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VR内でバーチャル同人誌即売会を開催してわかったこと

◆1行まとめ◆
バーチャルな同人誌即売会は普通に開催できました。


バーチャル同人誌即売会?

最近いろんなイベントが中止になっていってます
同人誌即売会も例に漏れず中止になったり延期になったりしていて残念。

「感染が2月から始まったなら、6月が流行のピークじゃないか?」っていう論文がpreprintながらあったりして、ゴールデンウィークに予定しているコミケも開催できるか不安なところ。

そんな中、「VR空間でバーチャルコミケ開こう!」みたいなツイートをよく見かけるようになりました。
バーチャル空間内で同人誌即売会を開けばウィルスに感染する心配もないし、なにより地方からでも参加できる、と。

そんなわけで、実際にVR空間でバーチャル同人誌即売会を開いてみた側の人として、現実の同人誌即売会との違いやメリット・デメリットについて書いてみます。

どんな同人誌即売会イベントだったのか

2020年の2月にVRC技術市という名前で、VRChat Onlyの技術同人誌の即売会をVRChat内で開催しました。

「VRC技術市」 で検索すると当日の様子がなんとなく見れるかなと。

このイベントを開いたのは私がVRChatの技術同人誌を読みたかったから。

今回はVRChatに関係する同人誌即売会なのでVRChat内で開催しました。

しかしながら、大規模なVR同人誌即売会を開くならVRChat以外のVRプラットフォームを視野にいれるべきと個人的には思っています(理由は後述)。

バーチャルな同人誌即売会のメリット

さて。では、実際にバーチャル空間内で同人誌即売会を開催してどんな利点があったのか。

私もコミケや技術書典で何度か出展してるので、その点も踏まえながら違いについて説明してきます 。

遠隔地から参加できる
わざわざ東京に来なくても自宅から会場内に足を運ぶことができます。
そしてバーチャルな空間なので、ウイルスの感染が騒がれたときでも何事もなく開催できます。

加えて、バーチャルな空間なので会場を複製でき、満員電車のようなすし詰め状態にならずにゆったりと買い物ができます。

複製っていう表現がVR SNSに慣れてない人だとピンとこないかもしれないですが、マビノギの混雑しているダンバートンの広場でも、チャンネルを変えると人の少ないダンバートンがある、みたいなのをイメージしてもらえると。


サークルブースを放置できる
コミケだと10時から16時までの長時間に渡ってブースにいる必要があります。
もちろん休憩時間を取ってブースから離れることもできますが、その時間は同人誌を買ってもらえないということになってしまいます。

バーチャルの即売会だと、見本誌だけ置いておいて「実際の購入はBOOTHやメロンブックスで」と言うことができます。
サークルブースを放置していても来場者が勝手に見本誌を見てそのままBOOTHに同人誌を買いに行ってくれるわけです。

ブースを放置しても問題ないのって非常に楽で、同じジャンルの同人誌をゆっくり見れますし、なんなら当日に別の予定を入れてしまっても問題ないわけです。
「当日に仕事が入るかも知れないから・・・」と断念しなくても良い。素晴らしいですね。

会場代がガクンと減る
バーチャルなのでサーバ代がかかることはありますが、数百万オーダーでかかるリアルイベントの会場代と比べると微々たるもの。
全ジャンルのブースが1週間ずっと並んでる、といったイベントも可能です。

運営人数を減らせる
警備員や誘導スタッフがいなくてもスムーズにイベントが進行します。
もちろんスタッフが確保できるに越したことはないですが、バーチャルな即売会だと自動化できる範囲もリアルと比べて多いですし、VRC技術市では運営ひとりでも十分回せました。

バーチャルな同人誌即売会のデメリット

これだけメリットあるなら同人誌即売会は全部バーチャルですればいいのでは? とか思ってしまいそうになりますが、もちろんデメリットもあります。

来場者から直接感想をもらいづらい
「前回の本が良かったので、新刊を買いに来ました!」というのが聞けなくなります。

あと、呼び込みもやりにくい。
ブースをチラチラと見てる通行者に「ちょっと見ていきませんか?」と声をかけて買ってもらうというのも難しい。

ただし、できなくはないです。
実際にVRC技術市のときは人の多い会場で自分のブース近くに立って宣伝したり解説したりしている人もいました。

そして、「直接感想が言えない」と買った人も思っていた様子。
リアルイベントよりも感想ツイートを見かけることが多かった気がします。
呼び込みや感想は工夫次第でなんとか・・・といったところ。


バーチャルな会場が必要
会場を数百万で借りる代わりに、バーチャルな会場を作る必要があります。
UnityやBlenderに多少慣れていれば、会場を作ってVRプラットフォームに設置する、ということは十分にできます。

ただし会場のクオリティで注目度が変わって来場者数に跳ねるフシがあるため、できるならVRのイベント会場を作ったことのある人にお願いするかアドバイスをもらいたいところ。

同人誌を読むためのシステムが必要
バーチャル空間だと、ポンと置いた見本誌を見てもらうために専用のシステムが必要になります。

VRC技術市では、Google FirebaseのCloudStorageにVRChatのVRC_Panoramaというコンポーネントを組み合わせて使っていました。
このVRC_Panoramaというコンポーネントを本来とは別の用途で利用しているので、使用しているPCの相性によっては動作が重くなったり会場に入場できないということも起きています。

また、見本誌を読むためのUIについても考える必要があります。
今回は本を読むためのUIとしてVRChat内で一番よく見かけたアセットを持ってきましたが、操作がわからないというコメントもありました。

VRで本を読むギミックを見たことのない人や、そもそもVRに不慣れな人でも理解できるシグニファイアを考える必要がありそうです。

イベントに入るためにPCやアバターが必要
VR SNSへ入るには、そこそこのスペックを持ったPCが必要になります。

実はVR機器がなくても PCだけで参加できるVR SNSも多いのですが、その場合でもある程度のスペックが必要なので数年前のCeleron PCでは参加が厳しいです。
またアバターは必須ではありませんが、あったほうがコミュニケーションが取りやすいのは確か。

今回はVRChatに住む人向けのイベントとしてVRChat内で開催したので、PCのスペックやアバターの問題は自動的に解決したのですが、既存の即売会イベントを開催する場合はこの2つも問題になってくるかと思います。

VRの解像度では本が読みにくい
こちらもスペックの問題。
せっかくVR機器を買っても、数年前のVR機器(無印VIVEなど)やスタンドアロン型のVR機器(OculusQuest)だと解像度が低く見本誌を快適には読めません。
Valve Indexという現状最新のVR機器なら十分読めますが、参加者にそのスペックを求めるのも酷。

「これはあくまで見本誌なので、BOOTHで本を購入して、読むのに適したタブレット機器でゆっくり読んでね」という割り切りが必要かなと思っています。


同人誌即売会をバーチャルで開くには

さて、同人誌即売会をバーチャルで開くにあたってのメリット・デメリットを見てきました。
会場やスタッフの確保といったお金のかかる部分を大きく減らせる反面、バーチャル会場の作成や見本誌を確認するシステムの構築といった別の問題がでてきます。

もちろんUnityとJavaScriptを使えれば十分実現できる範囲ですし、VRC技術市は極少人数でシステム構築しています。

具体的なことは同人誌としてまとめたので、こちらを読んでいただければ。
いまは有料になってますが数ヶ月後に無料版を追加予定なので、興味があれば読んでみてください。(2020/03/28追記:無料版を公開しました)


また、VRC技術市というバーチャル同人誌即売会はスムーズに開催できましたが、それは40ブース・来場回数が約5,000回という比較的小規模なイベントだったからでは?という説もあります。

より大規模なVR同人誌即売会を開くなら、より洗練したシステムを構築する必要がありますし、VRに慣れていない人にも楽しんでもらうならVRChatよりも導入しやすいVRプラットフォームを探すべきでは?とも思えます。

個人的な意見としては、本格的に開きたいなら大規模なイベントをこなしているclusterや、ニコニコと紐付いてて導入しやすいバーチャルキャストあたりに企画を持ち込んで、同人誌を読むためのコンポーネントと即売会用の会場を作ってもらうのが最強に思えます。

まとめ

小規模なバーチャル同人誌即売会なら十分開催できるようになってきました。もちろん、バーチャルならではのメリット・デメリットもあり、大規模になれば考えることも増えてきます。

バーチャル同人誌即売会は、未来の形ではなく、既に選択肢の一つとなっています。
長所短所を考慮しつつ、イベントに合った開催方法を模索してみてください。

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