スクリーンショット_2018-05-22_16

007:一つののっぺりとした基準平面とその奥と手前

授業で取り上げるために,Joe Hamiltonの《Regular Division[規則分割]》(2014)や《Merge Nodes[融合する結節点] 》(2016)を,ずっと眺めていた.Hamiltonの映像作品は,ずっと興味深いと思っていたのだけれど,それがなぜなのかイマイチ掴めないままだった.(タイトル画像は《Indirect Flights (Website)[経由便]》(2015)のスクリーショット)

彼の映像は遠近法的に映像を見せないで,どこかのっぺりとした平面に見える.映像そのものは遠近法的に見えるのだけれど,その重ね方やトランジションの仕方で,ディスプレイのなかで分割された映像がのっぺりとした平面となっている感じがする.ブラックのコラージュのようにステンシルが強制的に知覚させる平面性に近いものを,Hamiltonが重ねていく映像には感じる.

映像で「穴」やグリッドになっている「隙間」の向こうがに異なる映像が映されているとと,こちらと向こうとが連続していないことから,穴とグリッドを支持している平面が,基準のサーフェイスとなって,こちらと向こうとを分けている感じがする.遠近法的な空間の連続ではなく,ウィンドウの重なりやスマートフォンのホーム画面のような平面の重なりが,Hamiltonの映像から感じられる.

《Indirect Flights (Website)[経由便]》が模しているGoogle Mapをずっとスクロールしていると,延々とスクロールされる地表面を見ながら,触れながら,何をスクロールしているのだろうか,と思うときがある.地面も屋根も関係なく,ある一つのサーフェイスをスクロールしているような感じ.

ウィンドウの体験の蓄積から出てきた遠近法ではない平面の捉え方があって,その一つ,基準として一つののっぺりとした平面=サーフェイスがあって,とその奥と手前に分割されるということがあるのではないだろうか.そこでは空間は連続していない.平面の重なりとその動きによって,はじめて「空間」が生じると言った方がいいのかもしれない.映像がある形に区切られた瞬間,映像がのっぺりとした平面になって,連続した空間が消失するけれども,重なる平面の動きによって,あたらしい「空間」が生まれる.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?