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157:ヴァルールに基づく膨大な情報状態の組み合わせ

YOFのヴァルールはピクセルを基点として色彩を捉えていき,ひとつのフレーム内の二次元平面の色彩の価値を算出したものであり,そこには色の物質的側面は排除されている.色はピクセルの固有値としてのRGBの値とXYの位置座標となっていく.このときに失われているものは何だろうかを考えてみたい.

数値になっているので,色そのものが失われていると言えるだろう.ピクセルが色を生み出す情報だけがある.情報だけになった色は,それが反射したモノの表面が示した「色」を失っている.それはそのモノに反射して,空間に拡散した光を失っていることであり,さらに言えば,空間に充満していた光そのものを失っていることを意味する.モノも光もなくなり,それらの情報だけがある.もちろん,この情報はそれらモノや光から抽出されたのだから,この情報のもとでピクセルを機能させれば,ピクセルは適正な「光」を放ち,モノや光が充満した空間を構成するひとつの光点となる.

YOFのヴァルールのアルゴリズムは,色を失い,それらの色をつくり出しているモノや光も失った情報をもとに,画面全体と個々のピクセルとの関係を計算していく.このとき,YOFがヴァルールを計算するために用いた二次元画像のピクセルの状態は絶対的なものではなくなる.なぜなら,二次元画像を「絶対的」なものにしていたモノや光との結びつきではなく,モノや光がつくる状態の微細な差異を記録した情報が扱われているからである.元の二次元画像は色情報と位置情報とがつくりだす膨大な組み合わせの一つに過ぎなくなる.画面全体が元の二次元画像と同じヴァルールを持つようなピクセルの情報だけに扱う情報を限定してみても,その組み合わせは膨大である.

二次元画像を扱う場合は情報の組み合わせは膨大であるかもしれないが,情報を物理的に実現するのは,元の二次元画像も構成していたピクセルである.計算されたヴァルールに基づいた色情報と位置情報によって,ピクセルをコントロールすることで情報は具現化していく.情報には「光」が与えられる.そこには元の二次元画像をつくり出したモノとそこから反射した光はないけれど,それらがつくり出した情報の状態がつくり出したヴァルールに基づいて計算された別の情報の状態を具現化する光はある.

《2D Painting》ではどうなるだろうか.このシリーズでは,情報を具現化するのがピクセルではなくなっている.YOFは,これまでもヴァルールに基づいた二次元画像を具現化するときにキャンバスなどの二次元平面を用いてきた.ここでも情報を具現化するのがピクセルではなくなっているが,平面をグリッドで区切ることでピクセルの集積で示す情報を転写できたと考えられる.しかし,《2D Painting》では三次元空間にピクセルに基づいたヴァルールによって生じた情報状態を転写しなけばならない.このときに,情報として抽出された際に失われたモノとその空間を照らす光とを再度導入することが求められた.YOFはモノだけではなく,モノを照らす光=照明も導入することで,ヴァルールに基づく膨大な情報状態の組み合わせの一端を三次元空間にコピーすることに成功していると考えられる.

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