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コンプレックス強めのニット作家 その3


すっかり月いち連載の様相となったnote
今回はクリエイティブな仕事について初めて意識した時の話  

私は子どもの頃文集などで出される
定番中の定番のお題
「将来の夢」を書くのが大嫌いでした。

イケてない小学生の私はその日その日をやり過ごすだけで精一杯。
特技なんてないし、やりたいこともわからない。

どんな大人になりたいのか
将来どんな職業につきたいのかなんて全く想像もできず
毎回適当な夢とその理由をひねり出し、なんとか行間を埋めていました。

男子はプロ野球選手やパイロット、
女子はお花屋さんやケーキ屋さんみたいなかわいい夢が多かったかな
なぜみんな自分の未来をそんな風に想像できるんだろう?と不思議でした。

そんな小学校生活も終わりに近づいた6年生の文集にある友人が衝撃的な夢を綴ったのです。

彼女の名前はともこちゃん。
近所の同い年の幼馴染み。 
地域の行事で顔を合わせる程度の仲から5、6年生で同じクラスになりよく遊ぶようになりました。

ご両親は共働きで
ひとりでお留守していることが多かった彼女のお家の庭にはお父様が丹精した植物が年中綺麗な花を咲かせ、お母様の手作りのおやつが用意されていました。
自分専用の個室には小学生らしからぬおしゃれな趣味のものが飾られ
時々交換していた手紙にはまるで大人の恋をしているかのようにユーミンの歌の歌詞が走り書きされてました。
私が知らないことをたくさん知ってて面倒見がよい、まるで同い年のお姉さんみたいな存在。

小学生生活も終わりに近づいた6年生卒業間近の文集で私は
ともこちゃんの将来の夢の欄に
度肝を抜かれます。

「シンガーソングライターになって本を出す」

シンガーソングライターという職業すら知らず、そこにもかなり驚いたけど
より衝撃を受けたのは
「本を出す」の方でした。

よくわからないけど
そんな発想が当時の自分には全くなくて、本を出すってなんかめっちゃカッコいい〜!
それ以来大人になっても私の頭のすみっこにずっと「本を出す」というワードが棲み続けることになります。

本を出せる人ってどんな人?
世の中に本はいろいろあるけど
私の中での答えはとりあえず
自分の色で無から有を生み出せる人
どんなことでもいいから将来
そういう仕事をしたいと
考えるようになったのでした。

はるかに時を経て
私は2011年に初めての著書
「能勢マユミさんの手編みバッグ」
を出版することができました。
(出版社が倒産して絶版となりましたが古書が手に入ります)



2016年には2冊目
「毛糸のがまぐち」


そして今年2024年の4月1日
3冊目の著書
「好きな模様でかぎ針編み」がエクスナレッジさんから出版されることになりました。
amazonで予約できます


あの日の彼女の言葉は
いつか自分の本を出せるようなニット作家を目指せと私の背中を押してくれたのです。

ともこちゃんはシンガーソングライターにはならなかったけど、いろんな顔を持つ多才な大人の女性としていろんな場所で活躍しています。
いまだに危なっかしい私を見守り続けてくれている、
お互いの恥ずかしい過去も、
近況も知ってる数少ない幼なじみ。
面と向かってちゃんと感謝の言葉を伝えてなかったね。

ありがとうー

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