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エヌビディア埋蔵金伝説と金融業界の闇

$3,462,462,615,697

日本円にして約540兆円。先週18日、半導体大手エヌビディアの時価総額が、マイクロソフトを抜いて世界一位になったそうだ。

株式公開したときに購入していたら59万%のリターンになっていたという記事をたまたま目にした。10万円買っていたら、6億円になっている計算だ。

第二のエヌビディア株を見つけたい!!
そう思ってしまう。
僕はこの記事を読みながら、40年近く前のことを思い出した。


徳川埋蔵金伝説

当時、そば屋を営んでいた我が家の物置には、大量のそば粉が入った袋や醤油の一斗缶などが積まれていた。
その片隅に、なぜかそば屋とは全く関係のない機材が置かれていた。
金属探知機である。

昭和60年ごろ、テレビでは徳川埋蔵金を探す番組が盛り上がっていた。
徳川家の再興のために、幕末の勘定奉行小栗上野介が群馬の赤城山の山中に数兆円の金塊や小判を埋めたという伝説があり、テレビ局が大掛かりな発掘を行なっていた。

「金属探知機」イメージ図

この「埋蔵金伝説」の影響があったからかは定かではないが、当時の雑誌では金属探知機の広告を目にすることが多かった。価格は10万円以上だったと思う。
うちの父親は金鉱を見つけるつもりで、この機械を買ったと言っていた。
小学校低学年だった僕もこの金属探知機を持ちながら、近所の雑木林を歩いたりしていたが、ピコンピコン鳴って見つかるのは、ほとんどが空き缶やガラクタの類。一度だけ、百円玉に遭遇したときは、飛び上がるほど喜んだ記憶がある。その百円でビックリマンチョコを3個買った。
もちろん、埋蔵金見つけて大儲けできるはずはなく、父親が金属探知機に投資したお金はほとんど戻ってこなかった。
この埋蔵金ブームで儲けたのは、金属探知機のメーカーだったろう。


第二のエヌビディアは見つからない

エヌビディア株の記事を読んで、「第2のエヌビディア株を見つけよう」と思った人もきっと同じ顛末になるだろう。
埋蔵金銘柄を見つけようとしている人は、世界中に何千万人といる。今の時点で将来性がある会社はすでに株価は高いのである。
株価がさらに上昇するためには、現在の株価に織り込まれている将来性以上に躍進したときだけだ。織り込まれていた将来性以上に業績が伸びなければ、株価は当然下落する。

将来性があるのにも関わらず世に知られていない会社なんて、都合よく存在しない。
仮に存在していたとしても、素人がネット検索で調べる程度で見つかるはずはない。そんな埋蔵金銘柄を探して一儲けするのは、諦めた方がいい。

「埋蔵金伝説」で儲けたのは、金属探知機の会社だった。では、みんなが埋蔵金銘柄を探そうとすることで儲けるのは、誰だろうか。
間違いないなく、証券会社である。(だからといって、証券会社の株を買っても意味がない。それもすでに織り込まれている)。

証券会社は「あのとき、この株を買っていたら、積立投資を始めていたら、こんなに儲かっていたんですよ」という情報をしきりに流してくる。
彼らの目的は、僕らが儲けることではない。彼らが手数料で儲けることだ。煽られないように、一歩引いて、その話を聞いた方がいい。

「バブル最高値のときに積立投資を始めていたとしても、今ではこんなに儲かっているんだ」と説明はかなり悪どいと思っている。

https://www.nomura.co.jp/el_borde/article/0135/

バブル最高値を記録した1989年に積立投資を始めても、高値で購入しているのははじめの数ヶ月だけ。その後は長期間、安値で積立を継続しているわけだから、実は最高のタイミングで投資を始めているのだ。
もしも、5年前の1984年に積立投資を始めていたら、まったく違う結果になっている。
それに、2024年まで持ち切れば儲かっているのはたしかだが、2010年に定年を迎えて、お金に困って解約していたら大損をしている。証券会社の「たられば」には気をつけた方がいい。


日本に絶望する理由

エヌビディアに限らず、GoogleでもAmazonでもアメリカの新興企業の成長は著しい。しかしながら、日本では残念ながら期待できないだろう。
今週の読んだニュースで絶望した。

大和証券が、千葉の渋幕(渋谷教育学園幕張中学・高校)で「日本の未来を明るくする方法」として、アメリカに投資しましょうという授業をおこなったそうだ。
金融とはお金を融通すること。投資されたお金が、未来に向けて挑戦する人たちに流れることで経済は成長する。
渋幕といえば日本屈指の進学校。日本の未来を担う彼らの中には、将来のザッカーバーグやイーロンマスクもいるかもしれない。
その彼らに、アメリカに投資しましょうと教える。
タチの悪いブラックユーモアだ。

金融商品を買わせるための教育を金融教育と呼ぶなら、日本には未来がない。

たしかに、ドル投資をした方がよいのだろう。


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