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認知症マフのはなし その2

認知症マフとは、手元に不安を感じる人が触れたり手を通したりして落ち着けるように、ボタンやリボンなどさまざまな飾りを付けた筒状のニット小物です。
手を入れるとふんわり温かく飾りを触って楽しんだりホッと落ち着くといいます。
イギリスなど海外の高齢者施設や病院でも使われており英語で「Twiddle Muff(トゥイドルマフ)」と呼ばれています。

前回の投稿では私がマフの普及活動のお手伝いに至るまでのお話しでした。

監修をするに当たり
まずは元朝日新聞厚生文化事業団の
山本氏がイギリスから持ち帰ったマフを実際に見せてもらい
そもそも「マフ」とは何なのかを調べてみると
"muff "の語源はフランス語の"moufle"
厚手の手袋またはミトンのこと

ヨーロッパの貴族が筒状の毛皮の防寒具に両手を入れた肖像画を見たことがあります
生成AIでイメージ写真を作ってみました

AIへの指示が下手で中途半端…


muffは防寒具なのです
毛糸で編みさまざまな飾りを
付けたものが Twiddlemuff
薬や医療介護器具ではなく
暖を取りつつ手触りに癒される
ライナスの安心毛布のようなもので
何の興味も示さない方もいますし
抱きしめて離さない方もいます

編み方に特に決まりはありませんが、
誤飲や怪我の原因にならないよう
使う方の状態を見極めた素材や飾り選びと使って頂く時の導入方法にも配慮が必要で、事業団でそれらを学んで頂くためのワークショップをすることになりました

どんな方が参加してくださるのかこの時点では全く想像ができず
最初は編み物が全くできない方にも作れるよう、指編みでミニサイズのマフを編んだり、着古したセーターなどをリメイクして100円ショップで買える飾りを付ける方法など、とにかく簡単にできる作り方の提案からスタートしました

いわゆる「エビデンス」がないところからのスタートであるにも関わらず、このユニークなケアは作りたい側と使いたい側、両方から想定外の反響を頂きました

その後実用できるように内容をブラッシュアップして作りやすいマフの編み方を考案しました
朝日新聞厚生文化事業団のHPからリンクで編み図と編み方動画を公開しています
(9/8東京でワークショップを開催します。満席のためキャンセル待ち受付中)


各地でワークショップを重ねるごとに
地域福祉、医療、介護現場など
あらゆる立場の方にご参加頂き、
導入事例とフィードバッグが数多く寄せられマフがメディアでも取り上げられるようになります

その影響とインパクトある
ネーミングから薬でも医療器具でもない
「毛糸のマフが認知症にいいらしい」
という噂だけが先行し
実物への理解がないまま
症状が改善すると誤解されたり
病院での身体拘束の代わりになると
安易に認識されかねない
危うさと隣り合わせなことにも気がつきました

認知症の基礎知識がなく
マフの実物を見たこともなく
使い方をよく知らなくても
編み物ができれば誰でも
見よう見まねでマフを編むことができます
悪意なく無責任に
マフに適さない素材や飾りで
誤飲や怪我に繋がるようなトラブルが起こった時
「マフは危ないものだ!」と
風評被害が広がるようなことがあれば マフが一気に怪しげなものに
変わってしまうかもしれない  

すでに手芸店などからキット化の引き合いがあったり、メルカリ等のフリマサイトで安全性の確認できないマフが売られていました

取り返しがつかないことになる前に
安易な商用利用からのトラブルを避けるため「認知症マフ」の名称を商標登録し保護して頂くことにしました

今ではボランティアさん達からマフがいろいろな愛称で親しまれています。
コロナ禍で普及のペースが緩やかだったこともあって大きなトラブルもなく
たくさんの方がマフを編み、必要な方に届けるしくみが各地に広がっています

事業団のワークショップで私は普及啓蒙活動に重点を置き、作りやすさを最優先に普段のお仕事で提案しているようなデザインにこだわることはあまりしてきませんでした

内心は新たな防寒具のひとつとして、自分が使いたいと思えるオシャレなデザインのマフを提案したいという衝動でずっとうずうずしていたのです。

つづく

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