見出し画像

オルフェーヴル産駒の狙い目 -ベイスターズと清志郎と競馬と-


 ベイスターズと清志郎と競馬と

 ベイスターズが久しぶりに大変なことになっている・・・。まだホームで1勝しかしていないのだ。
 この現象は、ラミレス野球から時代遅れの普通の野球に戻ろうということの反動に他ならない。個性と自主性を前面に出した権藤野球(それでいて中継ぎローテーションなどの革新性もあった)から森野球への揺り戻し、あるいは尾花、中畑政権時で見たのとも、全く同じ光景である。この球団には似合わない、本当は普通ではない普通のことをやろうとして行き着く先の、極めてベイスターズ的な光景とも言えるだろう。
 古くからのファンなら、三浦監督に決まったときから、薄々分かっていた道とも言えるが、ただもう始まったことだ。コロナで調整が遅れた外国人の調子が戻れば戦える戦力はあるし、嘆いていても始まらない。そもそも、こんなことで応援するのをやめる人間が、大洋時代からファンであるわけもない。むしろ、「いつものペースが戻ってきた」という、懐かしい手応えを楽しむくらいの余裕がないと、この球団のファンは続けられないだろう。

 悲惨な試合が続くときには、中日ファンだった忌野清志郎の言葉がよく頭をよぎる。
 ステージを数多くこなしている最中の、いろいろやることが多いはずの偉大なアーティストがドラゴンズのユニフォームを着ながら発したものだけに、なんとも言えない重みのある、こんな言葉だ。

「この年になると、野球以外、たのしみがないんだよね」


 いや、私たちには競馬があるではないか!
 そして三浦監督は馬主だった。そこで今回は、彼の考え方が進化することを祈って、オルフェーヴル産駒を中心に、私が実際に『ウマゲノム種牡馬辞典』を使いながら予想したレースを、振り返っていこうと思う。

 ダート替わりとオルフェーヴル産駒

 まず1つめは、種牡馬と「芝からダート」のポイントが詰まっていたレースになる。
 土曜新潟2R(4月17日)のダート1200mに、セイレーンという馬が出ていた。
 2走前に芝1600mを先行して3着だったものの、前走は芝1200mへの短縮でダッシュが付かず、3角14番手から後方侭で10着に惨敗した馬である。そのため、今回は単勝19.4倍の8番人気まで人気を落としていた。
この馬を辞典を使いながら本命にしたわけだが、その最大の理由は、「オルフェーヴル産駒のダート短距離」にあった。
辞典の解説にあるように、オルフェーヴル産駒は、ダートでは芝と違って短距離でもダッシュが付く。実際、辞典を見ると芝のダッシュ再現値は46Sと平均の50よりかなり低いが、ダートのダッシュ再現値は53と平均を超える。
ダートだと、むしろ平均よりダッシュ力の高い種牡馬なのだ。
ということは、前回ダッシュが付かずに凡走した同馬が、今回は2走前に好走した先行策を取って、激変する可能性は高い。
また、前走が芝だったので、今回は「芝からダート」になる。こういうときは、オルフェーヴルの「オプション表」から、ダート替わりショックの項目を見ると良い。そうすると「B」なので、このショックも利きやすいことが分かる。
 ちなみに、逆の「ダートから芝」の項目を見ると、オルフェーヴルは「D」になっている。
 これはちょっと意外に思われるかもしれない。
 オルフェーヴルと言えば、芝向きの種牡馬で、トップクラスの産駒もほとんどが芝だ。それなのに、「芝からダート替わり」の方が、「ダートから芝替わり」よりも、向くというのである。
実は、こういう「芝血統なのにダート替わりの方が妙味のある種牡馬」は、案外多い。
 その最も大きな理由が、先ほどのダッシュ力の問題になる。芝のダッシュ再現値が弱い種牡馬は、ダートから軽い芝へ向かうショックだと、仮に芝向きの血統だとしても、追走に一杯になりやすく、むしろ、ダート替わりの方が向くというわけだ。
 芝からダートを狙うときは、このような観点から、種牡馬と母父の血統構成を見ると、より精度が上がってくる。

 血統以外の、ダート適性の見極め方

 例えば日曜新潟1Rもそうだ(4月18日)。「芝からダート」のアイルハヴアナザー産駒を本命にして、対抗にもダート替わりだった馬を選んで、馬連1点目、3連複の52倍も2点目的中で、3連単万馬券も当てたレースである。このときの本命、対抗の2頭も、初ダートだった。
 ただ対抗にした馬の父Nyquistは、JRAでは同馬しか産駒が走っていないので、データはない。もちろん、父系がダートを走ることもあるが、こういうときは実際の走りと、パドックのVTRも一応チェックしている。
企業秘密なのであまり書かない話なのだが(笑)、今回は特別にパドックから、ダート替わりが向いているかのチェックポイントも書いておこう。
VTRを見られる人はセイレーンのパドックを見て貰うと分かるが、脚の運びが硬く、ぎこちない。そしてやや立ち気味のシルエット。こういう馬は、基本的にダート替わりは走る。たぶん、400キロという馬体が、ダート替わりで人気を落としていたのだと思うが、それはあまり関係ない。馬体は前走との比で見るのであって、別に400キロだからといって、ダート替わりがマイナスになるということはないのだ。ただ、馬場替わりなどのショック馬は、「状態が悪いので、試しに別の条件でも使って適性でも見ておくか」というタイプも多く、そういう馬は適性があっても惨敗する。そこの陣営のニュアンスの見極めは難しいが、この馬の場合は、間隔開けてのプラス体重 で、当日の状態も問題がなかった。これがマイナス体重だと厳しかっただろう(長くなるので、馬体重についてはいつか別の機会に書こうと思う)。
午前中のレースでは初ダートになるショック馬を本命にすることは多いが、このように血統構成と、前走の走り(ラップを含む)、パドックから推察して、ダート適性を予想することも多い。


 皐月賞に見る、ロードカナロア産駒の上がり適性

 次に、今週のGⅠ皐月賞にも少し触れておこう。このレース、私はアドマイヤハダルから予想した。別路線で鮮度があって、内枠向きだったからだ。また、夜に軽い雨が降る予報だったが、翌日が晴れる予報なので馬場は急速に乾いて、前に行く馬が案外少ないこのレースは、上がり35秒台前半と睨んでいたのもあった。ロードカナロア産駒は、ウマゲノム辞典やnoteの高松宮記念のコラムでも書いたように、レース上がりが36秒を超える極端に重い馬場だと急激に期待値が下がる。ただ、道悪でも上がりがそこまで落ちないレースなら、むしろ得意なゾーンになってくる。ということは、軽い降雨で、まさにピッタリの馬場になるだろう。それに、恐らく今の中山の馬場を見ると内から乾いていくタイプだろうから、ロードカナロア産駒得意の、内枠から最内を突く競馬も有利に働く。
 ところが、朝起きたら頭を抱えることになってしまった。
 前日に予報と違って、とんでもない豪雨が降ったのだ。ロードカナロア産駒の一番苦手な、極端に重い馬場になったのである。
皐月賞も、レース上がりが37秒と、究極の消耗戦になって、最後はロードカナロア産駒らしく、体力切れを起こして失速した(それでも予定通り乾いたインを付けば良かったが、外に出したので伸びるインに出したパワー型の3頭には、余計に体力的に敵わなかった)。
ゲノム辞典で「レース上がり別グラフ」を利用する際は、当日の馬場をしっかりチェックして、そのゾーンに入るくらいの雨なのかどうか、それまでのレースで確認しておきたい。


 オプション表の使い方
-結局、皐月賞はオプション通りだった・・・ー

 せっかくなので、ついでに前回ここで書いた「3歳牡馬M3タイプ」にあるオプションの見方も、おさらいしておこう。エアフォーリアは、前回のコラムでは、オプションを「延」、「中」、「開」と記した。これは「延長」、「中枠」、「開いたレース間隔」が合うという意味で、今回は200m延長で、7番枠と中枠、中8週と開いたレース間隔と、3つ全てを満たしていたことになる。タイトルホルダーは「延」、「短」、「外」、「重」で、距離変更が今回無いので最初の2つはノーカウントだが、「かなり重い馬場の外枠」と、やはり2つとも条件を満たしていた。私は、揉まれ弱く活性化面で微妙なステップだったので、小回り中山の多頭数替わりというステップが悪影響をもたらすと考えたが、極端に重い馬場が活性化面と揉まれ弱さを、上手く帳消しにしてくれたということになる(ちなみに3着のステラヴェローチェも、オプションは「重」、「延」、「短」、「内」で、当日は綺麗に3つ当てはまっていて、オプション通りに予想しとけという話ではあったが)。

 ラーゴムの戦績で見るオルフェーヴル産駒のポイント

 もう一点、ゲノム辞典という観点から、このレースで注目していた1頭が、ラーゴムだった。3番人気のきさらぎ賞で本命にして、ヨーホーレイクとのマッチレースを制した馬である。
 同馬は、最初に出て来たセイレーンと同じ、オルフェーヴル産駒になる。
オルフェーヴルといえば、今回の辞典で、前半の入りが前走より一気に速くなると対応しにくくなる種牡馬として、ラップ解説のメインとして詳しく取り上げた馬だ。
 確かに、2着の京都2歳S、勝ったきさらぎ賞と、前走より前半3ハロンがペースダウンするにしたがって内容を良化させた馬である(もちろん前走は、「相手強化で馬群に入れて集中すると強いオルフェーヴル産駒の内枠」というのも、本命にした理由ではあったが)。
今回はペースアップだが、やはり得意の相手強化で、恐らく差しに回る位置取りショックも仕掛ける。その形なら集中力を持続して上位に来るのでは?と、通常のオルフェーヴル産駒のパターンなら考えられるし、私もその可能性がそれなりにあると考えていた。
 ところが、13着惨敗と大きく人気を裏切ったのである。前走で下したヨーホーレイクは、最速上がりを記録して、差し馬は内を回らないと間に合わないインの前残り競馬を、外に出して5着まで追い上げたわけで、前走のレベルが低かったわけでもない。
 もちろん、今回は前走と一転、外目の枠だったこともあるが、連続でペースダウンする流れで内容を上げてきたオルフェーヴル産駒の場合、急なペースアップでは、追走でバランスを崩す確率が高いことを、象徴的に表す内容だったとも言える。
 以上から、オルフェーヴル産駒のラップ対応についてまとめると、

「それまでに何かしら先行や短い距離を走る、ハイペースを走るなどの、活性化がされていないと、急なペースアップは危ない」

 となる。

 オプション表から見えてくる、キンシャサノキセキ産駒の狙い時

 オプションの使い方として、ついでに隅田川特別(中山芝1600m)も見てみたい。このレースは、前走1800mからの短縮馬でローズキングダム産駒のフォワードアゲインという馬を本命にした。ローズキングダムのオプションを見ると、「外」と「短」が共にBと高評価だ。今回は「短縮」の「外枠」だったのでピッタリである。また種牡馬解説には、「前走より0.5秒前半が速くなると複勝回収率が上がる」とある。これは今回から採用された、「前走より0.5秒前半が速い」ケースと、「前走より0.5秒前半が遅い」ケースでのデータになる。前走からのペースアップやペースダウンに対応するダイナミックデータ(動的データ)として、登場した指標だ。
 扱いの小さい種牡馬は、152ページに一覧として数値があるのでそこを見ると、ローズキングダムは0.5秒前走より速いと単勝回収率33.4円、複勝回収率130.5円とあり、逆に0.5秒遅いと単勝回収率57.7円、複勝回収率35.9円とある。ローズキングダムのようにそれほど産駒が多くない、サンプルの少ない種牡馬の場合は、ブレの少ない複勝回収率で見た方が無難なので、0.5秒速いと複勝回収率130.5円というのは、0.5秒遅いと35.9円と比べると極端な適性差と言える。
 前走は前半37.7秒と相当遅かったので、短縮の中山マイルでこれより遅くなる可能性はかなり低い。恐らく1秒以上は前半が速くなるはずだ。そう考えると、このデータは大きな追い風となる。
ちなみに、2着のクインズサンの父キンシャサノキセキのオプションも見てみると、「短」がBだ。また前走より0.5秒速くなると単勝回収率90.1円、複勝回収率67.7円に対し、前走より0.5秒遅くなると単勝回収率56.6円、複勝回収率62.8円と落ちる。そして枠順のオプションは、「外」がBだが、「内」はDだ。
 これらを総合すると、

キンシャサノキセキ産駒は、前走より速い流れの方が向くが、揉まれ弱いので、「揉まれない形での消耗戦になると理想的なタイプ」ということになる。

 ならば、前走前半37.5秒という超スローで6着に凡走した後の、短縮での、8頭立ての6番枠は、揉まれずにパワーを活かせる、絶好の条件だ。ということで、この馬が2着に来て、馬単を当てたのだった。


 間に合う短縮、間に合わない短縮
-ダノンシャンティ産駒の短縮から-

 最後にもう一つ、短縮馬を見てみよう。日曜阪神2Rの4番人気ダノンシャンティ産駒ダノンエクレールという馬だ。
単勝で10倍もついていて馬券的には美味しかったので本命に予想した馬である。同馬は、前走ダート1800mで、今回ダート1400mだった。
ダノンシャンティ産駒は、オプション表の短縮が「A」のように、短縮適性が極めて高い。どちらかというと芝血統だが、芝スタートの1400mで軽い馬場コンディションなら、ダートもそれほど大きな問題にもならないだろう。また、外からスムーズに加速する形も悪くない。
 最初に触れたように、ダート替わりのときは、前走のVTRやパドックを見ることも多いのだが、大幅短縮で初めての距離に出てくる場合も、一応チェックすることが多い(キャリアがある程度ある馬だと、馬柱と血統を見ればタイプは分かるので、VTRをチェックする必要はほとんどない)。
 このレースもVTRをチェックしたのだが、前走1800mを先行したときのスピードの乗りと、かなり胴の詰まった体型は、明らかに短縮向きだった(確認できる人は、是非見て欲しい)。
 以上の考察から、この短縮は自信があったので本命にしようと思ったが、せっかく辞典の発売週だし、ダノンシャンティ産駒のダート短縮1400mの成績も一応確認しておくことにした。恐らく、まずまずの数字に違いない。
 気楽に辞典をめくってみると、
 ・・・!
 思わず、「えっ」と、のけぞってしまった。
 ダート短縮1400mは複勝率0.048しかなく、複勝回収率も22.4円しかないのだ。いくらなんでも低すぎである。
 ただ短縮1200mを見ると0.245あり、1600mも0.133ある。特別高いわけではないが、1400mだけ飛び抜けて低いのも、ちょうど走れないステップの馬ばかりだった誤差の範囲とも取れるし、他の要素は満点の馬だったので、人気薄を考慮して本命のまま予想することにした。
 そしてレースは、血統とVTRから、前半の推進力はまずまず高くまた短縮向きのパワーもあると判断した、まさにその通りの位置取りと手応えで、4角を迎えた。
 ところがだ、「これは伸びるな」と思った4角を回った場面で、案外ぐっとこない。
 結局、3着だった。他の5着以内の馬が全て4角2番手という極端な前残り競馬になったので、せっかくの短縮で差しに回る形のパワーが活きなかったのもあるし、複勝で2倍以上ついた人気を考えると悪くはない走りとも言えるが、あの競馬を見ると、どうも「短縮ダート1400m向きの、スピードの持続力を伴う強引さがない」という内容でもあった。

 複合タイプについて(SL系)

 ダート1400mは基本的にSL系、ないしLS系が得意な条件になる(M3タイプの複合型は最近触れてなかったので、折を見て解説していこうと思う)。SL、LS系は、スピードとパワーの持続力で強引に押し切るタイプだが、精神的には比較的安定していて、あまり心身の起伏が少ないタイプでもある。その点が、単独のS系(例えばS(LC)とかS(L)とか)とは違う点になる。
 その中でも、短縮でダート1400mを走るには、Sの強いSL系が有利になる。そう考えると、ダノンシャンティのCL要素が強いまとまり系だと、短縮ダート1400mに向かうには、強引なパワーが欠けるということなのだろう。
 今後も、このようにデータと実際のレースぶりから受ける、種牡馬毎の短縮ダート1400mなど、細かくピンポイントな条件への適応力も、折に触れて見ていければと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?