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石橋啓一郎氏に聞く「プロ翻訳家」のお仕事(4)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。

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先週に続き、翻訳家で筆者の中学時代からの友人である石橋啓一郎氏との対談を続けていく。

翻訳というビジネスは、元々の言語の文書を翻訳してほしいクライアントがあって成り立つもの。一方で、そのクライアントが常に「快適な仕事環境」「万全の翻訳を目指せる体制」であるわけではなく、むしろ厳しい状況に置かれることも少なくない。

ゲームやニュース翻訳でそうした「翻訳の前提となる環境」はどうなっているのか? 今回はその辺の話題が中心となる。

対談収録した残りを勘案すると、もう少し続きそうなので、「全6回」に延長してお届けする。

なお、友人同士の間柄なので、ちょっといつもの対談よりくだけた話し方になっている点は、ご容赦を。(全6回予定)

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■企業の姿勢で変わる翻訳の質

西田:ソフトウェアのパーツとしての言葉って、ちょっとまだまだ、人間の力を借りないと無理だな、と思いましたね。

石橋:あのね、機械翻訳に任せようという発想が出てくること自体は実は健全かもしれなくて。

西田:うんうん。

石橋:機械って、これは本当かどうか微妙なところだけど、基本的には人間から言われたことしかやらない、というふうに言われていて。つまり、機械がダメな出力をした時には人間の指示が悪かった、ということじゃないですか。

そうすると例えばね、機械翻訳でゲームのテキストを訳させようと思ったら、キャラクターの性別はコンテクスト情報としてあらかじめ入れておいてやらないと訳せない、ということが分かり、じゃその情報は翻訳エンジンに突っ込む前に入れましょう、というふうになるかもしれないよね。

「その情報があれば人間の翻訳者もうまく訳せるんだよ!」と思うんだけど。

西田:そりゃそうね。

石橋:今は機械だったらダメでも、人間はなんとかしちゃうんだよね。

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