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台湾の半導体は今どうなっている

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日本、台湾、米国企業の半導体会社で15年仕事をしていました。 今注目の半導体業界に興味がある人、文系だけど働いてみたい人、などに向けて、元ファウンドリー出身者の視点で語ります。
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#台湾

TSMC創業者が警告する、半導体サプライチェーンの危機とアメリカの戦略〜中国の脅威と世界的な競争激化の中、台湾のTSMCが果たす役割とは? (再掲)

2023年3月16日、台北で行われた天下雑誌主催の講演会で、「The Chip War」の著者ChrisMiller氏とTSMC創業者のモリス・チャン氏による対談が行われた。 次期台湾総裁候補者の一人、民進党の賴清德氏やTSMCの現CEO C C.Wei氏も会場に足を運ぶ。たった一冊のアメリカの研究書物がここまで注目されるその理由は何だろうか。 そこには今後の半導体業界の情勢を占うヒントが盛り込まれている。 アメリカとその他の国の半導体サプライチェーンが二極化する可能性

奮い立つ台湾の至宝、モリス・チャン氏

台湾台北市にある、国立故宮博物館でいちばん人気のある『翠玉白菜』には、込められたメッセージがある。白菜は、中国語で“baicai”と発音し、多くの財を表す「百財」と同じ発音であることから財運を上げる意味だという。翠玉は翡翠のことで「忍耐、調和、飛躍」を表す。 半導体大手製造業TSMC創業者のモリス・チャン氏はアジアの大企業創業者というだけではなく、アメリカからの圧力、中国の脅威のなかで必死に台湾を守ろうとする、『翠玉白菜』のような存在だ。そしてわたしたちはいま、モリス氏が活

熊本はあらたな米どころ?元半導体メーカー社員が考える、JASM

「産業のコメ」という呼称がある。幅広い産業の中で、中核の役割を担(にな)い、なくてはならないもののことをさす。日本の高度経済成長を支えた鉄鋼がそれに当たる。そして現代の「産業のコメ」は、半導体だ。しかし2022年の現在、半導体はまだ日本の産業のコメに値する存在だろうか。 このコメの産地はアメリカ、台湾、中国、韓国、欧州など世界各地におよぶ。日本も70年代から80年代には、DRAM(ディーラムと読む。パソコンなどに使われるメモリーの呼称)などの技術開発が進んだ世界トップの産地

【3000字】JASMによる熊本工場の立ち上げは日本の半導体産業の”芯”となるか

半導体サプライチェーンの強化を目的として、2022年度の改正5G促進法が施行した。その第一号として、台湾と日本の合弁企業であるJASM(=Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)が認定。背景には、コロナ後の世界的な半導体チップ不足と日本国内の半導体産業への支援強化がある。 今回のJASMの工場立ち上げをどう捉えるか、日本の半導体産業の「復興」が叶う試金石となりそうにない要素がいくつかあげられる。

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【3500字】島耕作のアジア立志伝』で語られなかった台湾半導体の父、張忠謀(モリス・チャン)

2013年〜15年に放映された『島耕作のアジア立志伝』シリーズは、漫画「島耕作」シリーズとNHKがコラボした人気番組。アジアで成功したカリスマ経営者の秘密を明らかにするという内容だ。国内外で大きな反響を呼んだといわれている。番組では台湾のTSMC創業者(当時は元会長)モリス・チャンを取り上げたが、本稿では別の角度から彼の内面を掘り下げていきたい。

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