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詩集「声を聞かせて」

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あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
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2015年5月の記事一覧

「溜め息を抱く」

夜空に浮かぶ
月の明るさを
信じて疑わないように
あなたを
信じぬく事が出来たら
なにか変わっていたのかも知れないと
風に思いをのせるけど
夜に隠れて見えなくなるだけ

離れた指が
もう一度
繋がれることはないと
わかっているから

今日も
ここで
途方に暮れる

溜め息だけ抱いて

「夏の手前」

肩を寄せあい
交わした約束を
少しも疑わないで
雲の流れるままを
あなたと二人
眺めていました

季節は巡り
もう何度目かの夏の手前

いつからすれ違ったのか
答えは見つからないまま
さよならを決めた
あなたを
わたしを
ゆっくりと
懐かしく思い出して

夏がきます

手紙

あなたに
手紙を書きましょう
最後の我が儘
かすかに残して

あなたに
手紙を書きましょう
忘れられた約束
ポストに入れて

あなたに
手紙を書きましょう
もうここには
戻らない

「流れてしまえばよかった」

時間が流れるように
私も
流れてしまえばよかった
記憶からも
あの恋からも
ただ静かに

紫煙

気まずい空気
煙草の煙に隠れるように
さよならを掴もうとする
あなたの指
ねぇ、といいかけてやめた
私の心

強気な笑顔も
心配性な優しさも
もう
思い出の向こう

今でも好き
泣くほど好き
それでも、もう
叶わない恋なら

さよならを聞かせて

********
*紫煙・・・・煙草の煙りの事を指します。

「会いたい、声がききたい」

ため息のような
真夜中の手前で
恋心を眺めては膝を抱える
恋しさは
肝心なあなたに届きもせず
電話もメールも
横を向いたまんまで
切なさだけが
熱を帯びて膨らんでいく

声がききたい

繋がっているはずの時間を
その指で鳴らして

傾ぐ

くるはずのない電話を待ち続けて
どれくらいたったのでしょう
街で偶然みかけた
あなたの名前に
ほんの少し
心 傾いで
まだ
忘れられない恋が痛む