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予定にないことを書く勇気

もうじき新しい手帳を使い始める季節になります。スマホでスケジュール管理をしていると、新しい年に新しいモノをおろすというような区切りがありません。手帳は一般的に一年ごとに新調します。新品の手帳を開くと、さてなにから書こうかドキドキとワクワクと、本当にこんなこと書いてもいいのかというちょっと後ろめたい気持ちが交錯します。毎年味わう気分です。新しい靴を履いて出かけるときや、新しい鞄を傷つけないようにかばいながら持って歩くというような、真新しいモノを身にまとうとちょっと自分がバージョンアップしたような、うれしい気持ちになります。

ということで新しい手帳に書くわけですが、既に確定しているスケジュールは書きやすいものです。決まっているから。まだ決まっていないスケジュールを書くとなるとどうでしょうか。書いていいのか、なかなかその覚悟が定まらないでしょう。後で消すかもしれないので鉛筆かフリクションペンで書くという気持ちになるでしょう。

以前お話ししたように、わたしは日本人であることを誇りに思い、この国が大好きです。でも、ひとつだけ嫌なことがあります。日本人は有言実行を称えますが、基本的に謙虚さを重んじ大言壮語を語る者を嫌います。「あいつは口先だけのやつだ」というわけです。覚えていないだけで、誰だって一生に一回は言われているんじゃないでしょうか。そうでなくとも「そんなことは絶対に無理だ」なんていわれたこともありますよね。幼いころは将来の夢を語っても両親は笑顔で応じたのに、いつしか「現実を見なさい」にかわってしまいます。年齢の近い友人たちならまだ話を聞いてくれるかもしれません。やがて、それすらも…。
夢を語りつづけることはこの国ではなかなか難しいのです。

でも、ワールドカップ参加が夢物語だった時代のサッカー選手たちや大リーグに挑戦したパイオニアたちも、夢を信じて生きてきました。三冠王を取った落合博満選手もそうです。ブリキのおもちゃ鑑定士として有名な北原照久さんも、「古いおもちゃの博物館なんて作れるわけがない」という周囲の声を跳ね除け、今ではハリウッド映画でコレクションが紹介されるほどです。

じつはわたしもひとつそんな体験があります。
わが社の社名「コンピュータリブ」は、1974年にアメリカの社会学者で、ホームページのハイパーテキストの生みの親であるテッド・ネルソン氏の論文のタイトルから引用しました。このフレーズに一目惚れしたわたしは、会社創業98年4月10日に勉強仲間の太田秀和さんのつながりで、SFC(慶應藤沢キャンパス)の大岩元教授の研究室を訪ね、運よく直接テッド氏本人と会うことができました。そして、私のめちゃくちゃな英語とそばにいた学生に通訳をお願いし「コンピュータリブ」を社名使う了解を取りつけました。
コンピュータリブは「コンピュータ」と「リブ」とふたつの単語からなります。「リブ」は”解放する”という意味で、社名を直訳すると”コンピュータを解放する”になります。この”コンピュータ”が当時とは姿かたちを変え、使う人も、使いかたも変わってきています。わたしはこのズレに、わたしたちが役に立てそうな“なにか”があるような気がしています。

この人に会いたい、こんなお願いをしたい、むちゃなことであっても、じっとしていてもどうにもなりません。まず、夢を語りましょう。笑わずに聞いてくれる友人が欲しいのであれば、紙の手帳を使えばいいのです。あなたが来年出会う素敵な友人は、あなたの夢を理解し支えてくれるイマジナリーフレンドです。「ヒーローになりたい」と書いたらヒーローにしてくれるドリームノートかもしれません。小さな雫でしかなかった思いは、人の心をつなぎ、受け継がれ、やがて大きな河となることでしょう。

手帳の前ページにある縦軸に曜日がある曜日優先カレンダーに、来年の一年間のスケジュール、決まっていることも、決まっていない予定も、ざっくり入れてみてください。消せないボールペンや万年筆で書いてみてください。手帳とのやりとりに、ちょっと勇気が必要かもしれません。でもこれがスケジューリングだと思うのです。自分自身とのやりとりなのだと思います。

ひとつスケジュールが入れば、そのスケジュールの準備のスケジュールが入ります。スケジュールが重なれば前後左右を見て調整します。今年の手帳を見返して、新しい手帳に転記する作業も一年の棚卸し、振り返りの充実した時間になるでしょう。手帳を通して今の自分を知ることができます。こうして、来年一年間のスケジュールがあっという間に埋まってしまうでしょう。

おすすめは、そうなる前に「この日は何もしない」「バッファに使う日」「Do Nothing」を先に入れてスケジューリングすることです。スケジュールリングに溺れることのないように、どうぞ、人生を豊にしてください。

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