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トピックス 事業承継

トピックス 事業承継  

⚫️2022.2.21日本経済新聞🗞

【サマリー】
2025年までに、70歳を超える経営者は245万人に。
半数は後継者が決まっていない。
このまま廃業が続くと、650万人の雇用が喪失される

【思ったこと】
事業承継は55歳くらいからの準備が大事
70歳から準備はきつい
税制等整えているが中々進まない
銀行、税理士がもっと真剣にM&Aとかを推し進めていくしかない

【記事全文】

中小企業経営者の高齢化が進み、後継者不足が深刻だ。2025年までに平均引退年齢の70歳を超える経営者は245万人に増え、このうち半数は後継者が決まっていない。このままだと廃業が急増し約650万人の雇用が失われるとの試算もある。どうすれば事業承継が進むのか。経営者や支援者、識者に聞いた。
1903年創業の焼酎メーカー、繊月酒造(熊本県人吉市)の経営を父から6年前に引き継いだ。一昔前は「女性は蔵に入るな」といわれていたほど酒造業界は男社会。女性の後継ぎは珍しく、周囲には非常に驚かれた。
兄がいたため家業を継ぐことは意識していなかった。繊月酒造に入社したのは大学卒業後に働いた広告会社での経験を生かして、家業を応援できるのではと思ったからだ。後継者候補だった兄は他にやりたいことがあって先に会社を離れてしまった。自分しかいないことは感じていたが、父から「そろそろ代わる?」と聞かれ、覚悟を決めた。
世代交代はなるべく早く親が元気なうちがいい。父は会長として会社に残っており、困ったことがあれば相談できるからだ。父から息子に継いだ会社では経営方針を巡って親子の衝突が起きやすいと聞く。私の場合、親が築いたものをなるべく生かしたいと考えており、衝突は起きていない。
女性の経営者で良いのは商談で覚えてもらいやすい点だ。焼酎業界で父から娘へという事業承継が珍しく、様々な人から声をかけてもらえる。半面、「娘が継ぐことで会社の信用度が下がらないか」という不安もあった。そこは会社の取り組みを発信していくことで乗り越えられる。
少子化や若者の飲酒離れで国内市場は伸びしろが小さい。社長就任後、採算を重視してお酒の銘柄を半分に絞り込む一方、海外展開に力を入れている。21年には米国企業と組んで現地向け焼酎を共同開発し、話題を呼んだ。
自分が社員として働いた経験も生かし、男女を問わず、やる気や能力に応じたポジションを考えるようにしている。体力勝負のイメージもある酒業界で女性は少ないが、当社では約30人の従業員の3分の1を女性が占めるようになった。
「娘だから、息子だから」ではなく、やりたい人に任せるようにすると、やる気のある人が出てくる。ただ会社の業績がよければ相続税の負担が大きくなるという問題には悩まされている。円滑に相続を進められるような手立てが必要だ。

⚫️2022.1.19日本経済新聞📰

「そちらは公的機関ですよね。助けて下さい」。2020年8月、電気工事業、日野電設(当時東京都東久留米市、現同昭島市)の佐野健治氏(50)は、東京都多摩地域事業引継ぎ支援センター(同立川市、現東京都多摩地域事業承継・引継ぎ支援センター)に電話を掛けた。

佐野氏は相続財産管理人の制度を使い凍結された株式に対応、代表権を得た(東京都青梅市の工事現場)
7月に同社の佐嶋行雄社長は都内の工事現場で心臓疾患により69歳で急逝した。佐嶋氏は夫人と別れ、実子もおらず親族に法定相続人がいなかった。遺言も残されてなかったため、佐嶋氏名義の日野電設の株式や銀行口座も凍結状態になった。
佐野氏は別の電気工事業の会社に籍を置いていた30年近く前から、元請け業者が同じ会社だったため佐嶋氏と親しく「もう何年かしたら後継者を考えなければならない」という悩みも聞いていた。以前の勤め先を退職後、20年1月に佐嶋氏との縁で日野電設に入社したばかりだった。
年長の従業員は後継者になることを辞退。佐野氏は他の従業員に推され「後継者候補」になったが、凍結された株式を引き継ぎ、代表権を持つ手続きを進める必要があった。センターの弁護士は「1人で進めるのは大変だから弁護士を紹介します。相続財産管理人を決めて下さい」と助言した。
相続財産管理人は法定相続人のいない財産の相続人を探し、清算する役割を果たし、家庭裁判所が選任する。「早く会社と仕事を安定させないといけない」との責任感から、自ら申し立てに必要な経費を立て替えて申し立て手続きを進め、同11月に管理人として都内の弁護士の選任を受けた。
管理人の選任を受けても、選任や債権者に向けての公告期間があり、すぐに代表権を持てるわけではない。通常の仕事もこなし、「様々な資料も乏しい」中で、管理人、税理士と佐嶋氏の日野電設への貸付金などの貸借関係を洗い直したり、株価の算定をしたりと引き継ぎ業務にもあたる日々が半年近く続いた。
最終的には佐野氏が自己資金で株式を買い取り、21年4月、佐野氏が社長に就任した。
就任早々、社内改革にも着手した。従業員の平均年齢が高くなっていたため、30歳代の若い従業員を中途採用し、給料も引き上げた。「いろいろなことから解放され、経営に集中できる」ことを実感している。

⚫️2022.1.5日本経済新聞🗞


鉄鋼や非鉄、石油化学といった産業資材市況は歴史的な高値圏で2022年を迎えた。原料高などを理由にサプライチェーン(供給網)の川上では断続的に値上げが続く。かたや川中の流通市場では自動車減産が響く鋼材を筆頭に在庫が膨らみ、転嫁値上げに逆風が吹く。騰勢一辺倒だった価格にも内需の強弱を映して上昇力に差が生じ、頭打ちの気配も漂う。
21年12月、群馬県太田市を訪ねた鋼材問屋の担当者はSUBARU(スバル)の工場周辺の閑散ぶりにたじろいだ。半導体や部品の不足が響き生産回復の足取りは重い。
影響が鮮明なのは鋼材だ。内需の3分の1を自動車向けが占める。相次ぐ減産で自動車用の薄鋼板の消費にブレーキがかかり、鉄鋼メーカーは一般流通(店売り)市場向けの汎用的な薄鋼板に一部の生産を切り替えた。



薄鋼板の主要3品種(熱延、冷延、表面処理)のメーカー・流通の国内在庫は21年10月末時点の速報値で452万5千トン。19年8月末以来の高水準だ。鋼板加工事業者の幹部は「これまで需要家は調達優先でメーカー値上げ分の転嫁を受け入れてくれたが、数量に余裕が出てきた今はそうはいかない。相場は完全に頭打ちだ」と嘆く。
代表品種の熱延鋼板(1.6ミリメートル品)は東京地区の流通価格が現在1トン12万2500円前後。20年11月の7万6千円前後から駆け上がったが、21年9月以降横ばいだ。
ステンレスやアルミニウム圧延品も在庫が増加傾向だ。日本アルミニウム協会(東京・中央)によると、21年11月のアルミ圧延品の在庫量は5万3753トンと、直近最低の21年8月から3カ月で2割も増えた。
自動車メーカーは1~3月期に増産する計画とされるが、薄鋼板の流通市場の見方は懐疑的だ。鉄鋼商社は「家電や機械などでも半導体や部品が不足し、問題は根深い。安値の輸入鋼板が流通すれば値下がりする可能性さえある」と警戒する。
建設分野では素材ごとに市況にばらつきが出てきた。建物の柱などに使うH形鋼は外国人客需要が蒸発したビジネスホテルなどが伸び悩み、特に小型サイズの荷動きが鈍い。日本製鉄の鋼材を扱う流通事業者でつくる「ときわ会」がまとめた21年11月末時点の在庫は18万3700トン。前年同月より7.2%多く、流通価格の上伸も止まった。
一方、強基調を保つのは給排水管に使う塩化ビニール管の原料となる塩ビ樹脂だ。塩ビ工業・環境協会(東京・中央)によると、21年11月の在庫量は12万4724トン。20年1月比3割弱少ない。



住宅向けを中心に国内出荷は底堅い半面、大洋塩ビの大阪工場(大阪府高石市)の生産停止が響き、塩ビ各社が「国内でフル生産を続けている」中でも逼迫感がある。
原料のナフサ(粗製ガソリン)の高騰などを理由に最大手の信越化学工業などは21年末までに年間で3度目となる塩ビ樹脂の値上げを表明。取引価格は既に7年ぶり高値だ。品薄のため塩ビ管メーカーなどは一定程度受け入れそうだが、浸透度合いに注目が集まる。
セメントは、メーカー各社が21年10月以降に打ち出した約4年ぶりの値上げ交渉が2月ごろから本格化する。年度末の需要期を控え、セメントは販売量が上向きつつある。需要家の生コンクリートメーカーは一定水準を受け入れるとみられる。
マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表は「21年は材料や部品の不足に直面した需要家が在庫を積む仮需が需要を引っ張った。調達が一巡すれば流通側はメーカーの値上げを転嫁できなくなる」とみる

⚫️2021.11.12日本経済新聞🗞

中小企業の事業承継を支援する東京都事業承継・引継ぎ支援センターは2021年4~9月の相談実績をまとめた。会社を譲渡したい側と譲り受けたい側からの新規の相談は計518社からあり、前年同期から43%増えた。昨年は新型コロナウイルスの影響で経済活動が縮小したが、今年はその反動が出たという。
事業承継に至った成約件数は前年同期比21%増の56件だった。新規相談のうち譲渡側からは190社で、7割強が年間売上高3億円以下だった。譲り受けたい側の会社規模は年間売上高1億円以下が23%、10億円超が22%などばらつきがあった。

⚫️2021.9.7日本経済新聞📰

【サマリー】
中小企業約360万社
うち5万社が、後継者不足により休廃業
2025年には後継者がいないとされる127万社で経営者が70歳を超える

【思ったこと】
経営者は、誰かにとってスーパースター⭐️
誰かの人生を劇的に変えている
経営者さんには、末永く、経営者でいてもらいたいと理念を掲げる一方
そんな方々が築いた会社を半永久的に存続してもらうためにも
上手に、かつ理想的なひとに、承継できたら最高と思う

【記事全文】
「小学校の受験前にこれだけはしてもらおう」。3日、河本和真は経営する認可外保育園「駒沢の森こども園」で保育士と議論していた。
32歳の河本が「園長」になったのは2020年春。運営会社の経営者が体調不良で後継者を探していると知人から聞いた。一度は河本が紹介した人物が引き継いだが、少子化に加え、保育士確保に費用もかかる保育園の経営を軌道に乗せるのは激務で、2~3カ月で体調を崩してしまった。
「紹介した以上、自分がやりきる責任がある」。河本は自らが後継者になることを決めた。
実は河本は元証券マンだ。日本の事業承継を変えたいと19年にサーチファンドの立ち上げに加わった。サーチファンドはその名のごとく、社長を目指す若者が後継者難の中小企業を探し、投資家の資金で買収する。
自らが引き継ぐことを決めた駒沢の森こども園は取得に約6000万円が必要だった。河本は証券会社時代の人脈も頼り投資家を集めた。
経営環境は厳しいが、「工夫次第で保育園の教育ノウハウは付加価値を生む」と河本は感じる。受験対策の外販など新たなビジネスモデルを作って数年後に投資家へ利益を還元するのが目標だ。
358万社(16年)と日本企業の99.7%を占める中小企業。業績悪化や後継者不足で、30年間で3割減った。帝国データバンクによると、年5万社以上が休廃業や解散を余儀なくされている。
□   □
「新型コロナウイルスの感染拡大が決定打となった」。鹿児島県大崎町にある鯉料理店、高井田養魚場の2代目、牧之瀬幸夫は20年10月に店を閉めた。養魚場を併設し人気を集めたが、食生活の変化もあり、徐々に収入が減少した。
牧之瀬の2人の娘は別の仕事に就き、身内には後継ぎがいない。地元の商工会などを通じて事業承継の道を探るが難航している。大崎町では町内約400の事業者の3割が後継者難で廃業を検討している状態だ。
経営体力のない中小にとって新型コロナは深刻だ。日本M&Aセンター社長の三宅卓は「事業をやめる最終決断を迫られる企業が増え、後継者問題が3年前倒しになった」と危機感を隠さない。
□   □
雇用の7割を支える中小企業の危機は、日本経済に直結する。政府は6月の成長戦略に事業承継に向けたM&A支援策などを盛り込んだ。
再編で競争力を高める動きも出始めている。
由紀ホールディングス(東京・中央)は18年、前社長が引退した電線製造の明興双葉(東京・中央)を買収した。自動車の電動化で需要が増えており、今年、長野県の工場で増産投資を決めた。
後任社長に就いた生え抜きの向井博史は「グループ入りで投資を増やせて超電導などの研究開発も始められた」と前向きだ。事業を引き継ぐと同時に生産性が上がれば、経済にもプラスになる。
由紀は18年以降、後継者がいない町工場など11社を傘下に収めている。社長の大坪正人は「特殊技術を持つ企業が集まれば独自製品で市場を作れる」と、中小を束ねて大企業に対抗する考えだ。
以前は難しかった承継の形も生まれる。
クラウドサービス開発のスタディスト(東京・千代田)に勤める岡村慎太郎は21年3月、妻の両親が営む広島市のコーヒー豆販売会社、脇屋の代表取締役に就いた。
妻の両親の病気でたたむことも考えたが、優良な仕入れ先を持ち、経営は黒字。岡村は「後継者がいないからつぶすのではもったいない」と自ら継ぐことを考えた。
スタディストは以前から副業や在宅勤務など自由な働き方を認めていた。今回、契約社員でも認められたことで、岡村は広島に移住した。週2回ほどスタディストの契約社員として遠隔で社内ITの仕事をし、残りを脇屋社長として働く。
脇屋では紙やエクセルだった帳簿をクラウド会計に変えた。脇屋で試した新しいソフトを、スタディストに逆提案し「兼業を認めてくれた会社への恩返し」で、二足のわらじに自信をみせる。
中小企業庁の試算では25年には後継者のいない127万社で経営者が70歳を超える。承継に向けた取り組みの加速は待ったなしだ。
(敬称略)

経済を陰で支える中小企業が瀬戸際にある。その承継の今を追う。

210701日経
大田区と公庫が協定

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73427140Q1A630C2L83000

210628日経

M&Aにルール 登録制

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73251300V20C21A6TCJ000


181129日経
個人事業主が事業承継をしやすい環境をつくるため、政府・与党は新たな税優遇制度を作る方針を固めた。子供が事業を継ぐとき、土地や建物にかかる贈与税などの支払いを猶予する「個人版事業承継税制」を作る。70歳を超える個人事業主は2025年までに約150万人になるとされる。引退期を迎えた個人事業主が税金を理由に廃業を迫られるのを防ぐ。
与党の税制調査会で制度の詳しい設計を議論したうえで、19年度の税制改正大綱に新制度の創設方針を盛り込む。
主な対象になるのは地方の旅館や町工場、代々続く酒蔵などを家族経営しているような個人事業主。土地や建物などを含めて跡継ぎに事業承継する際は、控除を超える分に生前なら贈与税、死後なら相続税がかかる。
政府・与党が検討している新制度は、土地や建物、設備にかかる税金の支払いを猶予する仕組み。10年程度の時限的な制度にすることで調整している。
中小企業庁によると、個人事業主全体のうち相続税が実際にかかりそうなのは1割程度。中小企業向けの事業承継税制は18年度に見直され優遇を受けやすくなっており、個人にも広げる。
悪質な節税を防ぐ対策も講じる。跡継ぎが承継後すぐに事業をやめないことなど厳しい制約を検討する。個人の土地の相続には今でも「小規模宅地特例」という相続税を減らせる制度があるが、新制度の創設後はこの特例を使いにくくするなど個人への税優遇が過剰にならないようにする。

190124ネット情報
持株会社を新たに設立したり、事業会社を持株会社化したりすることは、機動的な意思決定や明確な収益管理を行うための一つの有用な方法として挙げられています。さらに近年ではこの持株会社を事業承継のスキームとして利用する事例が増えてきています。
持株会社とは――設立が長らく禁止されていた
持株会社とは、他会社の株式を所有することにより、その会社の事業活動を支配し経営することを目的とする会社形態の一つです。

1947年に独占禁止法が制定されてから、支配力の過度な集中を防ぐという目的から持株会社の設立は長く禁止されてきました。しかし経済界からの規制緩和の要望もあって、1997年の独占禁止法の法改正により解禁が行われるに至りました。

持株会社は、傘下の事業会社の株を保有して支配力を有することで、グループの先導役としての役割を担います。経営判断の迅速化や、特定事業の利益に固執せずに柔軟に経営戦略を策定できることなどがメリットとして挙げられます。

そして近年、この持株会社は、事業承継を円滑に進める上でのスキームとしても注目を浴び、活用されるようになっています。
持株会社を活用した事業承継の流れと概要
持株会社を活用した事業承継のスキームでは、後継者はまず持株会社を設立します。
次に、株式を購入する資金調達を準備します。
事業承継において、後継者が現経営者から株式を買い取る形で手続きが進められていくとき、後継者には現経営者の株式を購入する費用が必要になります。そのための資金調達はしばしば事業承継においてハードルの一つになります。

持株会社を活用したスキームでは、後継者が株式を購入するために金融機関へ融資の申し入れを行う際、保有している事業会社の株式の配当による返済を金融機関側と約束し、融資を受けることができるようにします。

現経営者側からみると、後継者が株式を現金で買い取る形になるので、手元に株式ではなく現金が残ることとなります。株式の資金化(現金化)は、現経営者側にとってメリットの一つです。
遺産分割による株式分散のリスクを回避
この持株会社スキームを活用した際には、現経営者が一連の手続きを終えたあとに亡くなった場合でも、既に故人はその会社の株式を保有していないので、遺産分割による株式分散のリスクを防止することができます。

原則として、故人が保有していた財産の相続には「遺留分」があります。相続人が複数おり、そのうちの1人が後継者だとしても、この遺留分があるために故人が保有していた株式が、複数の相続人に分散してしまうリスクがあります。

事業承継においては、後継者にその会社の株式を集中させることが成功のポイントの一つです。しかしこの遺留分がネックになって後継者への株式の集中が難しくなり、結果的に事業承継後の経営がうまくいかないケースが起きてくることがあります。。

こうしたケースでも、中小企業経営承継円滑化法に基づく民法の特例によって株式の集中を目指す方法はありますが、相続人全員の合意が必要となるなどの手間や時間も掛かるので、より円滑な承継の方法として、持株会社を活用した事前の準備とその方法を選ぶケースも出てきています。
持株会社を活用する際の留意点とは
持株会社を活用したスキームでは、後継者にとっては金融機関からの借入金の負担が増えるということになりますし、事業会社の経営がうまくいかない場合には、その借入金の返済に苦労することもあります。

また現経営者にとっては、株式を譲渡する際に得た譲渡益に対して所得税などが課税(申告分離課税)されることもあるほか、その譲渡対価の現金を後継者に相続する際には相続税が課税されることになるため、税務面においては、節税効果は期待できない、という見方もあります。

これらのことは現経営者も後継者も留意すべきポイントの一つと言えるでしょう。

事業承継選択肢

親族
現役員等後継者
M&A
後継者がホールディングス設立時→配当金を原資に金融機関借入→現社長から株買取

自社株評価
たとえば、取引目的であれば「インカム・アプローチ」「コスト・アプローチ」「マーケット・アプローチ」などと称される評価方法がありますし、税務評価を目的とする場合には「純資産価額方式」「類似業種比準方式」「特例評価(配当還元)」があります。このうち、相続税対策の観点から押さえなければならないのは、税務評価を目的とする評価方法であり、とりわけ純資産価額方式、類似業種比準方式が重要です。
 
純資産価額方式とは、法人の資産・負債を税務上の価額に置き換えた場合の純資産価額で評価する方法です。簡単にいうと、「時価ベースでの純資産の金額」になります。

日本M&Aセンター 自社株評価シミュレーション

https://www.nihon-ma.co.jp/cv_simulation/




会社のオーナーは、会社の株式という財産を持っています。喜ばしいことではありますが、会社の業績がよく、どんどん成長している会社の株式の価値は、会社の業績と連動してどんどん大きくなっていきます。
 
そうして大きな価値をもった株式を大量に持ったまま、その会社のオーナーが亡くなってしまった場合、どのようなことが起きると思いますか?
 
 
そうです。当然、その会社の株式にも多額の相続税が課税されてしまうのです!
 
相続税を課税されてしまうのは、財産を持っている人の宿命なので、まだ仕方ないかもしれません。ですが、本当に困ってしまうことはなにかというと・・・
 
 
相続税はお金で払わなければいけないことです。
 
 
もし相続人の一人が株式だけを相続したとしても、その相続人は、お金で相続税を払わなければいけないのです。
 
まだ、子供が1人の場合には平気かもしれませんが、もし子供が2人以上いたらどうでしょう?会社を承継する人に株式を相続させるなら、その他の兄弟姉妹には、キャッシュをわけてあげなければ不平等になってしまいます。
 
その結果、株式だけ相続した相続人は、納税のためのお金を用意できずに困り果ててしまいます。そして最悪の場合、会社を解散させることも検討しなければいけなくなってしまうのです。
 
 
こういった問題を解決するために、政府は画期的な制度を創りました。
 
 
その制度の名前は・・・
 
事業承継税制
 
と言います。
 
 
この制度の趣旨は、「世の中の中小企業が、次世代に事業をバトンタッチしてくれるのであれば、相続税や贈与税を大幅に減免しますよ」というものです。
 
この制度を受けることができた場合、株式にかかる贈与税や相続税をなんと最終的に100%免除してくれるのです!(平成30年1月以降)※ちなみに平成29年までは80%OFFでしたが、平成30年から100%免除になります。大奮発ですね。
 
 
少し前に、経済産業省の中小企業庁の方と話す機会がありました。その方の話だと、「今の日本にとって、一番大きな損失は、業績の良い会社が廃業してしまうこと」だそうです。雇用も大量に失ってしまいますし、国としての活力も失われてしまいます。
 
そのようなことから、もし、事業を次の代に引き継いでくれるなら、税金をちょっと免除したっていいじゃない!という趣旨で、この制度が作られました。
 
実はこの制度は、平成21年の税制改正で作られました。しかし、この制度ができたばかりのころは、税金を免除にする条件がかなり厳しく、利用者はとても少なかったのです。そのことをうけ、平成27年の税制改正で大幅に要件を緩和し、利用者は少しずつ増えていました。(参考:日刊工業新聞)
 
そして平成29年12月14日に発表された税制改正大綱で、大幅な条件緩和が発表されました。
 
今回は、この事業承継税制について解説をしていきます!
 
 

そもそも事業承継税制ってどんな制度なの?
事業承継税制とは、先代経営者から後継者に株式を生前贈与する時か、相続させる時に使える制度です。
 
生前贈与でこの制度を使う場合には、贈与税はなんと100%OFF !つまり0円になります。相続でこの制度を使う場合には、相続税は80%OFFになります。
 
そうすると、生前贈与で使った方がいいじゃないかと思いますが、実は、どちらのケースでも最終的に免除になる金額は同じになります。
 
生前贈与でこの制度を使った場合には、その時の贈与税は0円ですが、その人が亡くなってしまった時に、その人の手元に残っている財産額に、この制度を使って生前贈与した株式を足し戻して相続税を再計算します。そして、その株式にかかる相続税を80%OFFにしてくれるというわけです。(ややこしいですね)
 
つまり最終的には同じ金額が免除されるということになります。

贈与をした時は贈与税は0円


最終的に相続税の80%も免除してくれるので、その金額は何億円規模になることもあります。それだけの税金を免除してもいいから、世の中の中小企業に頑張ってもらいたい!という政府の願いが込められた制度なのですね。皆さん是非、積極的に活用しましょう!
 
 
【平成29年12月15日追記】と、いうのが平成29年までの取扱ですが、平成30年からは大幅に拡充して、相続税も贈与税も100%免除になりました!ほんと大奮発ですよね~
 
 
ちなみに、そもそも会社の株式の評価額の計算はどうやるの?という方はこちらの記事もご覧くださいませ♪


株式の評価方法の解説

株式の評価方法の日本一わかりやすい解説
「非上場株式の相続税評価額は、配当還元方式・純資産価額方式・類似業種比準価額方式の3つから計算します」って!専門用語が多すぎて訳わからん!!という方に朗報です。イラストをたくさん使いながら、日本一わかりやすく株式の評価を解説しました♪これでわからなければ諦めてください!



事業承継税制を受けるための4つの条件
さて、ここからは、この制度を使うための条件をお伝えしていきます。
 
この制度を使うための条件は、なかなか細かいところもありますが、私の感覚ですと、非常に多くの中小企業がこの制度を使える条件を満たしていると感じます。
 
条件には大きく、4つの条件があります。
 
【1】人の条件
【2】会社の条件
【3】スタートしてから5年間の条件
【4】免除になるための最後の条件
 
順を追って解説していきます。

人の条件
まず、この制度は使うためには、先代経営者が満たすべき条件と、後を継ぐ後継者が満たすべき条件があります。
先代経営者が満たすべき条件とは、まず会社の代表者であったこと、次に会社の筆頭株主であったことです。そして後継者が満たすべき条件とは、まず会社の代表者になること、次に会社の筆頭株主になることです。(先代経営者が会長になって、後継者が社長となるパターンもOKです)
 
つまり、先代経営者と後継者の満たすべき条件は、ほぼ同じですね。
 
しかし、後継者に株式を贈与する際には、後継者が3年以上取締役であることが条件になります。この点は注意が必要ですね。
 
ちなみに、この制度は親族でなくても使うことができます。従業員に対しても使うことができるのですが、お金のやりとりが発生する売買の場合には、この制度は受けられません。従業員に対して贈与するというケースは、実務上は珍しいケースかなーと思います。
 
 
 
【平成29年12月15日追記】と、いうのが平成29年までの取扱いですが、平成30年からは、この事業承継税制を一度スタートさせた場合には、先代経営者以外の人から贈与なり相続でもらった株式にも、この事業承継税制が使えるようになります!

ちなみに、「会社の代表者であったこと」を満たす要件はこちらの記事で詳しくご紹介しています!意外な論点もありますので、ぜひご覧ください。


代表権の考え方

事業承継税制の代表権の意外な論点
事業承継税制の代表権の要件について、後継者が代表者になるタイミングや、複数の代表取締役がいる場合など、社長・会長・代表取締役などの役職も含め、痒い所に手の届く解説をお届けしています。株式の贈与とのタイミングも要チェックです!



会社の条件
次に会社が満たすべき条件です。まず、第一に会社が中小企業者に該当することです。中小企業者とは次の条件を満たす会社をいいます。

出典:中小企業庁「FAQ中小企業の定義について」
中小企業者の定義で注目していただきたい点は、資本金基準 or   従業員基準である点です。いずれかを満たせば中小企業者に該当します。
 
従業員数は容易に変更することはできませんが、資本金の額は自由に減らすことが可能です。もし現在、条件を満たしていなくても、資本金を減額すれば、この制度を利用することが可能です。
 
ちなみに、不動産を管理するための法人、いわゆる資産管理会社に該当する場合には、この制度は受けられません。資産管理会社に該当するかどうかは細かい判定が必要になりますが、ざっくりいうと、実際に事務所があって、血のつながりのない従業員が5人以上いれば、事業実態のある会社として、この制度が受けられます。
 
人の条件と、会社の条件を満たしていれば、まずはこの制度をスタートさせることが可能です。申請は、その法人が所在する都道府県から認定をもらう必要があります。

スタートしてから5年間は事業を継続させなければいけません
この制度は、スタートしてから5年間、守らなければいけないルールがあります。途中でこのルールを破ってしまった場合には、猶予されていた税金は利息をつけて納めなければいけません。
 
そのルールのうち、主なものは下記の通りです。
 
1.後継者が会社の代表者であり続けること
2.後継者が会社の株式を保有し続けること
3.会社の雇用の8割を維持すること
 
一言でいえば、後継者が5年間社長であり続け、株主であり続け、雇用の8割を守ることです。
 
この中で特に重要な条件は、雇用の8割を維持することです。この制度が普及しなかった最大の理由は、この条件を満たせる自信のある経営者が少なかったからです。10人の会社であれば、従業員が7人になってしまえば、納税猶予は打ち切られ、利息をつけて税金を払わなければいけません。(ちなみに利子税は年利0.8%だけなので、大きなリスクではないと思いますが)
 
中小企業であれば、従業員が2割減ってしまうようなことが起きる可能性は十分あります。
 
そこで、この点について平成27年に条件が緩和されました。これまでは、8割の判定を毎年判定していたのですが、平成27年からは5年間の平均で判定することと改められたのです。
 
この改正により、一時的に従業員が減ったとしても、5年の平均でみれば8割維持できている場合には、納税猶予は続行されることになり、経営者のリスクが大幅に緩和されました。
 
さらに平成30年には、「もしこの条件を満たせなくても、経営状況の悪化や正当な理由があればいい」という形で、ただちに打ち切りになるわけではなくなりました!
 
これらの従業員数のカウントは基本的に、その会社の社会保険加入者の人数で判定します。詳しくは↓のブログにまとめましたので、ご覧くださいませ。


従業員数のカウント

事業承継税制における従業員数のカウント
事業承継税制を使うときに大切な「従業員の数え方」・「従業員数証明書」の書き方を記載例を交えながらご紹介しています。役員・パート・アルバイトなど間違えやすい論点も漏れなく解説しています!



5年経ってもすぐに免除になるわけではありません。
5年間の事業継続が終わっても、すぐに税金が免除になるわけではありません。
 
5年経ったら、社長はやめてOKですし、雇用の8割も意識しなくてOKです。しかし1つだけ守り続けなければいけないルールがあるのです。
 
それは株式を保有し続けることです。
 
もし、株式を誰かに売却してキャッシュ化するのであれば、今まで猶予されていた税金を払わなければいけません。また、もし会社を解散させてキャッシュ化した場合も同様です。※解散の場合には、実際に戻ってくる金額を限度に、税金を支払ってもらいます。
 
ちなみに5年間の条件を守った後に、納税をすることとなってしまった場合には、5年間分の利子税(年利0.8%)は免除されます。どちらにせよ払うはずだった税金だと思っていただければ、利息分は得したことになりますね。
 
それでは、一体どうすれば最終的に免除になるのかというと・・・
 
後継者が、この同じ制度(事業承継税制)を使って、次の後継者に事業を承継することができれば、税金が免除になります。つまり、1代目から2代目に承継される時の税金は、2代目が3代目経営者に事業承継ができた場合に免除になるという仕組みです。
 
かなり息の長い話ではありますが、相続税が何千万から数億単位で免除になるのであれば、挑戦する価値は十分あると思います。
 
 
ちなみに、2代目が死亡してしまった場合にも、税金は免除になります。

この制度のデメリットは、対応できる専門家が少ないこと
この制度の最大の欠点は、まだ歴史が浅いため、対応できる専門家が極めて少ないことです。
 
君子危うきに近寄らずと言わんばかり、経験したことのない制度に対して税理士は非常に懐疑的です。確かに、まだまだ紹介していない細かい条件がたくさんある制度で、途中で間違えたことをすれば、猶予されていた税金を全額、利息をつけて支払わなければいけないリスクも存在します。
 
そのため、税理士がこの制度を使うことに躊躇してしまうケースが非常に多いのです。
 
しかし、私は実際にこの制度を使って何度も申告をしていますが、気を付けるべきポイントは実はそこまで多くないと思っています。
 
顧問税理士にこの制度の相談をして、いまいち切れ味のいい返答がもらえない場合には、事業承継に強い税理士に相談してみることをお勧めします。

まとめ
これまでの事業承継対策は、意図的に会社の利益を一時的に少なくし、株価を圧縮したうえで、一気に贈与するというやり方が横行していました。私は、このようなやり方は、専門家として積極的に勧めるべきものではないと考えています。
 
一方で、この事業承継税制という制度は、制度を使うために会社の利益をコントロールする必要は、一切ありません。
 
また、政府としても中小企業の応援、雇用継続の観点から、大幅にバックアップしてくれている制度です。是非、会社経営者さんは、この制度を積極的に検討していただきたいと思います。
 
さらに、最大500万円まで補助のでる事業承継補助金というものがあります。こちらの記事で詳しくご紹介しておりますので、興味のある方は是非ご覧ください。


事業承継補助金の解説

事業承継補助金について詳しく解説したよ
事業承継に関係する事業承継補助金について詳しく解説しました!気になる採択率や補助金の補助率・限度額の考え方も載っています♪事業承継税制と一緒に検討されてみてはいかがでしょうか?


最後になりますが、この制度はとても良い制度なのですが、事業承継をする前には、必ず名義株というものがないかどうかを確認する必要があります。名義株の対策をしないまま事業承継を進めてしまうと大変なことになりますので、名義株を知らない人は必ずこちらの記事もご覧ください→名義株とは何ぞや?

自社株評価下げる
同族経営の中小企業が存続するうえで、後継者に経営手腕と自社株を引き継ぐことは最も重要なテーマです。後継者には少なくとも発行済み株式数の3分の2以上を集中させなくてはなりません。それは自社株を持っていることイコール経営権を握っていることを意味するからです。
 
まずは、会社を経営している社長が子に事業を承継させたいと思うものの、株価が高くて移転が難しいというケースを考えていきます。これは私がある会合に出席した時に、たまたま隣に座った男性が雑談的に持ち出した話です。
 
その方は東北地方に住む70代の男性です。機械部品の製造会社を一代で築いて30年、ずっと安定した経営をしており、最近の売り上げも好調です。「わが社は優良法人なんですよ」と嬉しそうに話されていました。
 
優良法人というのは、正式には優良申告法人といい、「企業の経営内容に嘘偽りがなく、社員の所得水準も高くて、納税も毎年きちんとしている会社である」と税務署が認めた法人です。これに選定されるのは全法人の約1%といわれています。
 
しかし、男性は70歳を越えて健康に自信がなくなり、そろそろ相続のことが気になりだしたとのことでした。40代の長男が専務として事業をサポートしており、その妻が経理を手伝っています。次男は事業には携わっていません。
 
さすが優良法人だけあって自社株の評価額は5億円近くもありました。その8割は社長が保有しています。残りの2割は社長の妻の保有です。これを長男に移転しようと思うのですが、贈与しようとすると、2億5000万円という莫大な贈与税がかかります。かといって相続まで待っても、1億7000万円あまりの相続税がかかりそうです。事業承継税制も検討しましたが、人員整理もしなければならない状況なので、8割以上の雇用が確保できないということで見送っており、「早く経営を譲ってしまいたいが今のままでは譲れない。どうしたものか」と悩んでいらっしゃいました。
 
これだけの優良な会社ですから、顧問税理士は当然います。私はこれ以上詳しく聞いてしまうと、その顧問税理士のテリトリーを侵してしまうことになりかねないので、「お話を聞くことくらいはできますが、顧問の先生はどんな意見やアドバイスをされていますか」とやんわりと聞いてみました。
 
しかし、その社長は自社の顧問税理士に何年も前から頼んでいるけれど、一向に提案がないので物足りなさを感じているのか、あるいは会計業務だけやってもらえればいいと割り切っているのかわかりませんが、どんどん私に深い話を始めるのです。そして、とうとう「あなたなら、わが社をどうにかできますか」と聞かれてしまいました。私は仕方なく、「たぶんできると思います」と答えました。これ以前の段階で、私はこの会社の顧問税理士が株の評価を適正にできていないことを感じていました。このままでは、「せっかくのいい会社を潰してしまうかもしれない」と思うと忍びなかったのです。
 
 
【こちらも読みたい】
役員退職金、3つの判定基準とは?/引退時の退職金は「たんまり」もらう
 
まず検討すべきは退職金の支払いによる評価の引き下げ
さて、こういった場合、まず最初に考えるのは株の評価を下げることです。そして、株価が下がったところで長男に贈与します。そうすれば、贈与税を抑えて株を移転できるのです。では、どうやって株の評価を下げるかですが、これにはいくつかのメニューがあります。
 
①役員に退職金を支払う
②不動産を購入する
③減価償却を計上する
④生命保険を活用する
 
まず①「役員に退職金を支払う」から説明します。社長に許される範囲で最大限の退職金を支払います。まとまった額の退職金を放出することで一気に会社の利益を下げてしまうのです。退職金は「最終月額報酬×勤続年数×功績倍率(2〜3倍)」で出すのが相場です。この社長の場合、月額報酬が150万円でした。
 
本来、これだけ業績のいい会社であれば、社長の報酬額はもっと大きくてもおかしくありません。しかし、社長の人柄なのか、実につましい額で満足していたようです。これは余談ですが、私が「倍の報酬でもおかしくない」というと、社長は「そんなにもらっていいのですか!」と素直に驚いていました。私はこの時点でも「顧問税理士は社長の報酬を適正に判断していないのかもしれない」と違和感を覚えました。
 
ともかく、社長の退職金を1億4000万円に設定。これは、これまで社長が時間をかけて積み上げてきた努力に対する報酬ですから、正々堂々と受け取っていい金額です。しかも退職金によって会社の利益が圧縮され、会社の資産が減少します。ということは、おのずと株価も下がります。巨額の退職金をもらうことは、何よりも会社のためになるのです。
 
ここで、株式の評価について少し説明しておきます。
 
株式の評価方法は原則3つです。「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」です。今お話ししている同族経営の中小企業の場合は、類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせて算出する「併用方式」を利用します。次回の第11回では、評価方式について説明しましょう。

事業承継税制30年度

190227日経
中小企業の事業承継は地域格差も問題となっている。地方では若者が仕事を求めて都会に出る傾向が強く、後継者難がより深刻だ。帝国データバンクによる全国約27万社の調査では、18年の後継者不在率は全国平均が66.4%。最も高い沖縄県で83.5%、2位の山口県で75%となった。
都市部の起業家などが地方の中小企業を引き継げば、地域格差の解消につながる可能性がある。だが、なじみがない土地の知らない企業を引き継ぐことに二の足を踏む起業家も少なくない。
山口フィナンシャルグループ(FG)は都会の人材を後継者難の中小企業に紹介する事業を始めた。10億円規模の事業承継ファンドを通じて、起業準備資金として1千万~2千万円を拠出。中小企業の社長に就任してもらい、ファンドを通じて株式の過半数を取得する。年内に2~3社をマッチングしたい考えだ。
日本では年間約4万社が休廃業・解散する一方、開業率は米英の10%程度に比べて低い5%程度にとどまる。経済産業省は中小企業の廃業の増加により、25年までの10年間で約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があると予想する。
 
190514日経
会社員よ、事業承継に挑め
MHCF代表取締役 尾山一志
2019年5月14日 2:00 [有料会員限定]






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日本の中小企業の3分の2は後継者不在という大きな問題を抱えていると聞く。黒字経営にもかかわらず、後継ぎがいないから廃業を余儀なくされるというケースは今後も増えるだろう。その流れに歯止めをかけるのは会社員による事業承継ではないか。自分の体験も交えて提言したい。
私は大学の薬学部を卒業後、製薬会社を経て昨年3月まで調剤薬局の薬剤師として勤務していた。薬剤師に加え、新たな専門性を身につけようと大学院に通学していたころ、その関係で後継者不在に悩む調剤薬局オーナーと出会った。大学院の学びを生かして事業価値を自ら評価し、その他の条件も整ったので引き継ぐことにした。わずか1カ月ほどで会社員から経営者への転身を決めたのだ。
安定した立場を捨てるのは勇気がいったが、ゼロからの起業でなく、すでに顧客のいる事業を引き継げるのは大きかった。自ら企業価値や将来性を評価したことで、金融機関の信頼も得られ、資金調達もスムーズだった。
事業を承継する前には前オーナーの会社の社員として雇ってもらった。引き継ぐまでに日々のオペレーションを把握し、ほかの従業員とのコミュニケーションもとれた。顧客に迷惑をかけることも少なかったのではないかと思う。
実際に会社を経営してみて思うのは、従業員として働いた経験が非常に役立つということだ。一緒に働く従業員の気持ちがわかり、どんな施策がモチベーションを高め、逆に士気を下げるか、身をもって経験している。これは強みになる。これからは自分の経験をもとに、同じ志を持つ人をサポートしていきたいと考えている。
サラリーマンのキャリアチェンジは注目を集めつつある。似た業務への転身なら低リスクで、自身のこれまでの経験も生かせる。終身雇用の見直しが進む中、会社員も安定した身分ではない。独立希望や起業家精神を持つ会社員も増えている。ぜひ事業承継による起業を将来の選択肢にしてほしい。
効果は事業の存続や雇用維持ばかりではない。新たな担い手の登場は新商品や新サービスの開発、販路開拓といった効果も生むだろう。地域経済への恩恵も小さくないはずだ。

190814日経
後継ぎのいない中小企業の経営者が第三者に円滑に事業を譲り渡せるよう、中小企業庁と財務省は新たな支援税制の創設を検討する。経営者が会社を売った時に手にする利益にかかる税金を、一定条件のもとで繰り延べる内容だ。会社を譲り受けた側にも、損失に備えた引当金を税務上の損金とすることを認めるなど優遇策を検討する。
中小企業庁が近くまとめる税制改正要望のなかに「第三者承継促進税制」の創設を盛り込み、財務省と折衝する。2025年には全国の中小企業の経営者の約6割が70歳以上になり、その半分の約127万人は後継者不在とされている。税制面の支援措置を設け、後継者難による廃業を回避する狙いがある。
検討中の新たな税制の柱となるのが経営者の税負担軽減だ。経営者が他企業やファンドなど第三者に会社を売って退任する際、株式の簿価と売却額の差分だけ譲渡益(黒字)が生じ、通常20%の税金がかかる。検討中の新税制では課税をいったん繰り延べる。
経営者が退任後、譲渡益を元手にベンチャー企業などに投資して赤字が発生した場合などは、赤字と譲渡時に生じた黒字を相殺することを認めることを検討している。
経営者から事業を承継した第三者側への優遇措置も設ける。承継に伴って発生した「のれん」の価値について、通常は5年かけて償却するところを、特別に一括償却できるようにする。
承継後に投資損失に備えて計上した引当金を税務上の損として扱い、毎年の税負担を圧縮できるようにする案も浮上している。
事業承継を巡っては、親族内の承継に伴う贈与税・相続税の負担を大幅に減らす「新事業承継税制」が2018年4月からスタート。19年度からは個人事業主版の事業承継税制も創設された。

200311日経

政府は10日、中小企業が事業を引き継ぐ際に、経営者の個人保証を不要にする制度を盛り込んだ中小企業成長促進法案を閣議決定した。体力のある中小企業が後継者を見つけられずに廃業する事態を防ぐ。中小企業が大企業に成長したあとも中小向けの支援策を利用できるようにする制度も設ける。開会中の通常国会に提出し、秋ごろの施行をめざす。
信用保証協会が経営者の個人保証を肩代わりする新制度をつくる。個人保証の存在は中小企業が事業承継をためらう一因。現在は保証協会から最大2.8億円の保証を受けることが可能だが、経済産業相の認定を受けた中小企業は承継の際に別枠でさらに最大2.8億円分の保証を引き受けてもらえるようにする。
中小企業が公的支援を打ち切られるという懸念を持たないよう、支援制度も見直す。国などが地域活性化に重要と認めた場合は大企業へと成長した後も最大5年間は低利融資などの特例を受けられるようにする。

200714日経

経済産業省は第三者への譲渡を希望する中小企業の情報を民間のM&A(合併・買収)サイトで公開する。独立行政法人の中小企業基盤整備機構の登録情報を、企業の同意を前提に匿名で提供する。技術力がありながら後継者がいないような中小の事業承継を促す。
サイトの運営者を15日から公募する。事業者の選定後、中小機構のデータベースに登録する約4400社の情報を8月以降に順次公開する。社名などの詳細は具体的な交渉に入る段階で守秘義務などを課した上で明らかにする想定だ。これまで機構の管理データは金融機関や税理士など一部の専門家しか閲覧できなかった。
中小企業は経営者が高齢化しており、全国約127万社で後継者が不在という。この半分近くの約60万社は黒字のまま廃業してしまう可能性があるとされる。経産省は10年間で60万社の第三者承継の成約をめざす。現状は民間の仲介分も含め年4千件程度にとどまる。

210104日経

事業承継を一括支援
信金中金など連携組織
2021年1月4日 2:00 [有料会員限定]







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信金中央金庫は信用金庫の取引先企業の事業承継を支援するための連携組織を立ち上げる。人材サービスのパーソルキャリア(東京・千代田)や事業承継支援のトランビ(東京・港)など11の企業・機関と組み、M&A(合併・買収)や人材確保、税務といった課題を解決するためのサービス・ノウハウを提供する。
「しんきん事業承継コンソーシアム」を1月中に設立。後継者難で事業の存続が危ぶまれている中小企業を支援する機能をワンストップで提供することを目指す。
全国の信金からの相談を中央機関である信金中金が受け、専門ノウハウがある企業や機関を紹介する。
例えば、M&A支援は信金キャピタルとトランビが担うが、専門性が高い医療法人や介護事業者のM&Aには日本経営グループ(大阪府豊中市)とメディヴァ(東京・世田谷)が対応する。
ファンドによる株式引き受けが必要な場合は日本プライベートエクイティ(東京・千代田)につなぐ。

210125NewsPicks

政府は、中小企業が事業の承継や売却をする際の法的な支援措置を強化する。連絡がとれないなど株主が所在不明の場合に、企業側が強制的に株式を買い取れるまでの期間を、現行の5年から1年に大幅に短縮する。経営者の高齢化が進む中、技術などが途絶えないようにする狙いがある。

経営承継円滑化法の改正案を今国会に提出する。
 非上場の中小企業では、相続などを通じて株式がさまざまな関係者に散逸しているケースがある。現行制度では、5年以上にわたって株主総会の招集通知など会社からの書面を受け取らず、株式配当も受けない株主がいる場合、会社側がこの株主が持つ株を強制的に買い取ることを認めている。法改正で、資本金などで要件を定めた中小企業を対象に、買い取れるまでの期間を1年に短縮する。
 高齢の経営者が事業の承継や売却を検討してから、株主の返答を5年も待たねばならないとすると、培ってきた精密な生産技術やノウハウの価値が低下するおそれがあるためだ。強制措置のため、買い取る際には会社側に公告で幅広く周知させることを義務付ける。
 政府の推計では、2025年までに経営者が70歳を超え、後継者が未定の中小企業は127万社あり、このうち半数近い約60万社が黒字でも後継者がいないために廃業すると見込まれている。
 民間調査会社が企業の合併・買収(M&A)仲介業者や金融機関約240社を対象に調べたところ、中小企業の約3割で、株主の所在不明によってM&Aの交渉に「苦労した」と回答した。交渉を断念したケースも1割弱あったという。


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