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もぎもぎフルーツの毎日[詩]


もぎもぎフルーツの毎日

 朝
 胃のためにコーヒーをやめた
 鵜飼が
 江別に行くらしいと隣人が言う
 叔父に傘を渡してほしい
 火曜日は雨だ

 期日を守ること(守ろうとすること)(守りたいとおもうこと)が
 くるしみを作っていたり(する。)

 月末には
 虎穴に入らねば(ね。)

 sunny day
 死ぬかも、でも、きっとそのときは、
 姿煮にしてやる

 セイタカアワダチソウの野原について、罪を
 遡及できるだろうか
 ただ
 地形に染み込んだ憂鬱が
 次の月末までに流れていけばよいが
 低気圧は
 とうに鵜飼を殺した

「凪というものを知らないのよ
 煮詰めること、バターを入れて火を弱めること、
 濡れそぼった月のこと、を知覚するだけで、
 ね。」

 野に日が昇る

 歯の治療に出かけた隣人が
 日の出のときに帰宅した
「冬に集積されるうつくしい結晶を詰物にするのだ」
 へえ、じゃあ冬まで待つんだね「でも、
 ほら、ご覧、じきに冬だろう」

 街は、地軸の傾きを
 見せないようにはしないから
 無謬の暦と
 明確にやってくる次の季節は
 もぎもぎフルーツのかたちをしている

 厄介な季節の、構ってほしいそぶりに
 誘引されてしまった羽虫たちは
 夜のうちに隣人が交通誘導して逃がしている

 来年は
 隣人にもぎもぎフルーツを準備しよう
(留守を頼むこともあるだろうから、ね。)

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