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100日後にデビューするYouTuberを見つけたので盗撮してみた #38
動画を観ているだけで視聴者はこちらの策略にハマっていく。知らずのうちにいつの間にか両手にガソリンを持たされている。
その時が来た瞬間彼らは怒り、感情のままに両手を振り上げてしまうだろう。
そうなる方法を私は丸山に説明した。
「うまくいけばね、と思うねんけど、どう思う?」
丸山は少しの間、飲み干したミルクティーのグラスを眺めていた。
やがてゆっくりと口元を広げ、隙間から歯を覗かせる。
「ほんま性格悪いっすね」
鈍く光る彼の目を見て、私もフッと息を抜く。
ノったということだ。
「丸山君も同罪やから」
それから今後の作戦を話し合い、私たちは解散した。
五日後、久しぶりに名も無きYouTuberの二人は企画会議を行った。
その間私はササノと連絡を取り合った。話していたのはたつやのことだ。
ササノはたつやに対してどういう印象を抱いており、二人の間にはどれ程の信頼関係があるのか探りたかった。
知り合って間も無い私にどれだけ本当のことを話すのかは疑問なため、自分から訊いておきながら話半分に流していたのだが、ただ一点、彼が強烈に主張していたことがある。
『たつや君と喋るのは楽しい』
ササノは彼と喋るのが好きで、そのとき、心の底から楽しいと思えるらしい。
ササノという人間はおそらく、そう簡単に人に心を開かない。その人間がたつやの前では素の自分を晒すのだ。
ササノにとってたつやが貴重な存在であることは間違いないと感じた。
今回、最後に会議してから約一か月後の機会だった。
だからというのもあるのだろう、盗撮した映像を観ながら私は、ササノに対し、いつも以上に楽しんでいるような印象を受けた。明らかにエンジンが違う。
たつやもノっていたのか、二人の波長は完璧に噛み合っており、それは視聴者の私にも伝わった。
良い傾向だった。内容はいつもと大して変わらないが、二人の裏切り合いを計画している今、表向きはできるだけ仲良しに見えた方がいい。
いいぞいいぞ、とほくそ笑みながら視聴した。
しかし、あるとき大きく動揺する。
たつやがボート企画を提案したのだ。
え。
思わず声が漏れる。
「それ言っちゃうんや…?」
隠し続けてもらわなければ、たつやの裏切りは成立しない。
映像を停めたまま、働かなくなった頭の中に小さな危機感が現れる。
それが一つ、二つと増え続け、やがて頭を埋め尽くすまで私は停まった映像を見続けることしかできなかった。
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