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『螺旋時空のラビリンス』感想

辻村七子著『螺旋時空のラビリンス』を読みました。

辻村七子先生のデビュー作。
時空遡行SFなんですが、ループしても主人公の人格自体は上書きされない方式なので、円環というよりはタイトル通り螺旋状の迷宮という感覚が味わえました。

ループの問題を解決するためには、技術的な課題というよりも、自分たちが所属している会社や社会的状況を打破する必要があるというのが、形容しがたい閉塞感をもたらしていたと感じます。それくらい社会的な拘束とは、個人の努力や思惑では覆し難いものと思うんですよね。
いつ主人公が狂った社会に迎合しちゃうのかと気が気じゃなかった。そういう展開の小説ではありませんでした。

洗脳や記憶の改竄の影響で主人公の言動は当初めちゃくちゃなんですが、それらが整理されるにつれ、フォースの生きている姿を繰り返し求め続けて何十回も彼女の死に立ち会うことになる主人公の想いの純粋さが美しく感じられました。

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