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話題の時代小説、白蔵盈太『実は、拙者は。』をミステリ的な視点で読んでみた

ご無沙汰しております。
このnoteを「本のネタ」を書くところだと自分でハードルを上げていたためなかなか書けなかったのですが、単純に本の感想でもいいかな、と思い始めたので、これからそういった記事も書いていきますね。

今売れている話題の時代小説文庫がありまして、
白蔵盈太さんの『実は、拙者は。』(双葉文庫)です。
2024年5月の新刊ですが、重版に重版を重ねているらしくて、確かによく売れてます。

で、この本、そのタイトルや粗筋からして、これミステリでは? と思ってたので、実際に読んでみよう、と買ってみました。

以前から私のことをご存じの方ならお分かりかと思いますが、私は時代小説が苦手で、どんなに傑作と言われている小説でもまるで読めないんですよ。もうそういうことなので仕方がないのですが、『実は、拙者は。』は読めそうな気がしてたんですね。
なんせ、あの八重洲のうっちーこと、八重洲ブックセンターの内田俊明さんがオビで


「小説は3000冊以上読んできましたが、
こんな物語は初めて読みました!
面白い小説を読みたいなら絶対買うべき!」

と書かれているくらいです。
うっちーがこう言われるんなら、間違いないっしょ!
というわけで読んでみたわけ。

主人公は「棒手振り」(天秤棒に青菜を積んで町を売り歩く商人)の八五郎。巷で噂の、金持ちの侍の行く手を阻んでは斬っていく「鳴かせの一柳斎」が旗本を襲う現場に出くわしたが、あれはどう見ても、八五郎の隣に住む浪人の雲井源次郎では? あの源五郎があの「鳴かせの一柳斎」とは!
と、そんな八五郎も実は……だし、八五郎が仄かに恋心を持つ長屋の娘・浜乃がさらわれるのを助けに行こうとするのだが、実は浜乃も……な展開もあったり、登場する人たちの「裏の顔」が次々に明かされていく。ええと、結局なにがどういうこと? みたいな話になったり。

実はこの『実は、拙者は。』を読む前に、想像していた作品があって、
これ、チェスタトンの『木曜の男』では?
と思ってたんです。無政府主義者の集まりにスパイとして潜入し、「木曜」のコードネームとしてメンバー入りするが、他の曜日のメンバーもみんな……で、結局これどういうことだ? と親玉「日曜」を問い詰めに行く、というような話(ざっくりとした紹介です)で、こんな感じの話になるのでは? と想像してました。
または、見た目と実際の立場がみんな逆だったことが次々に明らかになる、泡坂妻夫さんの某長編(あえて秘す)みたいな感じ? とも思ってました。
まあ、どちらとも違う展開でしたが、そんなミステリて的な話ではないか、と予想してた部分はその通りで、充分に楽しめましたね。面白かったです。

最後の最後に、あっという「大オチ」も待ち受けてます(これも、実は……の部分)ので、最後まで読み逃しなく。


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