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【#05】人間の視覚のルールを応用する

5回目にしてやっと「視覚」とか言うデザインぽい言葉が出てきました(笑。

ちょっと硬い言い回しですけれど、つまり誰もが「そういえばそうだ!」と思い当たる、人が何かを「見る」時の共通ルールを大いに利用すべし!というお話です。


紙面や画面などを見るときに、人の視線がどんなルートを辿るのか?

多くの場合、左から右へ、そして上から下へ、と視線が動いていくはずです。

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文字が左から右に書かれるという文化が前提でしょうね。


紙面というエリアのあちこちで、左から右、上から下、の視線の動きを繰り返した結果「Z型」の大きな流れとなり、その流れは裏面へと続きます。

これが、人が何も意識せずに目線を動かした時の無理のない流れ、デザインで利用するべき視覚のルールです。


このルールを実際のデザインに当てはめてみます。これがA4のチラシ画面だとしたら?

一番最初に目にしてほしい大事な情報は、どこに配置するのがベストでしょうか?


ルールに従えば「画面の一番上」という選択肢が有力ですね。

位置を変えて見比べてみましょう。

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紙面の一番上にタイトルをに入れたものは、残りの下のスペース(緑)が全部、視線が意識せずとも流れていくエリアと一致します。

ここに興味のある言葉が入っていれば、気に留めてもらえる可能性が高いですよ!


紙面の真ん中に入れたものは、視線の動きのルールと一致するスペースが下半分だけ。

紙面の一番下にタイトルを入れたものは、視線の動きのルールと一致するスペースがありません。


両方ともタイトルより上のスペースを見るには、川を遡るように流れに逆らって視線を上に戻す必要があります。

ルールと一致していないということは、見落とされる確率が高いということ。

なんとか手にして読んでほしいチラシを作っていながら、見落とされやすいエリアをチラシの中にわざわざ作るという矛盾が生まれます。


また、チラシの一番下まで目線が来たとき、多くの人は習慣的に「裏返して見る」という行動をとります。(これはまた「#07 チラシのストーリー性というルール」で詳しく扱います)

その裏返したい衝動を抑えて、意識的に目線を上にジャンプさせる工夫を施すというのは、かなりの手間です。


「手にしたチラシは普通ざっと全体を見るものだ」という意見もありますが、しかし、その「普通」や「ざっと」というのは定義が曖昧です。

曖昧なのは、見えてない把握していないという証明でしかありません。

多くの場合、そういったところに改善すべき何かが眠っているんです。つまり曖昧さは「宝物埋まってますフラグ」。

積極的に、徹底的に見直してみることをオススメします。


もし、タイトルを下に持ってくる明確な利点が考えられるなら、ぜひそれは実験してみるべき。

私は、人の持っている元々の習慣を利用して楽をする、という方法を提案しているけれど、それは正解ではありません。

自分だけの方法をみつけるのはとても素敵なことです。

正しいも間違ってるも、誰も知らない。その人が望む結果にたどり着けるか?が、一番大事なんです。


他にも、人間の視線は周りと違うものに引きつけられます。これも視覚のルールとして使えるもの。

一つの単語を目立たせるという単純な例で見ていきましょう。

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まず、文字の大きさを変える。色を変える。

空間を生かして一つだけポツンと置くと、文字が小さくても目立ち、そこに目が引きつけられます。

ほかにも、文字の太さを変える、アンダーラインを引く、囲んでマークする、など。

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あたりまえすぎて、何それ?って思えるでしょ?


では今までに出てきたルールを応用して作った実際のチラシを見てみましょう。

自分の視線がどう流れるか?を観察し、その理由を考えてみてくださいね。

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上のチラシではタイトルの13文字のテキストを、5文字以下の3つのパートに分けて目が引きつけられる順番を作っています。

「呼吸教室」 → 「管楽器奏者」 → 「のための」という順番で目に入れてもらえるよう、大きさや色を変えてあるのがわかりますね。


なぜ3つのパートに分けたのか?というとこれも人が文字を見て取る時のルールを使っています。

人間が、一瞬で文字を見て取り、意味がつかめる文字数というのは、何文字でしょう?

速読を教える講師の方に聞いたところ、5文字程度だそう。意外と少ないものです。


13文字は、タイトルとして決して長すぎるわけではありません。

しかし、この13文字を全て同じ大きさの文字でべたっと置いてしまうと、13文字全部を今ほど大きくはできません。

目立ちませんし、13文字を読み終わるまで意味も取りづらい。

何より、一番目に入れてほしい「呼吸教室」を、一番最後に目にすることになります。


13文字を読み終わるなんて1秒もかからないはずですが、その瞬間にもどういう順番で情報を届けるか、がチラシの明暗を分けます。


なので、13文字のテキストをさらに3つに分け、優先順位をつけました。

一番最初に目に留めてもらいたい単語は「呼吸教室」。これを可能な限り大きな文字に。

二番目は「管楽器奏者」。誰が対象かということを知って、自分のことだ!と思ってほしい大事なところです。

「のための」に関しては、読み飛ばされても問題ありませんし、これまでの2つの単語を目にして、勝手に脳内補完してくれることも期待できます。

人が様々な情報を自分自身で補いながら読んでいる、というのも人間の視覚の使い方のルールになりますね。

これで、パッと見の瞬間の勝負に強いチラシとなりました。


こういった、単純な当たり前を生かす工夫を細かく積み重ねていくことが、読みやすい、伝わりやすいデザインを結果的に作ってくれます

こういった単純なルールって、他にどんなものがあるのか?

興味を持ったら、自分が何かを見た時なぜそこに目が引かれれたのか?どんなルールに従ったのか?を考えてみるのがオススメです。

きっと「な〜んだ!」という当たり前が隠れているはず。

そしてセンス不要!視覚のルールを応用して機能するチラシが作れるようになれますよ!


さて、次の記事は、「#06 人間の思考のルールを応用する」です。

思考と言っても実際にルールを見出していきたいのは、人の行動の部分。

「行動は思考の結果」なので、思考をみていく必要があるんですね。

では、お楽しみに。



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