インクが字を書く 2012-11-16

「このボールペン書きにくいな~」と思う時。それは、ボールペンのせいばかりではないのかもしれません。



先日レッスンで、ある生徒さんが選んでいたのは「書く」という動作。

買い物をしていてサインをする時、ボールペンがかすれてうまくサインが出来ず、3本も代えてもらったと言うのです。

店員さんが書けるかどうか確認して渡してくれるのに自分が使うとかすれてしまう。



そして、実際書くと言う動作をやってみると、力を込めてペンを握っており、筆圧も強くてこれは肩も凝りそうな感じ。



先生は、生徒さんにペンを置いてもらい、「書く」と思った時にしてしまうなじみのある動作にちょっと待ったをかけました。

それから、親指と人差し指だけでペンを挟んで持ってもらいました。

もちろん、頭が自由に動けるように、そして体全体がついてくることを自分にお願いしながら。



それでペンを動かしてみてと言われ、空中で実際動かしている様子を見ると、さっき実際に書いていたのとは違う繊細な動き。

さらに、ペンの先がリードして指を動かすと考えてみて、と言われて書きはじめると、さっきまでのちからを込めた書きっぷりがなくなりました。



そしてさらに「ペンの先から出ているインクが文字を書く」と思ってみてと言われ、そうすると実際、はたで見ていてもその動きがやわらかく流れるようになりました。

と、「文字がかすれなくなった!」という声。

「ボールペンが悪かったんじゃないのね」と思わず笑い出していました。



そこでみんなも「インクが文字を書く」と思いながら書く実験をしてみたところ、確かにかすれないし書きやすい、という感想が続出。

お互い観察してみると、そう思って書いたときの方がやはり、動きがなめらかで流れがあって、やわらかい感じ。



私もやってみたのですが、こんなに力を入れなくても書けるのかとびっくり。

またこの考えでたぶん力の入れ方も違ってくるのでしょう、文字のキャラクターがずいぶんと変わり、私ってこんな字を書くっけ?と不思議になるくらい。



私は字が下手で、宛名を書いたり記帳したりというのが大の苦手。

ペン字とかもやったことがあるものの、正しいことをしなくちゃいけない感じや矯正する感じがどうもなじめないし、全体のバランスを見て書くと言ってもなんだかよくわかんないし。。。という状態で、字は下手でもいい、仕方がないと思ってたのです。



でもこの「インクが文字を書く」と思いながら、自分が素敵と思った文字を真似て書くんだったら、もしかしたら自分が満足いく文字が書けるようになるかもしれない、と思えました。

そうしていろいろ書いてみると、なんだかうまくいかなかった文字全体のバランスを見て書くというのも、今までに見た、いいと思う文字のバランスとかが思い出され、全くやったことないのに、へんやつくりの大きさに強弱をつけてみたりしはじめ、今まで書いたことのないような(自分にしては)見目のよい字が書けたのです。

文字を書くって、面白いなぁ。。。と思った自分にまたびっくり。



たぶん、苦手と思わないことや、ペンを持つ手を始めいろんなところの力が抜けたことで、空間も含めて全体を見る余裕が自然と出てきたり、今まで蓄えた知識のなかから必要としている情報がきちんと取り出されたり、自分が書きたいと思った方向に素直に線を引くことができるようになった、のかな?



考え方を変えると、身体の使い方が変わってきて、本来の機能が動き出す。

そしてそれが再び考え方にも影響を与え、さらに変わっていく、ということなんだろうか。



自分の文字という、もう変えようもない、変えたくても変えられない癖のかたまり、と思っていた部分にアプローチできる可能性があることがわかって、なんだかちょっとうれしくなりました。



もしかしたら、「アレクサンダーテクニークを使ってお習字」なんていうのも面白いかも~。

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