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『日本人のための第一次世界大戦史』感想

板谷敏彦著『日本人のための第一次世界大戦史』を読みました。

日本におけるWW1は、WW2の凄惨さの影に隠れて、ほとんどWW2への助走のような理解をされている印象があるのですが、ヨーロッパにおいてはそうではないということをまざまざと感じられる本。戦闘や政治についてのみならず、包括的にWW1について学べる良書でした。

カナダが舞台となるモンゴメリの『赤毛のアン』シリーズでも、終盤になるとアンの息子たちが第一次大戦に駆り出されて行ったことが個人的には印象に残っていて、「ああ、当たり前だけど世界大戦って日本もカナダも影響を受けているんだな」と子供心に思ったものでした。

本書でとくに興味深いと感じたのは当時の様々な最新テクノロジーについて紙面を割いていることで、当時の技術革新が戦争をどれほど変えたのかという事象に対する考察でした。塹壕戦の悲惨さが恐ろしすぎて想像するだに非常につらい気持ちになりました。

また、かなり経済的な面に関する考証もされていて、非常に興味深かったです。戦後処理の大失敗については何度考えても「なんでそうなってしまうの…」という気持ちもあるのですが、一方で、国民国家となった以上、国民の感情による戦争となればそうなってしまうことも理解はできます。
「私たちはこれだけ大きな犠牲を払ったのだから、敗戦国からそのぶん取り立てなきゃ気が済まない」というような報復としての戦後処理は、それが敗戦国に住んでいる大勢の人たちの生活を追い詰めるということに繋がっていくし、そうなったときすべての国民国家は必ず己を守るため行動するであろうということも考えさせられます。

またグローバル化した世界のなかで私たちは多くの国と繋がっていて、どんなに少なく見積もっても経済的な影響を受けることを避けられないのだということについても考えずにはおれませんでした。


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