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詩集「声を聞かせて」

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あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
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2018年12月の記事一覧

泣いた、夜

泣かないための
上をむく方法は
やっぱり駄目で
やけに綺麗な月をみて泣いた、夜

苦さのせいにしようと
かじったビターチョコレートには
君の名前が書いてあって
思い出した優しさに
結局泣いた、夜

口にした
ごめんね、が
届かないまま
冬の空気に触れて
曖昧にした日々が
いまさら、痛い

僕達は

いつだって会えると思っていた
いつだって声が聞けると思っていた
いつだって笑い合えると思ってた

さよならの少し前
泣きそうな横顔
夕刻のオレンジが
音もなく落ちて

僕達は
無力を知る

欲張りになっていくばかりの

声が聞きたかっただけ
手を繋ぎたかっただけ
視線を交わしたかっただけ

ほんの少しが
重なって重なって
ほら
欲張りになっていくばかりの恋

雨が止むまで

優しさは何で出来てますか
切なさは胸のどこら辺にありますか
好きです、と打ち明ければ
恋は始まりますか

もう少しだけ
声を聞いていてもいいですか

雨が止むまで