ハムスターにまつわる見解

その1、A氏とB氏の会談

「確かに見解の分かれる生き物ではありますね」とB氏はキーボードを叩く手を止めて言った。「でも金魚のほうが剣呑じゃないですか、生き物として」
 A氏は語る。「それも彼女に伝えました。ハムスターより邪悪な、それとも邪悪そうな生き物なんてたくさんいると。でも同居はムリだと言われました」
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 A氏のA氏との同居を拒む彼女の談
 毛皮で包まれているほうがよっぽど邪悪よ、金魚なんてツルッとしているからまだマシなのよ。あなたがその程度のことさえわからないひとだったなんて失望したわ。明日からは偉そうに文学なんて語らないで頂戴。
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「確かに困りましたね」B氏はデスクトップに向き直るとふたたびキーを叩き始めた。B氏は打鍵スピードが遅い。
「私にもよく分からない。金魚のほうがはるかに危険だと思いますが」
「あなたで分からなかったらもうお手上げですね。こちらとてハムスターを弁護する気などサラサラないんですが、ひょっとすると世間的には彼女の言ってたことの方が理に適っているのではないかと、先生にお伺いを立ててみようと」
「なるほど。しかしハムスターのせいで文学を語れないとなるとあなたも困るでしょう」
「そう、そこなんです。奴らは愛玩動物などではない。それは動物愛護活動家も、臨床心理士も物理学者も、アクティビストもペシミストも認めるところなのですが、詩人と俳人、歌人だけがうんと言わない。私の研究テーマは長らくそこでした」

ハムスターをめぐる論争はつづく

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