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それってキレイごと?「人間関係という資産が一番重要だ」

「人間関係という資産が一番重要だと思って生きている」

アベマプライム火曜日(7月9日)での田村淳さんの言葉。

僕はすぐ隣で、その言葉を聞いて大きく頷いていた。
放送時間がのこりわずかだったので、それ以上話を広げられなかったが、実は僕もまったく同じことを思っている。


なぜ、お金より人間関係か

この日、金融教育の専門家として、僕はスタジオに呼ばれていた。
高校でも金融教育が始まっているが、内容が資産運用の話に偏っていて、証券会社の客を育てるだけの教育になってしまっている。その問題について番組でとりあげてもらった。

番組の趣旨とズレるので話さなかったが、学校の講演でいつも話していることがある。

「お金よりも仲間のほうが圧倒的に大事です」

道徳的なキレイごとを言っているわけではない。
マネー資本主義ど真ん中の会社で働いてきた僕が道徳的な話をしても説得力がない。これは、お金という道具の正体について考えた上での当然の帰結だった。

そもそもお金とは何か。

まだ貨幣が存在しない大昔、僕らはいくつかの家族と一緒に村を作って助け合って生きていた。とはいえ、小さい村社会の中ではできることは限られる。魚採りが上手い人がいなければ魚は食べられない。

貨幣を使用するようになると、他の村と交易をするようになり、徐々に社会は広がっていく。たとえば、自分の村で採れた栗を売ってお金に換えて、そのお金で魚を買うことができるようになる。

お金が魚に変わったのではない。お金を支払うことで、魚採りがうまい人に協力してもらえるようになったのだ。

お金を払って物やサービスが手に入れるという行為は、お金を払って協力してもらうという行為ともいえる。
(この話をすると人件費以外にも材料費がかかるという反論がしばしば返ってくるが、その材料もまた誰かが作っている。話すと長くなるが、くわしくは自著「きみのお金は誰のため」に書いている)

つまり、お金という道具の根源的な価値は、自分のために協力してくれる仲間を広げられるということにある。

とはいえ、お金を払えば誰もが協力してくれるというわけではない。
たとえば大谷翔平にどれだけお金を積んでも、ホームランの打ち方を教えてもらうことはできない(おそらく)。しかし、チームメートや仲間だったら教えてもらえる。

お金と仲間の関係

お金があれば、知らない人が協力してもらえるかもしれない、ということにすぎない。

そう考えれば、仲間はお金よりも圧倒的に大事だし、これはキレイごとでもなんでもなく当たり前の話だ。
だから、「人間関係という資産が一番重要だと思って生きている」という言葉は僕は大きく頷いて聞いていた。


どうすれば仲間が増えるか

愛すべきキャラであれば仲間を増やすことはたやすいが、キャラ変することは難しい。

では、どうすれば仲間が増えるのか?

”同じ目的を共有することが大事”
と、僕が『きみのお金は誰のため』の中で書いているのは、まさにその答えだ。

たとえば、災害が起きたとき、”ぼくたち”と感じられる範囲が急速に広がった経験はないやろうか。支え合って生きていることを実感して、社会に手触りが戻る。他の人のために何かできないかと考える人が増えて、ボランティアに参加したり、救援物資を送ったりする。
 それは「日常生活を取り戻す」という目的を社会全体で共有できるからやと思う。東日本大震災のとき、自衛隊や多くのボランティアが救援活動を行った。多くの国々が救援部隊を送ってくれた。困難の中にあって、世界の人々と支え合っていると実感できた。災害で世の中の仕組みが変わったわけやない。ただ、僕らの意識が変わっただけや。
 だから、僕は同じ目的を共有することが大事やと思っている。だれもが共有できる目的は、未来や。
 気候変動でも自然破壊でも、世界全体が直面しているような問題に興味をもって、未来を守るという目的を共有できれば、”ぼくたち”は広がる。お金の奴隷になっている大人たちのように、SDGsという標語を掲げるだけで、ビジネスチャンスとして金儲けに走れば、”ぼくたち”は狭いままや。お金の奪い合いが始まる。
 そうならないために、僕らは未来を共有した方がいい。

『きみのお金は誰のため』ボスからの手紙より

目的を共有というとわかりにくいが、部活の仲間を考えてみればいいと思う。サッカー部のチームメートにドリブルのやり方を聞いて、お金を要求されることはない。「チームが強くなる」「サッカーを楽しむ」といった目的を共有しているからだ。

この目的さえ共有できれば、知り合ったばかりでもすぐに仲間になれる。実は、今回僕がスタジオに呼ばれたのも、目的を共有できたからだ。

収録日の数日前のこと。
田原総一朗さんのイベント「田原カフェ」で、アベマプライムのチーフプロデューサーである郭さんに初めてお会いした。
イベント終わりに、僕が感じている金融教育への危機感についてお話ししたところ、「すぐに取り上げましょう」ということで、番組に呼んでもらえたのだ。

お金はゼロサム、仲間はプラスサム

そして、お金を増やすことのほうが難しい。
自分のお金が増えるとき、必ず誰かのお金は減っている。お金はゼロサムなのだ。
(利息や配当によってお金が増えるときも、そのお金を支払う銀行や企業のお金が減っている)
一方で、仲間はお互いにとってプラスだ。自分にとって仲間が増えるとき、相手にとっても仲間が増えている。

その意味でも、人間関係という資産を増やすことは何よりも優先すべきだと思うのだ。

(老後のことを考えればお金を増やすことも必要だ。しかし、必要な金額はインフレによって2000万円から4000万円に増えている。この理由もまた、「お金という道具の根源的な価値は、自分のために協力してくれる仲間を広げられる」というところにある。これについても、詳しくは「きみのお金は誰のため」に書いている)


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お金や経済の話はとっつきにくく難しいですよね。ここでは、身近な話から広げて、お金や経済、社会の仕組みなどについて書いていこうと思います。 …

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