デメリット】
・本書に時間をかけ過ぎない方がよい。
本書はあくまで記述解答をサポートしてくれるツールであり、アウトプットの出力増とスピードアップを手に入れるにはやはり過去問演習のリピートが最も効果的と考える。
上述のとおりだが、ネスペ試験のカギはアウトプットの量であり、どれだけ過去問演習に時間を費やせたかで決まってくる。本書には確認問題があるが、過去問とは少し性質の異なる問いが多いため、ここに時間を費やし過ぎても効果は限定的。
私の経験から、遅くとも試験2か月前には午後問題に着手したいので、1週目として読むならそれまでに終えておくこととした方が良い。(過去問演習で点数が伸び悩んだ時に2週目を読むのは良いかと思うが、その時には尚更時間をかけ過ぎるべきではない。)


⑤<ネスペシリーズ>本物のネットワークスペシャリストになるための最も詳しい解説書(参考度:★★★★★)

【コメント】
・間違いなくMVP。
・過去問解説が丁寧に、かつ易しい表現でされているので頭にスッと入ってくる。
・予算が許す限り全年度分用意しても無駄にならない。
・「②うかる!情報処理教科書」の解説文が理解できない場合にこれを購入したが、結局、平成21年度以降のほぼ全ての年度分を用意した。

【紹介】
・特定年度の過去問を徹底的に解説しているシリーズ。特に、午後問題をここまでのボリュームで解説されている書物は他にない。
・最新の「R4」には令和4年試験分の解説しか書かれていないため、他年度の解説が欲しければ該当年度の本書シリーズを購入する必要がある。
・文章が飾らずに平易(これがとても重要)、「それが知りたかった」と思わせるような別角度の解説、別解の提案や「これを書けば部分点」といった記述など、どれも受験者目線に立った視点がとてもありがたい。
・意外と昔の版(平成21年度など)にも参考になるコラムが書かれていたりする。

【おすすめの使い方】
~過去問を解いた後に本書をじっくり読んでみよう~
・まず、過去問の大問ひとつ(午後Ⅰは問1~問3と3問、午後Ⅱは2問あるので、このうち1つ。)を自力で解き、ひととおり問題を考え終えた後に本書を読んでみる。
・午後Ⅰは1問30分~40分に対し、最初は解説に1時間以上の時間をかけてじっくり読み込んでいく。(午後Ⅱはそれぞれその倍の時間になるはず。)
・本書では問題文に沿って一文一文に突っ込みを入れていくスタイルで進んでいくので、これによって着眼点や気づきのポイントを身に着けていく
・中には理解できない問題や表現もあると思うが、それに時間をかけ過ぎないこと。本書にも、「この問題は難しい」などとコメントされているので、「2週目以降に後回し」とすることもアリ。他年度の過去問演習でだんだんと理解が深まったときに読めばあっさり根拠が分かったりすることもある。(6割取れれば合格の試験であり、満点を取らせないような「捨て問」も含まれていることを理解しておこう。)

~午後問題の過去問演習は試験2カ月前になったら毎日実施して何度も繰り返そう~
毎日解くことで試験が日常になる
・演習に加えて本書の読み込みを何度も繰り返すことをお勧めする。同じ試験問題も繰り返すと新たな発見があるはずである。
(中には一度解けば十分という問題もあるので、1週目にその選別をしておく。)

【デメリット】
・最新年度だけ揃えればよいというものではなく、多年度を揃えるとそれなりに金額も張る。
・丁寧すぎるがゆえに冗長さを感じる点もある。


⑥ネットワークはなぜつながるのか 第2版 (参考度:★★★★☆)

【コメント】
・影のMVP。これを読まなかったら合格は厳しかったかもしれない。
・得点大幅アップとはならないだろうが、ネットワークの流れをイメージできた。

【紹介】
・クライアントがWebサーバへHTTPリクエストを要求してから戻ってくるまでの動きを、ミクロ視点で一つ一つを追いかけていく。
・この「探検ツアー」が順に示され、各ネットワーク層で何が行われているのかをしっかり理解できる。
・2007年出版と古い印象を受けるが、ネットワークの基礎部分は現在技術にも通じており、大変参考とできる。

【おすすめの使い方】
~試験まで時間があるなら是非読んでみよう~
・基礎作りや知識の底上げを期待できるので、試験まで少し時間があるのであれば、気分転換にでも読んでほしい。
・試験には不要な情報も登場するが、こういった背景知識を知っておくことで、記述問題への解答作文に厚みを持たせられる。つまり、「違和感のある文章」ではなく「実態に合った文章」を表現できる。

~OSI参照モデルが理解できない人は、第1~3章だけでも読んでみよう~
・ネスペ試験において、OSI参照モデルの体系的な理解は合格への必須条件だと考えている。これに不安のある人はこれを読んで理解を深めることをおすすめしたい。
・特に、第2層(データリンク層)と第3層(ネットワーク層)について、また、第2層と第3層の違いを深く理解することはネスペ試験合格への近道となる。全6章建てとなっているが、過去問演習の中でどうしても理解が進んでいないと感じた人は、時間を作って前半(第1~3章)だけでも読んでもらいたい。

【デメリット】
・ネスペ試験対策本出なないので、これを読んだからと言って〇〇点アップ!とはならない。
・昨今のトレンドを掴むような書物ではない。

3.結局、いつ、どう使ったのか(勉強歴)

・2022年4月(令和4年度)のネスペ試験を受験し、合格。
・これに向けた勉強歴を次に記します。

◇筆者の勉強歴

◇2021年
8月頃、ネスペの教科書(1週)
 ※これを読んでも合格に近づいた感覚はなかった。その後に間も空き、早めに始めたアドバンテージは特にない。
12月、ネスペの基礎力(0.5週)
   & 午前Ⅱ過去問(NWとセキュリティ分野のみ)
 ※午前Ⅱは空き時間に。ここで大体6~7割取れるようにした。
  (同じ問題をほぼ丸暗記なのでハードルは高くない。)
 ※ネスペの基礎力は最後までいかず、途中で挫折。
◇2022年
(1月は勉強せず。)
2月上旬、ネスペの基礎力(1週)
 ※挫折したので、もう一度最初からやり直し。
 ※これが必須だったとの感覚はないが、勉強の習慣づけとして、また過去問演習への助走としては良い時間だった。
2月中旬、「午後Ⅰ過去問演習」を開始
 ※この時は思うような点数が出せず。
  (正答率3割くらいで絶望していた。)
2月中旬~下旬、「ネットワークはなぜつながるのか」を読む
 ※ここで、第2層と第3層の違いのヒントを得た。「ネスペ試験って全部これじゃん」って思うほどのコツを得た。
2月下旬
 ~4月試験、午後Ⅰ、Ⅱ過去問演習(過去12年をほぼ2週)
 ※演習の後は「うかる!情報処理教科書」の過去問解説を読んで答え合わせ。でも同書の解説文が理解できず、多くを「ネスペシリーズ」に頼ることになる。
 ※過去問演習の中で辞書代わりに、「うかる!情報処理教科書」と「マスタリングTCP/IP」を使った。


◇試験までの筆者の理解状況

・前年12月(試験4か月前)時点では、午後問題の問題文すら理解できない状態。2月中旬までその状況はほぼ変わらなかった。
 この間、「ネスペの基礎力」を読んでいたが、これによって劇的な変化は生まれなかった。

・2か月前になっても解けている自分がイメージできず絶望感があったが、「ネットワークはなぜつながるのか」が救ってくれた。上述のとおり、L2とL3の違いを理解するなどしてコツを掴んだ。

・それからはひたすら過去問演習と「ネスペシリーズ」の読み込み。

・大体、3月下旬くらいには「6割は大丈夫だろう」との感触を得た。


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