ダイビング健康診断ってどうしたらいいの??

ダイビングのライセンス講習を受けるにあたって、ショップから「病院で健康診断してもらってきて」や「病院でこの書類にサインしてもらってきて」などと言われることがあります。
「結局どの病院にいったらいいの?」
「何科を受診したらいいの?」
など、いろいろと悩んだことがありましたので、その備忘録としてこの記事を残しておこうと思います。

結局どうしたらよいのか

※ レジャーダイビングのライセンス講習に際しての健康診断、という前提です。

ショップから特に指定がない場合、基本的には「かかりつけの内科に行って、書類に記入してもらう」のでOKです。
病院によってはダイビングの書類の記入をしたことがなかったり、そもそもそのような書類の記入をやっていなかったりする場合もあるようなので、事前に電話で確認をしておくことをお勧めします。
電話の際には
1. 持参する書類に病院からのサインをしてほしいこと
2. 問診による健康診断をしてほしいこと
の2点を伝えると、病院の方には話が通じやすいです。

病院の受付で書類を渡せば、あとは診療を待つだけです。お医者さんもその書類のことや「結局何を判断したら良いか」が分からないこともあるので、自分の回答内容や「お医者さんに何を書いてもらえばよいのか」は事前によく確認をしておきましょう。内容のことがよくわからない場合は、ショップに問い合わせるのがよいです。

注意点

1. 診察は、自費診療です
診察料がもちろんかかりますが、こうした書類の記入には基本的に保険は適用されません(自費診療)。ですから全額自費負担になりますので、その点は理解をしておく必要があります。
健康面に特に問題がなく、単に少し問診をして書類にサイン等をしてもらうだけの場合は、かかっても4000〜5000円程度かと思われます。病院によって金額は異なる場合がありますから、心配であれば、事前に電話をする際に診察料についても問い合わせるとよいでしょう。
持病や手術歴、また45歳以上であるなどの場合は、別途検査等が必要になる場合があります。その時はもちろん診察料も変わってくることがありますから、そうした心配がある場合も、事前に病院にやダイビングショップに問い合わせをしてみるのが良いかと思われます。

2. 職業ダイバーは、決められた健診を受ける必要があります
高気圧作業安全衛生規則により、6ヶ月ごとに医師による健康診断が必要だそうです。そもそも職業ダイバーはこの記事を読まずともそのことはご存知のはずなので、詳細は割愛します(筆者は職業ダイバーではありませんので、詳しくはよく知りません)。

かかりつけ医がない場合や、断られた場合

DD NET(ダイバーズ ドクター ネットワーク)というものがあります(筆者はたまたま近所の内科で書類を書いてもらうことができたため、結局 DD NET は利用していません)。

全国のダイビングに理解のある医師のボランティアネットワークを構築しています。
これは、「メディカル・インフォメーションライン(会員向け非緊急医療相談)」では診断・医療行為が行えないため、実際に受診し、個別の案件で相談できる環境を整備する目的でネットワークが発足しました。

DD NETドクターは、「潜水医学に興味を持ち勉強されている医師」、もしくは「ご自身がダイバーの医師」が登録要件となり、2021年3月現在、約200名以上にご登録いただいております。

なお、Cカード(ライセンス)講習受講時前、ならびにダイビング前に「ダイビング適性検査」「ダイビング健康診断書」などを求められる場合がありますが、各DDNETドクターによりこれらの書類への対応可否の状況は違います。必ず事前に確認してから受診をお願いします。

DAN JAPAN DD NET のページより 

検索ページから、都道府県や診療科などを設定して病院を検索することができます。ただ上記のとおり、その病院にかかるにしても、一度しっかりと問い合わせをした上で受診する必要があります(この DD NET の検索サービス自体は、DAN JAPAN の会員でなくとも利用は可能です)。
DAN JAPAN については以下の記事が詳しいです。


そもそもなぜダイビングで健康診断をするのか

レジャーダイビング前に、質問票(病歴書)1)2)への記入及び「はい」の回答があれば医師診断書を求められることが多いと思います。ダイビング以外のレジャー活動でこのような手順を踏むことは少ないですが、ダイビングでは、なぜ厳しく健康状態を問われるのでしょうか。
ダイビングでメディカルチェック(健康診断)が必要となる大きな理由は、水中で疾病発症(例:心筋梗塞、脳卒中、糖尿病での低血糖発作、てんかん発作、喘息発作)の場合に、陸上での発症より対処が難しく、危険性が高くなることにあります。つまり、陸上でのスポーツ活動と比較して、疾病を「予防」する重要性がより高いというわけです。また、自然気胸の既往など潜水適性のない疾病もあるため、潜水開始前のメディカルチェックにより適性のない旨を指摘することも、潜水事故を未然に防ぐために重要です。

【連載コラム】もっと知りたいダイビング医学 第1回
ダイバー健康診断 〜潜水を安全に楽しむために〜

ダイビング中には、地上で生活するときよりも大きな圧力(水圧)が体にかかります。また特に浮上の際にはよく注意をしておかないと、ただでさえ気圧の変化によって深刻なダメージを負ってしまいかねません。そうした危険を予防するためにも、健康診断が必要であるとされています。

また本記事では「問診による健康診断」に主眼を置いてこれまで記載をしてきましたが、2016年の日本高気圧環境・潜水医学会学術集会で開催されたレジャーダイビングを対象とした「ダイバーの健康診断」シンポジウムでは、「レジャーダイビングであっても、特に中高年の場合は、しっかりと(問診だけでない)健康診断を受けるべき(意訳)」という総括が出ているようです。潜水事故を防ぐためにも、万が一の場合は命に関わるので、事前の準備としてしっかりと健康診断を受けておくことは必要であると言えるでしょう。

本シンポジウムでの議論を通じて我が国のレジャーダイバーの健康診断・健康管理について,一定の方向性を示す事ができたと考える。しかし,解決すべき問題は多く残っている。まず,ダイバー健診を普及させるためには,利便性からやはりワンストップサービスを基本とする必要があろう。
(中略)
個々のダイバーのニーズに対応するためには,どのような潜水障害の予防になるのかの情報提供も含めた形での健診のオプションについても検討を要する。さらに,ダイバーが健診を受ける動機付け,啓蒙活動を考える必要がある。更には,健康診断を考えていくうえで潜水適性についての問題は避けて通れないことが明らかとなった。今後は,DANガイドライン改訂を含め検討していく必要がある。これらの点はDAN JAPANと連携し進めていく必要がある。各種セミナーでの啓蒙活動も必要であろう。

日本高気圧環境・潜水医学会雑誌vol.52No.2
【第51回学術総会シンポジウム:ダイバーの健康診断】
「ダイバーの健康診断」総括


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