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詩集「声を聞かせて」

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あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
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2018年9月の記事一覧

ビターチョコレイト

甘くもなく
苦くもなく
まるで
あなたとの恋のようでした

さよならさえ
言わなかった二人に
きっと
お似合い

ずるい言い訳

嫌いじゃないから好き、なんて
そんな方程式に
行くあてのない感情を
押し込めて
言い聞かせ

さよならまでの
ずるい言い訳

静かな雨の降るところ

密やかな約束は
優しいまま
寂しさを忘れたふり

あなたの声に似た誰かの声
あの頃に似た誰かの記憶
なにも言わずに
立ち止まっては

静かな雨の降るところ
静かな夜の降るところ

優しい記憶が降るところ

なんとなくの

.

なんとなく出会って
なんとなくで別れて
もうそれっきり

どうでもいいのに
涙も出ないのに

なんとなく寂しい
なんとなく悲しい

なんとなく
なんとなく

触れたかった

寝静まったはずの
コインランドリーで
今日の汚れを
グルグル回している

明日が平等にくるのなら
このため息は
もう役には立たない

せめて、一瞬
あなたの肌に
触れたかった

例えば

例えば誰かの
例えばあなたの
例えばわたしの

願いは
祈りは
やわらかでしょうか
やさしいでしょうか

深く眠る思い出を
孤独にさせてはいないでしょうか

いつか出会う明日が
幸せでありますように、と

ここで
ここで

眠れない夜の羊の数え歌

今夜も
ああ
ほら
眠れない
眠れない

眠れない言い訳を
昨日のあなたのせいにして
私が私を今日に置き去りにして

羊をずっと数えているのに
指先は夜の端を掴んでは
抜け殻になった輪郭だけ
抱きしめている

眠れない
眠らない夜に
羊が一匹
ほらまた一匹

真夜中の真ん中

明日の準備をしようか
日付変更線を越えた先で
数えられる幸せだけ鞄につめて

恋焦がれた
あなたの横顔を
忘れたふりをして

悲しくとも
寂しくとも

真夜中の真ん中で
深呼吸、ひとつ、ぽろり

君が泣いて

.
くだらない日々を重ねて
つまらない雨の音を聞いている

届かない祈りばかり並べて
後悔ばかりを食べている

明日になんて興味はないと
君が泣いて
僕は伸ばした指先をしまった

くだらない日々が
愛しいと言ったのは
誰だっただろう

今日も今日が過ぎていく
その意味を知るのは
ずっとずっと先

ずっと、先