セ・リーグ、3・4月の戦いを数字で振り返る

NPBの2022年のシーズンも早いもので、1か月強が経過した。
5月1日終了時点、11カード終了時点での成績を様々な数字で振り返ってみよう。
各チームとの対戦が少なくとも2廻りしている。


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・黄色いハイライト=リーグ最多・最高
・オレンジのハイライト=リーグ最少・最低

今季のセ・リーグはとにかく、連勝・連敗が多い。

阪神が開幕9連敗を喫して話題をさらったが、他のチームもやたらと連勝・連敗が多い。
同一カード3連勝・3連敗というのが頻発した。
勝率首位の巨人が6連勝を2度、記録しているが、4月下旬から4連敗。
開幕6連勝と最高のスタートを切った広島も3連敗と4連敗を喫している。

今季も開幕から各チームで新型コロナウイルスの感染や濃厚接触による抹消が相次いだ。
特に先発投手の抹消はチームの勝敗に大きな影響を与えたといえる。

パ・リーグでも「投高打低」が指摘されているが、セ・リーグも規定打席到達者の中で打率3割を超えているのは大島洋平(中日)、吉川尚輝(巨人)、牧秀悟(DeNA)、西川龍馬(広島)の4人だけである。
毎年、春先は「投高打低」となるのが普通だが、今季はやや極端な傾向となっている。


6位 阪神タイガース 31試合 10勝20敗1分け

今季の阪神はセ・リーグ歴代ワーストとなる開幕9連敗と大きく躓いた。
その後も、5連敗、4連敗と勢いは取り戻せず、開幕25試合でチーム歴代最速となる20敗に到達、借金は最大16となった。
開幕投手の予定だった青柳晃洋は新型コロナウイルスに感染、代わって開幕投手を務めた藤浪晋太郎、先発の柱である伊藤将司も新型コロナウイルスの感染で離脱を余儀なくされた。

20敗のうち、逆転負けが10もあり、さらに先制したときの勝率は.385とリーグで断トツの最下位。得失点差がマイナス11で借金10というのは競り負けている証拠で、1点差の敗戦が
10試合、0-1で敗れた試合も4試合あった。

しかし、エースの青柳晃洋が4月15日に復帰し、3連勝を挙げた。
チーム自体も4月後半、6連勝と盛り返した。
開幕前、課題とされた守備は、失策数でいえばリーグでもっとも少ない。
開幕当初、機動力を使えていなかったが、盗塁数はリーグトップの19。
中継ぎ投手陣も整備されつつあり、あとは他チーム同様、打線が上向くかどうかといえる。

5位 横浜DeNAベイスターズ 25試合 10勝15敗

DeNAは開幕3連敗から4連勝とリカバリーしたものの、新型コロナウイルスの感染者が相次ぎ、その影響で計4試合が中止になるほど、甚大な影響を受けた。
25試合で3連敗を4度も記録している。
チームの勢いが安定しないのは、やはり投手力と打力の両方に原因がある。

チーム防御率はリーグ唯一の4点台となる4.12、特に先発投手に限るとリーグ最低の4.37と群を抜いて悪い。
先発投手の平均投球回数は5.44とリーグワーストタイ。
先発投手が早いイニングで捕まる、リリーフの登板機会が増える、疲労が蓄積して、ますます投手力が悪化する、という悪循環に陥りつつある。

また、昨季はリーグトップクラスだった攻撃力は、開幕から4番に座る牧秀悟は新型コロナウイルスで2週間も離脱しながら、リーグトップクラスの打率.328 (3位)とOPS1.048(1位)を記録する一方で、開幕早々にタイラー・オースティン、続いて、宮崎敏郎を故障で欠き、得点圏打率はリーグ最低の.224。
得失点差はマイナス27と、最下位の阪神(マイナス11)よりも悪い。
試合展開も先制を許した試合は4勝10敗、勝率.286とリーグ最低の勝率である。

課題はまず先発投手陣の整備といえよう。
エース今永昇太がGW中に先発に復帰予定であり、立て直しに期待。

4位 中日ドラゴンズ 27試合 14勝13敗

立浪和義・新監督率いる中日は、開幕27試合で14勝13敗と貯金1。
チーム打率はリーグトップとなる.253をマークしているが、本塁打数は17本と勝率首位・巨人の半分程度、得点圏打率は.229と決定力不足で、得点数はリーグ5位と得点に繋がっていない。
先発陣は、大野雄大と柳裕也のダブルエースを抱えるが、先発陣の防御率も3.41と特に突出してよいわけではない。

しかしながら、救援陣の防御率はリーグトップのヤクルトに次ぐ2.77で、安定している。
先制時は10勝4敗、勝率.714とヤクルトに次いで、「先行逃げ切り」で勝利を収めている。

他にも攻撃面では盗塁成功率は91.7%(盗塁企図12回で失敗1回)、併殺打もリーグで最も少ない11。
長い目で見ると、緻密な攻撃が投手力と噛み合えば効果的に勝利をもたらし、順位をもっと上げてくる可能性は高い。

3位 広島カープ 30試合 16勝13敗1分け

広島は昨季まで主砲だった鈴木誠也がポスティングでMLB移籍したことで、開幕前は、評論家からも最下位予想が多かった。
だが、チーム最長タイとなる開幕6連勝で下馬評を覆した。
好調の要因は、先発投手陣の安定ぶりである。
開幕ローテーション6人のみで現在まで先発ローテーションを廻せているのは広島だけである。
開幕投手の大瀬良大地が無傷の4勝を挙げるなど、先発投手のクオリティスタートはリーグトップの22試合で、防御率も2.67と安定している。
これによって、先制点を挙げた試合は10勝5敗、勝率.667である。
しかしながら、救援陣の防御率は4.29とリーグ最低であり、ここに課題がある。
攻撃陣は、本塁打数はリーグ最低の10本と、3試合に1本ペースで、鈴木誠也が抜けた穴を感じさせるが、チーム打率.251も得点数101も勝率首位・巨人に次いでリーグ2位である。

盗塁数はリーグ最低の7つで、機動力が使えているとも言い難いが、得点圏打率がリーグ唯一の3割超えとなる.306と群を抜いている。
特に西川龍馬が.444、坂倉奨吾が.400、菊池涼介も.360とリーグトップ5に3人が占めている。
課題は明白で、9回を投げる守護神・栗林良吏に繋ぐまでの救援陣の整備と、長打力である。

2位 東京ヤクルトスワローズ 27試合 15勝12敗

昨季の王者・ヤクルトは開幕から、一進一退の攻防が続いた。
昨季、日本一を牽引した正捕手・中村悠平を開幕から欠いたものの、開幕戦・大逆転から3連勝と幸先いいスタートを切ったものの、そこから本拠地開幕戦から4連敗と開幕ダッシュは帳消しとなった。
昨季勝ち頭の奥川恭伸は今季最初の先発登板後に登録抹消、開幕投手の小川泰弘も1か月、勝ち星がないなど、先発陣の防御率は3.80、リーグ5位と苦しんだが、それを救援陣がカバーした。
救援陣の防御率は2.55とリーグ断トツ。
2年連続最優秀中継ぎ投手である清水昇を欠きながら、梅野雄吾が復活、さらに田口麗斗とスコット・マクガフは開幕から無失点を続けている。
先制点を挙げた試合は11勝3敗、勝率.786と首位・巨人をも凌ぐ。

攻撃陣は4番の村上宗隆以外はまだ低調で、チーム打率は.229はリーグ最低。
しかし、昨季の王者らしく、試合巧者ぶりが目立ってきた。
得失点差がマイナス4にも関わらず、貯金3は大健闘といえる。

1位 読売ジャイアンツ 32試合 20勝12敗

巨人は開幕1か月で、6連勝を2度、マークするなど首位に位置する。
開幕時は、クローザーに新人の(翁田)大勢(2021年ドラフト1位)、先発ローテーションに一軍経験の無い、山崎伊織(2020年同1位)、赤星優志(2021年同3位)、堀田賢慎(2019年同1位)の3人を入れざるを得ないほど、おおいに不安があった。
だが、蓋を開けてみれば、その3人に加え、中継ぎの直江大輔(2018年同3位)、平内龍太(2020年同1位)、戸田懐生(2020年育成7位)、クローザーの大勢の6人がプロ初勝利を挙げた。
C.C.メルセデスが開幕5戦で無傷の4勝、新戦力のマット・シューメイカーも防御率0点台と安定している。

また、クローザーの大勢は開幕戦で初登板初セーブを挙げたのを皮切りに、12試合のセーブ機会で失敗なしと、新人離れした成績を収めた。
攻撃陣も、4番の岡本和真がリーグ最速で10号本塁打に到達するなど、リーグトップの36本塁打、137得点をマークしている。

しかしながら、巨人にも不安材料がある。
開幕投手の菅野智之が4月29日の先発登板後に登録抹消された。
また、チームを牽引してきた坂本勇人(登録抹消中)がリーグ最多となる5失策を記録するなど、失策数がリーグトップの19個もある。
そのせいか、失点数はリーグワーストである。
巨人の救援陣の防御率は3.64と、最下位・阪神の救援陣の防御率3.63とほぼ変わらない。
20勝のうち、逆転勝ちが10度もある一方、12敗のうち逆転負けも8度もある。
結果的に32試合で貯金8を稼いだものの、クローザーの大勢頼みという不安定な戦いが続いたのである。

課題は経験のある投手陣の復活と、ディフェンスの強化ということになる。
左腕の高橋優貴が先発で戻ってきたのは不幸中の幸いといえる。

いかがだろうか?
開幕前に、「セ・リーグの戦力は均衡している」と書いたが、「いまのセ・リーグはまだ混沌としている」と言ったほうが正しいかもしれない。
開幕前に想定していたよりも、新型コロナウイルスの影響は予想以上に大きかったと思う。

5月が終わる頃、交流戦が始まる頃に、どのような順位になっているだろうか。

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