西武・杉山遥希、「高卒新人プロ初登板初先発初勝利」ならず

埼玉西武ライオンズの高卒新人左腕投手、杉山遥希が、本拠地・ベルーナドームでプロ一軍デビューを果たした。

杉山は東京都出身で、小学生でジャイアンツジュニアチームに選抜されると、神奈川・横浜高校に進学。
1年で夏の神奈川県大会決勝・横浜創学館戦に先発、3年ぶりの夏の甲子園に導く投球を見せ、甲子園ではエースナンバー「1」を背負って2回戦・智弁学園戦に先発登板したが敗戦投手に。
2年夏にも甲子園に出場、初戦・三重戦で2失点に抑え完投勝利を挙げたが、2回戦・聖光学院戦で完投負けで敗退。
3年夏は神奈川県大会決勝、慶應義塾戦で土壇場の9回に逆転本塁打を許して敗れ、3年連続の夏の甲子園進出はならなかった。

2023年ドラフト会議で西武が3位指名を受け入団すると、かつてのエース左腕、工藤公康も背負った、背番号「47」を着けた。

杉山は今季2024年二軍では8試合に登板、2勝3敗、防御率4.03という成績だが、渡邊勇太朗の故障による登録抹消を受け、急遽、一軍昇格、即先発登板デビューが決まった。

西武の高卒新人投手では、杉山の高校の先輩にもあたる松坂大輔が1999年にプロ初登板・初先発で、初勝利を挙げる「鮮烈な」デビューを飾っている。

杉山は9月12日、本拠地・ベルーナドームでの対東北楽天ゴールデンイーグルス戦に、初登板・初先発のマウンドに上がった。

まずは初回、楽天の1番・小郷に対して投じた初球は142キロの直球でストライク。
小郷をセカンドゴロ、2番・小深田をライトフライに打ち取り、2死としたが、続く3番・辰己にはチェンジアップがすっぽ抜け、背中への死球。
さらに4番・浅村の打席では辰己に二盗を許し、2死二塁のピンチを招いてしまう。
浅村を投ゴロに打ち取ったものの、打球を処理した杉山が一塁へ悪送球、楽天に先制点を献上した。さらに、2死一塁となり、5番・安田に対してカウント2-2からの6球目に暴投、2死二塁とピンチを招いたが、最後は空振り三振に斬ってとった。

続く2回、杉山は8番の村林に初ヒットを許したが、無失点に抑え、さらに3回は三者凡退と波に乗ってきたものの、4回、浅村、安田に連打を浴び、無死一、二塁とされると、6番・伊藤裕に三塁側へのバントを決められたが、打球を処理した杉山が再び一塁に悪送球、2点目を奪われた。
さらに、無死二、三塁からは7番・渡辺佳にレフト前へのタイムリー安打を許すと、続く村林にもライト前にタイムリー安打を浴び4失点。
ここで渡辺久信監督代行がベンチを出て主審に交代を告げ、杉山はこの回、1死も取れず、マウンドを降りた。

杉山のプロ一軍デビュー戦は3回0/3を投げて、被安打5、2奪三振、無四球(1死球)、6失点ながら自責点は0。
チームは3対7で敗れ、杉山は敗戦投手となった。
西武の新人投手では、1981年の小野和幸、1999年の松坂大輔以来、25年ぶり3人目となる「高卒新人のプロ初登板・初先発・初勝利」はならなかった。

NPBでの高卒新人のプロ初登板・初先発・初勝利

NPBでは1965年のドラフト制度導入以降、高卒新人投手がプロ初登板・初先発で初勝利を挙げたのはわずか19人しかいない。


西武では前身チームを含め、過去8人の高卒新人投手がプロ一軍初登板を初先発で臨んでいる。

稲尾和久、東尾修、工藤公康、渡辺久信らは、プロ初登板はリリーフ登板であった。


最初は西鉄ライオンズ時代の1952年、高卒新人左腕の阿部長久が8月12日、本拠地・平和台球場での対阪急ブレーブス戦で、プロ初登板・初先発のマウンドを踏んでいるが、3回途中で2失点で降板しており、勝ち負けはついていない。

しかも、阿部はこの後、一軍で登板がないまま、オフに退団している。

1965年には、高卒新人・池永正明が開幕5試合目の4月15日、本拠地・平和台球場での対南海ホークス戦でプロ初登板・初先発のマウンドに上がったが、1回を無失点に抑えただけで降板しており、勝ち負けはついていない。
しかし、池永はこの後、快刀乱麻の活躍で、新人ながら20勝を挙げ、新人王を獲得している。

西武ライオンズとなった後は、1981年のレギュラーシーズン最終戦、西武球場での対ロッテオリオンズ戦で、高卒新人右腕の小野和幸(ドラフト外)がプロ初登板・初先発を果たし、5回まで投げ切ると3失点に抑え、味方の援護もあり、プロ初勝利を挙げた。

記憶に新しいところでは、1999年、前年ドラフト1位の松坂大輔が敵地・東京ドームでの対日本ハムファイタイーズ戦でプロ初登板・初先発デビュー。
1回に、日本ハムの片岡に155キロのストレートを投じて空振り三振を奪ったシーンは何度も何度も映像で再生されている。
松坂は6回途中までノーヒットノーランの快投を見せ、小笠原道大にプロ初の被弾を浴びたものの、8回まで投げ、2失点で降板、プロ初勝利を挙げた。
松坂大輔はリーグ3位となる防御率2.60、16勝5敗でパ・リーグの最多勝、新人王を獲得している。

2005年には、松坂大輔の高校の後輩にあたる涌井秀章も前年ドラフト1位の期待を背負って、プロ初登板・初先発デビューを果たしたものの、3回途中で7失点KO、2015年には前年、前橋育英で夏の甲子園を制した優勝投手でドラフト1位の高橋光成が本拠地でデビューしたが、3回4失点で敗戦投手となった。

杉山は、チームの高卒新人左腕としては1954年の北原啓以来、70年ぶりに初登板・初先発のマウンドであったが、プロ初勝利を掴むことができなかった。

西武は今季、チーム成績は最下位と低迷している。
だが、今夜、ベルーナドームで観衆14,657人を集めた杉山のデビュー登板はライオンズファンへの希望となっただろう。





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