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夜な夜な焙煎して誕生した玄米コーヒー

MNHの小澤です。

2014年夏、庄内町に事務所をつくり、商品開発に挑戦していた頃(*1)。
「玄米を焙煎してコーヒーをつくろう」という話が持ちあがった。
そもそも庄内町は日本でも有数の米どころだ。


お米離れが著しい日本において、経営がひっ迫する米農家を守るため、新しいお米の価値をつくりたい。そういう実に正統的な理由からだった。
そして県をあげて推していた新品種「つや姫」を使うことになった。

玄米コーヒー自体は既にあった(他社がやっていた)が、まだまだマイナーな加工品ゆえにOEM製造などは不可能だった。どうせ自社製造になるのだから、ここは自分たちでやってみようと思い立った。

が、社員がだれも焙煎の知識をもっていないので、かいもく検討がつかない状態だった。とりあえず「コーヒー」の焙煎の仕方をあれこれ調べてみたりしていた。

ーーそしてある晩、ぼくは自宅のキッチンで焙煎してみることにした。

簡単にできると思っていたのだが、現実はそんなに甘くなかった。
フライパンで玄米を炒ること1時間。
まったく玄米が黒くなる気配がない……

これではらちがあかない、と思ったぼくは、知り合いの自家焙煎の珈琲屋にたのみこんで、直接教えてもらうことにした。その人のもとで根ほり葉ほり焙煎の仕方を聞き、物理的なからくりをしっかり学んだ。

そして家に帰り、再び玄米を焙煎してみた。
茶色くなるのに5~6時間ほどかかっただろうか。その日以降、何度も何度も実験をかさね、ようやく焙煎らしきことができるようになった。

この時点でぼくなりに最初の「レシピ」をまとめ、東北雇用のスタッフに「これを見てつくってみてほしい」とお願いをした。

あらかた再現できたのを確認すると、次は量産化だ。
これもまた、試作の日々だった。何度も何度もくり返し火の加減や時間などを調整しながらまとまった量の焙煎に挑戦していった。

焙煎のポイントはいくつかあるが、一番は炭化する直前で焙煎をやめること。炭化と焦げは紙一重で、これが難しい。さらに玄米の中心まで火を通すのには、経験による絶妙なさじ加減が必要だった。

なお、これ以外の細かい焙煎のレシピは、現状トップシークレットだ。
今でもぼくと庄内のスタッフだけが共有し、極秘に味の改良を重ねている。

ちなみにある日、銘柄の違うお米(あきたこまち)を焙煎して飲み比べてみると、驚いたことに、味が結構違った。銘柄によってバリエーションがだせるかもしれない、と新たな可能性も見出せた(*2)。

そうこうしているうちに、2014年夏に庄内町の「クラッセ」(*3)が開設され、そこの工房で量産をはじめ、晴れて「玄米コーヒー」を売り出していったのである。

(*1)2012年の3月に庄内町に東北に若者の雇用をつくる株式会社を設立し、地域活性化のための新事業を進めていた。

(*2)当時東北雇用の秋田事務所があったので、1年後にあきたこまちの玄米コーヒーを商品化する。

(*3)6次産業化を促す拠点として庄内町に開設された新産業創造館。


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