肘と手首の痛み 2012-12-06

昨日のレッスンではヴァイオリニストのBさんが、最近高音を弾くときに生じる、肘と左手親指の付け根の痛みについての探求をしていました。

15分くらい練習していると痛みが出る。そしてそこに痛みが出るようになったのは初めてだと言うことでした。



ジェレミー先生から、では親指が何をやっているのか思いながら弾いてみて、親指の仕事がどんなことなのかを知るために、と言われて弾きはじめ、ほどなくBさんは声を上げました。

「こうやって、親指にすごい力をかけてた。。。中指と親指で挟みたくなって。。。それで痛くなるんだ!」

ヴァイオリンのネックに添えている左手で、高音を押さえるために指板の奥の方にまで指を伸ばす時、親指をネックの付け根に押し付けていることに気づいたのです。

「でもそれでどうしたらいいのかわからない。。。」



「では、指先についての考えを変えましょう。こんなふうにスイングする」

指先だけでなく、手首や腕全体から指先までが、指先の方向に行く動きを、ジェレミー先生がBさんの手を持って動かしました。

「そして音が生まれる動きが起こるのは指板。手の全部が指板まで行って弾くと考えて」とさらにアドバイスしました。



しばらく弾いてみたBさん。親指にかけていた力はなくなったようで、さらに肘の緊張も抜ける!と言いました。

「すごく新しい使い方という感じ」



以前は弾いていると肩が痛くて、でも頭と頸椎を体の方へ押し下げる癖に気を付けるようにしたところ、肩が痛むことがなくなったそうです。

「でも」

Bさんは言いました。

「そこのバランスが変わったので、他とのバランスも変わり、また新しい問題がいろいろと出てきたのだと思う。肘や手が痛くなるのって初めてだった。」



それを聞いた先生は、そうやっていろんな問題が次々と出てくることは実は問題ではなく、むしろ同じ問題がいつも出てくるということの方が問題なのだと言いました。

次々と問題が移り変わっていくことは「いいこと」なのだと。



一つの問題が変わらないということは、それの負荷も変わらず、いつかはその負荷に耐えられなくなるということもありうるのでしょう。



そして人間の身体は繊細なバランスがいくつも積み重なって複雑に関係しあって成り立っているんだなぁと再認識。

以前、整体に通っていた知り合いが、肩が痛くてかかっているのに関係なさそうに見えるところまで施術される、それは全身が関係しあっているからだと言われた、と言っていました。

他の知り合いも、整体のような施術で、肩が治ったらそっちが、そこが治ったらこっちが、と痛いところが変わっていったと言っていたっけ。



身体の中で関係ないところはなく、全てが影響を及ぼしあっている身体を使って、私たちは立って、歩いて、ご飯を食べて、パソコンを打って、演奏をしていられる。

一か所だけで完結している問題なんてないってことなんですね。



はじまりは確実にコレ!原因は絶対コレ!これさえなくせば!というのはわかりやすいし、とっつきやすいけど、部分的、表面的すぎる判断で、かえって危ういのかもと思いました。

アレクサンダーテクニークでは、正しい姿勢、正しい使い方というのはなくて、そういう一つのポジションを頼りにするようなやり方でなく、全体性、協調性というものを大事にする、その理由にまた納得ができた気がしました。



人間て、その人なりのバランスを一生取り続けて生きていくものなのかもしれないなぁ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?