11/17 レグルスからの贈り物

「今夜から明日にかけて、しし座流星群がピークを迎えます。」

ウェブニュースのトレンド欄から、アナウンサーの明るい声が響いた。今日は2021年11月17日、最高気温18度。例年よりも秋から冬にかけての冷え込み方がゆるやかで、暖かい。地元の岩手でも、珍しいことにまだ初雪が降っていない。空は冷たい空気のほうが澄んで見えるから、今回のしし座流星群はぼやけて見えるのかな。

明日私は25歳の誕生日を迎える。特に予定もなく、仕事をして引越し準備をして、スーパーで買ったお惣菜を食べて1日を終えるつもりだ。25歳の誕生日ってなんだか勝手に節目のような感じがしているけど、今年の誕生日を警戒して11ヶ月間ずっと25歳の気持ちでいたから、新鮮味はない。24歳が一番地味な年だったな。もったいないことをした。

恋人はいるけど、今日は職場から直帰すると言っていたし、会う約束も何もしていない。少し寂しい気がするけど、そういう人だとわかってて復縁したのだから仕方ない。「誕生日 一緒に過ごしてくれない」と検索をかけると、ヤフー知恵袋で「誕生日に誰かになにかをしてもらえることを期待するのは子供だ。」とのベストアンサーがついていた。そのとおりだと思う。わかってはいるけれど、大人になりきれない自分がいて、摩擦で心がヒリヒリする。せめて自分で目一杯、自分を祝ってあげよう。流星群を見るついでにコンビニにケーキでも買いに行こう。

私は特に努力をすることもなく、大きな壁にぶつかることもなく、恵まれた環境で、周りの人に大事にされて育ってきた。25歳を迎えることで20代後半になり、「若い女の子」というメッキが剥がれだす。今までは社会人初心者として過ごすことができていたけど、これからはもっとしっかり大人としての自覚と責任を持って行動しなきゃいけないなと思う。いつまでもインターン生気分ではいられない。

こないだ行われた選挙で、生まれて初めての投票をした。今年の夏は初めて恋人以外とのセックスを経験した。つみたてNISAを始めた。今週末には初めての引っ越しをする。そして初めての同棲をする。「25歳は節目だから」との思いから、無意識に大人の階段を登ろうとしているんだろうか。大人になろうと足掻いているんだろうか。私は立派な大人になれるんだろうか。

子供の頃思い描いていた大人と、今の自分は程遠すぎて笑ってしまう。少し前の私はそんな事実に対して、「子供のころの自分に謝りたい。」と思っていた。だけど今は、割と自由に生きているし、大人もそんなに悪くないよ。と言いたい。やっぱり本質は小学生の頃の私と変わりなくて、自分を大きく変えることなく25歳まで生きてこられたのって、幸せなことだなと思う。

私の中の若さのイメージは、妖精の粉だ。キラキラとした妖精の粉のようなものを生まれたときに体に擦り込まれて、歳を重ねるたびにその粉が落ちていっているような感覚。想像力だったり、純粋さだったり、素直さだったり、そういったものがキラキラと体にまとわりついている。自分の体からそれが落ちていってしまうのは、寂しいし、もったいない気もするし、頼りない気がしてしまうけど、きっと経年変化してロウが落ちたブライドルレザーみたいに、付着物が落ちきってからのほうが安定して輝き続けるんだろうな。不安定な粉のきらめきに縋るのではなく、自分を磨いてどっしりとした艶のある人間になりたい。

こんなとりとめのない思いを文字に起こしていたら、誕生日まで残りわずかの時間しかない。祝ってくれる相手はいないけど、かわりに流れ星が祝福してくれる。しし座流星群がバースデープレゼントだなんて、そんな神様みたいに傲慢な考えも誕生日なら許されるかな。

着替えてケーキを買いに行こう。

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