トピックス 原油価格
トピックス 原油価格
⚫️2021.11.12日本経済新聞📰
【サマリー】
原油価格高騰
サウジ引き上げ
経済正常化が背景
【思ったこと】
次から次に、企業経営への大影響事項が、、やはり一寸先は闇
自社、自分のことを見直して
どんな明日でも柔軟に対応できるようにすべき
【記事全文】
サウジアラビア国営のサウジアラムコは12月積みのアジア向け原油の調整金を大幅に引き上げる。代表油種「アラビアンライト」は1バレル2.70ドルの割り増しと11月積みより1.4ドル引き上げる。世界的な経済正常化の進展などを背景に、原油需給が引き締まっていることを反映した。
サウジアラムコは11月積みまで2カ月連続で主要油種の調整金を引き下げており、「産油国間のシェア争いが厳しくなっていた」(石油大手)との声があった。12月積みでは一転して大幅な値上げに踏み切り、アラビアンライトの調整金の上げ幅は2020年7月積み以来の大きさとなった。
アジアでは暖房需要が伸びる冬場を迎えている。今年は液化天然ガス(LNG)が記録的な高値に上昇し、相対的に割安になった原油を代替的に使う動きも出ている。新型コロナウイルス禍からの経済正常化の動きと相まって、需要が押し上げられている。
供給面では、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどでつくるOPECプラスが追加増産を渋っている。コロナ感染の再拡大で需要が弱含むのを警戒している。原油需給が一段と引き締まり、アラムコの調整金引き上げにつながった。
⚫️2021.11.12日本経済新聞🗞
資源や原材料などの価格が急上昇し、日本企業の収益を圧迫する構図が強まってきた。日銀が11日発表した10月の企業物価指数は前年同月比8.0%上がり、約40年ぶりの伸び率になった。世界的な供給制約や原油高で輸入物価が高騰している影響が大きい。半面、最終財では値上げの動きが鈍い。どこまで波及するかが今後の焦点になる。
10月の企業物価指数を取引段階別にみると、川上の素原材料は63.0%上昇した。石油・石炭製品や鉄鋼、化学製品、非鉄金属の値上がりが著しい。4品目で指数全体の上昇の7割を占める。
中間財の上昇率は14.3%、最終財は3.8%と川下に向かうにつれて上昇率は鈍る。電気機器など消費者に近い製品の上昇率は0%台にとどまる。企業は値上げに慎重な姿勢で、企業向けサービス価格指数や消費者物価指数(CPI)の上昇圧力は弱い。
米国との差は需要の弱さだ。米国では強力な経済対策などもあって個人消費が持ち直している。一方、日本は値上げをすると販売が鈍る経験則を引きずっている。
日用品大手ライオンの掬川正純社長は「原材料価格の高騰は当初想定を上回る影響を受けている」と危機感を募らせる。「そのまま値段を上げるのは難しく、商品の付加価値化で単価を上げていく」と話す。
東京電力ホールディングスの山口裕之常務執行役は「燃料高の影響は通期で650億円のマイナスに相当する。価格が上がり続ければ厳しい」と語る。火力発電に使う液化天然ガス(LNG)などの価格上昇で2022年3月期の連結最終損益は160億円の赤字(前期は1808億円の黒字)になる見通しだ。
円建ての輸入物価の上昇率は前年同月比で38.0%と、比較可能な1981年1月以降で最高を記録した。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストの試算では、7~9月期の日本の交易損失は年換算で国内総生産(GDP)の1.2%にあたる6兆6000億円。輸出価格より輸入価格の上昇が大きく、海外に所得が流出している。原油価格が1バレル80ドル強で高止まりすれば、年間の交易損失は9兆円強に膨らむという。
消費者向けでもガソリンや電気代といった商品・サービスは値上げが進み、家計を圧迫しつつある。大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストはCPIの上昇率が生鮮食品を除くベースで2021年中に1%程度に高まるとみる。
それでも日銀が目標とする2%に近づくとの予想はほぼない。利上げ観測が高まる海外と対照的に日銀は金融緩和を当面続ける公算が大きい。
円安は輸出企業の収益を押し上げるが、日本の貿易黒字は10年ほど前と比べて縮小した。円安の恩恵は弱まり、むしろ原油高と相まって輸入企業や家計への負の影響が広がる。BNPパリバの河野氏は「金融緩和継続に対する反発が強まる可能性もある」と指摘する。
松野博一官房長官は11日の記者会見で、政府が19日にとりまとめる経済対策で「経済的にお困りの世帯や原油高に苦しむ関係業界の支援など必要な対策を講じたい」と語った。
⚫️2021.10.28日本経済新聞🗞
原油価格の高騰がパーム油や天然ゴムなど農産物の先物価格を押し上げている。燃料や化学品代替の需要が増えるとの連想から買われ、揚げ油やマーガリンに使うパーム油は過去最高値圏、砂糖原料の粗糖も2017年以来の高値を付けた。タイヤに使う天然ゴムも値上がりしている。輸入に頼る日本にとっては為替の円安傾向も相まって調達価格の上昇につながり、企業や消費者の負担感が一段と強まりそうだ。
ニューヨーク原油先物価格は一時1バレル85ドル超と年初から8割弱上がった。新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴う需要増に加え、産油国の減産緩和の遅れで需給の逼迫懸念が強まった。石油由来の輸送燃料や化学製品の値上がりが意識され、競合品として用途が重なる1次産品の先物価格を押し上げている。
パーム油は国際指標のマレーシア先物(中心限月、終値)が1トン5000リンギ台と過去最高値圏に上昇した。マーケットエッジの小菅努代表は「原油高に連れ高した」と指摘する。パーム油は世界生産量の1割強ほどがバイオディーゼル用途で、燃料として原油相場の影響を受けやすい。大豆油など競合する他の植物油の値上がりも影響した。
需給も逼迫している。マレーシアのパーム油庁(MPOB)によると、9月の生産量は170万3千トンと前年同月比9%少なく、6カ月連続の前年割れだった。「農作業の担い手の7~8割が外国人労働者」(大手商社)とされ、新型コロナの影響で入国が減り、人手が不足。世界最大のパーム油輸入国のインドは輸入関税を引き下げて品物確保に動き、国際的な需給を引き締めている。
砂糖の原料である粗糖も指標のニューヨーク先物(期近)は10月に入り、一時1ポンド20.61セントと17年2月以来の高値をつけた。市場では「原油高に反応している」との見方が多い。
粗糖の最大生産国ブラジルでは今月、国営石油会社ペトロブラスがガソリン価格の引き上げを発表した。ガソリン価格が上がるとバイオエタノールの価格も上昇する。同国では粗糖のもととなるサトウキビはバイオエタノール向けの需要が5割程度を占める。サトウキビをバイオエタノールに振り向ける動きが広がり、粗糖の生産比率が低下するのではないかとの観測が買いを誘った。
天然ゴムも上昇が鮮明だ。国際指標のひとつ、大阪取引所の天然ゴム先物(RSS)価格は21日に1キログラム240円を超え、4カ月ぶりの高値をつけた。足元でも233円前後と直近安値の9月下旬から2割高い水準だ。
天然ゴムは、石油化学製品の合成ゴムと需要面で競合関係にある。原油価格が上昇すれば合成ゴム価格も上昇し、天然ゴムに需要が流れるとの観測から天然ゴム相場に上昇圧力がかかりやすい。
210719日経
米原油先物は7月、期近取引が一時1バレル77ドルに接近し、6年半ぶりの高値を付けた。ワクチン接種が進んで人の動きが活発になり、ガソリンなどの石油需要が急回復してきたことが主因だ。
石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどが協調減産の縮小で18日に合意したことは下げ材料となりそうだが、原油市場にはもうひとつ高値を支える変化がある。相場の急回復にもかかわらず米国の原油生産が以前のように増えなくなったことだ。
米エネルギー情報局(EIA)が毎週更新する石油統計によれば、世界最大の規模を持つ米国のガソリン需要は7月2日時点で日量1004万バレルに達した。季節や週ごとに振れのある統計だが、1000万バレルを超したのはこれが初めてだ。直近9日時点の4週平均で見ても948万バレル台とコロナ前の2019年7月の同時期と並んだ。
米国の接種率は足元で伸び悩み、インド型(デルタ型)感染拡大への警戒感も強まる。それでも米疾病対策センター(CDC)によると、18歳以上の成人で1回でも接種したのは21年7月1日時点で約1億7000万人と66%に達し、新規の感染者数は大幅に減少した。行動制限が緩和されて人の移動が増え、それがガソリン需要の急回復として表れている。
主要油種の中でも米原油相場の上昇は顕著だ。19年4月末には10ドルほど上にあった中東産ドバイ原油の相場を抜く場面も出て、品質差を反映した本来の序列に戻りつつある。コロナ禍で急落する前に米国とイランの対立で急伸した20年1月の高値も65ドル台で、71ドル台まで下げた16日時点の相場の方が高い。
ところが、米国の原油生産は相場回復の割に小幅な増加にとどまる。EIAの統計によれば9日時点でようやく日量1140万バレルまで回復した。それでも米国で感染拡大が深刻になる前に1300万バレル強まで増えた水準に比べると150万バレル以上も少ない。新規開発を示す石油リグの稼働数にもかつての勢いはない。米石油サービス大手のベーカー・ヒューズ社が発表するリグ稼働数は16日時点で原油・天然ガスを合わせ484と、1000を超えていた19年春までの半分以下だ。
国内生産があまり増えず、輸入も拡大していないのでガソリンなどの需要拡大は米国内の原油在庫の減少につながった。EIAの統計で、20年6月に5億4000万バレルまで膨らんだ原油在庫(戦略石油備蓄を除く)は直近で4億4000万バレルを下回り、過去5年レンジの下限に近づいている。需給統計を見れば、米原油相場の上昇ピッチが中東産原油や欧州のブレント原油より速いのは当然と言える。
石油産業を後押ししたトランプ政権に代わり、環境を重視するバイデン政権が21年1月に誕生した変化は大きい。脱炭素への動きは世界の奔流となり、株主や金融機関の意識を変えた。高値になると生産が急拡大し、それが原油相場を急落させた過去の教訓も影響している。マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表は「こうした圧力が米国のタイムリーなシェール増産にブレーキをかけている」と考える。
欧州エネルギー取引所(EEX)グループの高井裕之上席アドバイザーは「収益と配当を重視するようになった米国のシェール企業も相場上昇で生産増に動く気配はある。だが、現場の労働者や機材を確保できるかという問題もある」と話す。
このまま国内生産が大きく増えなければ早晩、米国内の需給は回復した石油需要によって逼迫する。脱炭素に力を入れても、すぐに100万バレル単位で需要を減らすのは至難の業だ。海外油種に比べ米国産原油の相場上昇が速いため、輸入増加や輸出減少につながることは考えられる。そうなると国際需給が引き締まる要因になる。
すでにガソリン価格は全米平均で1ガロン3ドルを超えている。原油高の影響は物価や景気にとどまらない可能性もある。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は7日付のオピニオン面で「米国の(原油や天然ガスの)減産は、需要が急回復する中で世界の供給が削減されることを意味する。それは米国民の負担が増す中で、(米国と対立する)イランやロシアを利することにもなる」と指摘する。脱炭素の過程には複雑な要素がからみつく。
210707日経
原油市場で需給逼迫による先高観が一段と強まってきた。石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどでつくる「OPECプラス」の閣僚協議が5日決裂。8月以降の供給増(協調減産の縮小)の幅を決められず、世界的に需要が回復するなかで供給不足への不安に拍車がかかった。米原油先物は6日の時間外取引で一時1バレル77ドル弱と約6年7カ月ぶりの高値をつけた。だが合意できない事態が長引くと協調減産の枠組み自体が機能しなくなる恐れもあり、長い目で見た市場予想は上昇一辺倒ではない。
「遺憾に思う」。OPECは理由抜きで協議中止を発表する短い声明を公表した。アラブ首長国連邦(UAE)が協調減産を2022年末まで続ける案に反対し、OPECプラスは当初1日に開く予定だったオンラインの閣僚協議を2日に延期。さらに週末を挟み5日になっても合意できない異例の展開となった。
協議中止を受け、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物の期近物は日本時間6日、時間外取引で一時1バレル77ドル弱と14年11月以来の高値をつけた。年初比では6割高い。
OPECプラスは新型コロナウイルス禍での需要急減に対応するため、20年5月に合計で日量970万バレルの協調減産を開始。その後は徐々に生産量を増やし、7月の合意済み生産量は日量3809万バレルあまりと、昨年の底からは400万バレル程度増える。
経済活動の正常化で需要は順調に回復している。国際エネルギー機関(IEA)によると、21年の世界需要は前年比6%増の日量9640万バレルの見通し。22年末までに新型コロナ禍前の水準に回復するとみる。21年1~3月の時点でも世界需要は供給を日量90万バレル上回ったが、現状の減産規模のままだと今年後半も供給不足が続く見込みだ。
今回のOPECプラス協議では8~12月に日量40万バレルずつの供給増で合意するとの観測が広がっていた。まとまらなかったことで、市場に需給逼迫への懸念が強まった。
OPEC以外の生産量がなかなか増えない点も供給不足懸念に拍車をかける。欧米の石油メジャーには脱炭素の取り組みを求める市場の圧力が一段と強まり、石油増産への投資はハードルが高い。最大の産油国、米国のシェールオイル生産量も停滞している。投資を抑え、株主への還元や財務の改善を優先する生産企業が多い。
OPECプラスの動向を占ううえで、市場はUAEを注視する。UAEは8~12月の供給増には同意する。反対するのはその先、22年4月までとする現行の協調減産を22年末まで延期する案だ。ロイター通信によると、一段の増産を目指し、減産の基準となる生産量の引き上げを求めている。
UAEは生産能力を現在の日量380万バレル前後から30年までに500万バレルに増やそうと増産投資に力を入れる。マズルーイ・エネルギー・インフラ相は4日、これまでの協調減産について米CNBCに「UAEが最も大きな犠牲を払ってきた」とし「同じ条件で新たな合意はできない。国家として交渉する権利がある」と強調した。
産油国間の対立が長引けば、油価が一段高となり14年7月以来の100ドル台が意識される可能性もある。製造業などのコスト増加に加え、世界的なインフレ懸念が強まるのも避けられない。ピクテ投信投資顧問の市川真一氏は「米連邦準備理事会(FRB)にとって、原油価格は金融政策の判断を難しくする材料になる」と指摘。長期金利の上昇圧力になり、金融市場全体の波乱要因となる恐れもある。
一方、中長期でみると産油国の足並みの乱れは一転、油価下落にもつながりうる。このまま合意ができない状況が続けば、協調減産の枠組みが崩れかねないからだ。減産の合意が切れる22年5月以降に供給量が一気に増え、相場が急落するリスクも抱える。
サウジは身を切る独自の追加減産を実行した経緯があり、各国に自制を求める立場だ。個別の事情を認めれば、タガが一挙に緩みかねない。それぞれの思惑で増産に走れば、あっという間に供給過剰に陥る。UAEなどと水面下での調整をなお続けており、市場参加者からも「OPECプラスが年内に増産しないシナリオは今も想定していない」(エレメンツキャピタルの林田貴士氏)との声も聞かれる。
脱炭素による石油離れのリスクも絡み、WTIの22年12月物は65ドル前後と期近物より安い水準だ。投資家は足元の原油高圧力を注視しながらも、同時に将来的な油価下落の可能性も意識している。
190415日経
原油価格が上昇している。国際指標となるニューヨーク市場の原油先物は2018年末の安値に比べ5割高い。米国によるイラン産原油の禁輸の適用除外の期限が5月に迫る。ベネズエラも米国の経済制裁で生産量が落ちている。シェールオイルの増産が続く米国に、中東産油国は協調減産で対抗し供給が絞られた。ガソリン高などで消費者や企業の負担が増え、米国を含む世界の景気を冷やすリスクになる。
ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物(期近)は12日、1バレル63.89ドルと昨年10月以来の高値圏にある。昨年末の安値(42.53ドル)を底に、年明け以降上昇傾向が続く。
米国の外交圧力でイランやベネズエラの生産が抑えられている。石油輸出国機構(OPEC)や非加盟の主要産油国は1月、昨年10月を基準に日量120万バレルの協調減産を開始。米国のシェールオイルの増産分を上回る規模で生産カットが進む。OPECによると1~3月期の世界の供給量は日量9946万バレル。18年10~12月期に比べ1.6%減少した。
落ち込みが鮮明なのはイランだ。国際エネルギー機関(IEA)によると、3月の産油量は日量274万バレル。18年5月の制裁発表時に比べ3割減った。
米国によるイラン産原油の8カ国・地域に対する禁輸の適用除外の期間は5月初旬まで。決済が期限に間に合わず、日本など需要国はイラン産の輸入を停止し始めた。
米国務省のフック・イラン担当特別代表は今月初め、「3カ国が輸入をゼロにした」と話した。昨秋のように猶予期間を新たに米国が設けるかは見通しにくい。イランから原油を調達できない事態が現実味を帯びる。
ベネズエラの3月の生産量は日量87万バレルと米国の制裁強化前(18年10月)に比べ3割減った。1月からの米国の追加制裁で輸出が困難になったほか、3月以降は相次ぐ大規模停電で生産活動がまひしたもようだ。
OPECが協調
決定当初は実効性を疑う見方もあった主要産油国の協調減産も進む。サウジアラビアを中心にOPEC諸国が供給管理を強化する背景には、産油国として米国が急速に台頭することへの危機感がある。
OPECによる減産の達成率は1月の86%から、3月は153%まで上がった。特に目立つのはサウジで、3月の産油量は982万バレルと減産前の18年10月比で8%減った。減産規模は目標の2.5倍。クウェートの減産も目標を3割上回る。生産調整の徹底で、協調減産から除外されたイランやベネズエラの供給削減の影響が価格に反映されやすくなっている。
米エネルギー情報局(EIA)によると、3月の米国の産油量は日量1208万バレルと昨年10月比で4%増えた。サウジやロシアを上回り、世界首位だ。米国のシェールオイル増産でOPECの原油生産量に占めるシェアは3~4割に低下した。原油価格への影響力を維持したいサウジなど中東産油国は、非加盟のロシアなどを巻き込み「拡大OPEC」を形成。協調減産に打って出た。日量1000万バレルを超える産油量のロシアの参加で、市場シェアは5割に迫る。
景気に影響懸念
原油高はガソリン価格などを通し、個人消費に影響を与える。物流コストを押し上げるほか、プラスチックなど原油由来の産業資材は製造コストが上昇する。
みずほ総合研究所の井上淳主任エコノミストは「日本など原油輸入国の個人消費押し下げや、企業業績の圧迫につながりかねない」と指摘する。
日常生活に自動車を使う機会が多い米国にとっても、ガソリン高は個人の家計負担の増加に直結する。原油の値上がりが続けば、米国や新興国などを中心に世界景気を冷やすおそれもある。
原油の需要自体は今のところ新興国を中心に底堅い。IEAは19年4~6月期に世界の需要が日量1億バレルと、1~3月期比で約1%増えると予測した。供給を50万バレル程度上回る見通しだ。
株価が持ち直し、原油を含むリスク資産に投機資金が向かいやすくなっている。WTI原油先物の投機筋の買い越し幅は4月上旬時点で約51万枚(枚は最小売買単位)と年初の約1.9倍だ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之氏は「投機マネーが勢いづいている。弱材料で下がってもすぐに買いが入る」と指摘する。「当面は上昇基調が続く」(楽天証券の吉田哲コモディティアナリスト)との見方が多い。
190507日経
トランプ米政権がイラン産原油の輸入を全面的に禁止する措置に踏み切った。中東有数の産油国からの禁輸が需給に与える影響や、主要な収入源を失うイランの不安定化に警戒が必要だ。
禁輸措置は米欧など6カ国とイランが交わした核合意の内容が不十分だとして、トランプ政権が一方的に合意から離脱したことに伴う制裁再開の一環だ。
米政府は昨年11月の禁輸措置の再開後も、日本など8カ国・地域に限り180日間の輸入継続を認めてきたが、これを打ち切った。
イランの輸出量は足元で世界消費の1%程度だ。これが止まってもすぐに供給不足に陥るわけではない。しかし、日本や中国など原油を輸入に頼るアジアの消費国には重要な供給源の一つだ。
加えてベネズエラやリビアなど、石油輸出国機構(OPEC)の加盟国が、政情不安などの理由で生産量を落としている。
米政府による全面禁輸の発表後、原油価格は一時、昨年10月以来の高値をつけた。需給逼迫が続けばさらに上昇し、世界景気を冷え込ませることになりかねない。
核合意はイランが核開発を制限する代わりに、米欧が制裁を解除する内容だ。一連の制裁再開によって、イランの経済苦境は強まることが予想される。
米国はイランが行動を改めるまで最大限の圧力を加えるという。しかし、核合意を進めてきた穏健派勢力が支持を失い、対外強硬派の勢いが増せば、合意を維持する機運が失われかねない。
禁輸措置に反発するイラン革命防衛隊は原油輸送の動脈であるホルムズ海峡の封鎖を警告した。シリアやイエメンなどで、親イラン勢力の活動が活発化すれば、中東は一段と不安定化する。
日本は歴史的に、イランと良好な関係を続けてきた。安倍晋三首相は「日本は核合意を一貫して支持している」と述べた。同じ立場に立つ欧州とともに、イランを核合意の内側にとどめる働きかけを続けていくことが重要だ。
200108日経
年明けの商品市場で原油と金の国際相場が急騰した。米原油先物は昨年4月以来の高値まで上昇し、ニューヨーク市場の金先物は2013年4月以来、6年9カ月ぶりの高値をつけた。中東情勢の緊迫に加え、外為市場で一時円高・ドル安が進んだことが背景にある。主要市場の株価が下がる場面もあり、先行きの世界経済に対する楽観論が早くも揺らいでいる。
原油相場は米中が報復関税の緩和に動いたことで昨年末から上昇し、米原油先物(期近)は12月13日に1バレル60ドル台を回復した。そして年明けの中東情勢を受けてさらに押し上げられた。激化する米国とイランの応酬が、中東からの原油供給に波及するのでは、との思惑が投機的な買いを誘っている。
みずほ総合研究所の井上淳主任エコノミストは「米中の合意や主要産油国の減産強化で原油相場が下がりにくい土壌ができていたが、イランの報復明言で緊張が高まった」と指摘する。マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)の新村直弘代表は「原油相場は最近の動きから、米国とイランが戦争に突入する可能性を15%程度織り込んでいる」と分析する。
リスクに敏感な金相場も大きく上昇した。昨年11月中旬に1トロイオンス1447ドル台(期近)の安値をつけたニューヨーク金先物は6日に一時1580ドルまで上昇した。ドル相場が対円などで下落し、主要国の株価が下落していることも金市場へのマネー退避を促した。
原油や金と対照的に、中国を中心とした世界経済の変化を映す銅相場は下落。指標になるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物は一時1トン6100ドルを下回り、昨年末の高値に比べた下落率は3%近い。商品市場が再び景気の先行きに慎重になったことを示す。中東地域に有力供給国が多いアルミニウムは情勢緊迫が買い材料になりやすいが、それでも景気不安が気になり上値を追う展開ではない。
原油高は国内でも企業収益や個人消費にマイナスの影響を及ぼす。すでにレギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)は昨年12月23日時点で1リットル148.8円と半年ぶりの高さにある。需要期の灯油の値上がりも加わり、消費増税の影響を引きずる個人消費を冷え込ませる懸念がある。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストによれば、中東産ドバイ原油の円建て価格は直近4カ月だけで12%以上上昇しており、家計負担(2人以上世帯)を月426円、年5108円以上増加させる計算になるという。
楽観論が漂っていた世界経済も実態は強いわけではない。昨年の原油相場が、サウジアラビアの石油施設攻撃といった衝撃的な出来事を経験しながら動きが鈍かったのも、石油需要の伸びの弱さが意識されていたからといえる。
その意味で、世界経済の弱さが原油の上値を抑える構図は変わっていない。開戦で一時的な急騰はあっても、それが景気に悪い影響をもたらすことで石油需要を減退させる。みずほ総研の井上氏は「1990年のイラクによるクウェート侵攻時のように、2~3カ月で2倍以上に原油相場が急騰する事態は起こりにくい」とみる。
200209プレジデント
アメリカの原産力が上がってきたため、中東の情勢に原油は左右されない
200309日経
あるサウジアラビアは自主的な減産を取りやめ、石油増産に転じる見込みだ。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国の減産交渉が決裂したことが背景にある。2016年ごろから実施する価格下支えの取り組みをやめシェア重視の戦略に転換したもようだ。新型コロナウイルスが石油需要に影を落とす中、石油価格下落に拍車をかける可能性がある。(関連記事国際面に)
ロイター通信などによると、サウジは現在日量970万バレルの生産量を4月に日量1000万バレルを超す水準まで引き上げる方針だ。OPEC内部の合意と別にサウジが自主的に実施している減産をとりやめるかたちとなる。生産能力いっぱいの日量1200万バレルまでの増産の可能性も非公式に示唆している。
OPECとロシアなど非加盟の主要産油国は、3月末が期限となる現行の日量210万バレルの減産の枠組みを継続・強化することをめざしたが、ロシアの反対で交渉が決裂した。
サウジは石油価格の引き下げも決めた。国営石油会社サウジアラムコは4月の日本を含むアジア向け軽質油の公式販売価格(OSP)を1バレルあたり6ドル引き下げる。米国向けを7ドル、欧州向けを8ドル引き下げる方針でそれぞれ10%を超える大幅な値下げとなるもよう。国際指標の北海ブレント先物は6日の交渉決裂を受け一時10%近く下落し、1バレル45ドル程度となった。
200310日経
9日の金融市場では新型コロナウイルスの感染拡大で始まった混乱が新たな局面に入った。原油価格が約3割安と急落し、米国市場ではダウ工業株30種平均が一時、前週末比2000ドル超下落した。原油安はエネルギー企業や新興国の信用リスク(総合2面きょうのことば)に直結し、低金利のなかで膨張してきた債務の問題に飛び火しかねない。人やモノの動きの停滞だけでなく、マネーの目詰まりに懸念が広がってきた。(関連記事を総合1、総合2、政治、経済、金融経済、国際・アジア、国際、企業2、社会2面に)
米原油先物は9日に一時、1バレル27ドル台と前週末から34%下落した。1日14ドルの下落は2008年9月の金融危機以来の下げ幅となる。ロシアとの追加減産協議が不調に終わったサウジアラビアが増産姿勢に転じ、供給過剰が懸念された。
東京市場では日経平均株価が前日比1050円(5.1%)安の1万9698円と急落し、為替相場では一時1ドル=101円台の円高・ドル安水準となった。
原油安は市場の警戒の目を感染拡大による景気不安から企業の信用リスクに広げた。米シェール関連などエネルギー企業には信用格付けが低い企業が多い。こうした企業の社債はすでに下落(利回りは上昇)し始めており、原油安が拍車をかけかねない。国債に対する上乗せ金利(スプレッド)は5%台と1年2カ月ぶりの高水準にある。
低格付け企業向け融資をまとめて証券化したローン担保証券(CLO)の動向も焦点だ。日本の金融機関では、農林中央金庫は19年末時点で約8兆円と、世界市場の約1割を保有するとされる。
投資家は世界的な低金利の中で利回りの高い低格付け社債やローン債権への投資を増やしてきた。市場の混乱で投資家が資金を出さなくなれば、企業は増やした借金の借り換えや返済ができず債務不履行(デフォルト)のリスクが高まる。
米S&Pグローバルによると、低格付け債のデフォルト率は足元で2.63%台と18年3月以来の水準に高まってきた。08~09年の金融危機(10%台)や原油安がシェールオイルの採掘企業などの破綻を招いた16年(4%台)よりは低いが、原油安で増えかねない。
9日は資源国の通貨安や株安も目立った。国際通貨基金(IMF)によると、産油国の財政収支が均衡する原油価格はサウジアラビアで1バレル83ドル台。足元の価格は中東・北アフリカの主要産油国11カ国すべての財政均衡価格を下回る。ロシアも20年予算の前提を42.40ドルと設定。「オイルマネーが細り、金融市場から資金を引き揚げるリスクも想定される」(第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミスト)
本来、原油安は米国や日本のような消費国経済にはプラスだ。大和総研の小林俊介シニアエコノミストの試算によると、1バレルあたり10ドルの原油価格の低下で日本の実質経済成長率は年0.11%押し上げられる。
ただ、15~16年の景気減速局面でも、原油安が信用リスクにつながり、消費者心理の悪化が原油安の効果を打ち消した。当時、中国は年2兆元の公共投資を打ち出したが、各国の財政にも余裕はなくなっている。
200421日経
原油価格の下落が止まらない。ニューヨーク先物は20日、一時1バレル10.35ドルを下回り、1986年4月以来、34年ぶりの安値を付けた。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞し、世界の石油需要は急減している。在庫が急速に積み上がって、貯蔵能力も限界に近づいており、取引終了日が迫る期近の5月物だけが突出して下落している。
国際指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は、20日の電子取引で、決済期限が最も近い5月物が急落した。下落幅は前週末に比べて4割超に達し、心理的節目とみられていた15ドルを大きく割り込んだ。
WTIは現物の受け渡しを前提に取引されている。5月物の取引終了日が21日に迫り、現物を引き取りたくないファンドなどの手じまい売りが膨らんでいる。原油タンクを持つ石油会社やトレーダーの貯蔵スペースが不足し、保管コストもかさむため買い手がおらず、値崩れが起きている。
足元で売買の中心となっている6月物は、前週末より1割程度安い1バレル22ドル台にとどまる。米国の経済活動が徐々に再開し、石油消費も少しずつ回復に向かうとの期待から、5月物と比べると需給が締まるという見通しが反映されている。
ただ過剰な在庫は簡単に解消しないとの見方から、下げ止まりの兆しはみえない。米エネルギー情報局(EIA)によると、4月第2週時点の米国の原油在庫(戦略備蓄除く)は5億361万バレルと1週間で1924万バレル増えた。全米の貯蔵能力は約6億5千万バレルとされ、今のペースで在庫が増え続けると2カ月ほどで能力を超える。
マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘氏は「カナダなどでも保管能力の不足懸念が強まっており、現物市場で10ドルを下回る価格で取引される油種も目立つ」と話す。
世界最大の石油消費国である米国では、外出制限で自動車での移動が急減している。ガソリンの出荷量はこの1カ月で半分程度に減り、製油所の原油処理量も金融危機以来の水準に落ち込む。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は、5月から日量970万バレルの減産を実施することで合意した。しかし、世界の石油需要は同2000万~3000万バレル失われたとみられ、減産はなお不十分との見方から、「6月のOPECプラス会合で追加減産が議論される可能性がある」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至氏)。
世界貿易機関(WTO)によると、2020年の世界の貿易量は前年比で最大32%減る見通し。先物価格の下落は「投資家が早期の経済回復を見込んでいない表れ」(みずほ証券の三浦豊氏)でもある。人や物の移動に使う航空機や自動車の燃料需要も減り、減産量を上回る消費量の減少が続くとの見立てだ。
原油安は他の金融市場、特に「社債市場への波及に注意が必要」(三井住友DSアセットマネジメントの吉川雅幸氏)だ。米国のシェールガス関連企業の大半は、格付けが米連邦準備理事会(FRB)の社債買い取り施策の対象外だ。原油安が長期化するとデフォルト(債務不履行)懸念が高まる可能性もある。
210610日経
原油は4営業日ぶりに反発した。8日のニューヨーク原油先物が上昇した流れを受け継いだ。市場でイラン産原油の供給が遅れるとの観測が広がり、需給の緩みに対する懸念が後退。買いが優勢となった。
210623
いらん核合意けねんで、原油価格上昇懸念
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73150660S1A620C2ENG000
210629NewsPicks
東京原油が4万9千円超え 2年2カ月ぶり高値 | 共同通信
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