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詩集「声を聞かせて」

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あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
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2018年10月の記事一覧

一人きりでも

遠ざかる街の喧騒
ポツンと灯る街灯は
どこか他人顔で

重なり始める
夜を背にして
確かな何かを探す

目を凝らして
一人きりで

当てがなくても

見送るばかり

待ちぼうけばかりの恋は
涙を忘れて
優しさも忘れて
指先が冷たくなりました

真冬のすました空に
さよならも言えず

ただ
背中を見送るばかり

きっと自由なのです

風の匂いをまといましょう
青く青い空を
行きたいところまで
ふらりとゆらゆらと

意思は
次へと繋がるための
明確な意味

きっと
私たちは
自由なのです

過ぎゆく、今

言葉を探している間に
いくつかの
約束も
時間も
過ぎ去ってしまった

今日も今日が
緩やかに通り過ぎては
遠くで誰かが手を振っている

さよならと
言えずに終わった
あの恋は
今、幸せだろうか

週末

週末は
いつも浮かれ気味で
私たちに
時間を忘れさせてしまう

認めてしまおうよ
月曜日の危うささを

泣きそうな痛みに
笑顔が似合うと
気安く言わないで

忘れてくれていいよ

さらり、とかわして
忘れるくらいでいいよ

雨が降るように
空が晴れるように
風が吹くように

何気ない毎日の中に
溶け込んで
気づかないみたいに

この告白を
さらり、とかわして

群青

ほんの少し
重みを増した
群青色の空は
どこかひとりきりで
あなたと私によく、似てる

寂しさを含んだ思いは
吐いた息と一緒に
どこかへ行ってしまった
途切れては、途切れては
散り散りに、散り散りに

あなたを知りたかった、もう少し
私を知ってほしかった、もう少し

夕方六時の空の冷たさに
この胸を抱えて
途方に暮れる、手前