2024年セ・パ交流戦を振り返る<セ・リーグ編>

NPBの2024年シーズンの「日本生命セ・パ交流戦」18試合が終了した。

歴史的な「投高打低」傾向で迎えた今季の交流戦であったが、交流戦でもその傾向は変わらなかったといえよう。
結果は、パシフィック・リーグの53勝、セントラル・リーグの52勝、3引分け。
優勝は、東北楽天ゴールデンイーグルスで、球団創設20年目にして初の交流戦優勝となった。

交流戦は、レギュラーシーズン公式戦143試合のうち、たった18試合であるが、軽視することもできない。
この間に、リーグ内の順位やゲーム差が大きく変わってしまうこともあるからだ。
セ・リーグはDH制を味方につけ、好成績につなげたチームもある。

まずは、セントラル・リーグの各チームの戦いぶりを振り返ってみよう。


阪神タイガース

開幕カードとなった日本ハムで2連敗するなど、なんと、西武戦以外の5カードで負け越し。
特にホーム・甲子園で楽天に3タテを食らったのが大きかった。
7勝11敗と借金4で、セ・リーグ首位も明け渡してしまった。
得失点差はマイナス14と両リーグでワースト4位であった。


打者では高卒3年目の外野手・前川右京が打率、本塁打、打点でチーム3冠。
大山悠輔、佐藤輝明らは登録抹消、ファームで再調整という苦しい事情となった。そのあおりで、近本光司を4番に据えるなど苦心したが、長打力不足に悩み、ホームラン4本と両リーグワーストタイだった。

先発投手陣は才木浩人が対西武戦であわやノーヒットノーランかという好投を含む3戦3勝で、わずか1失点と絶対的な安定感を誇った。
西勇輝も、古巣・オリックス戦で完封勝利を挙げるなど、防御率1.89。
大竹耕太郎は古巣・ソフトバンク戦での登板機会はなく、12球団から勝利はお預けとなり、かつ今季も交流戦で勝利を挙げることはできなかった。

救援陣は、桐敷拓馬が防御率1.17、5ホールド、漆原大晟が防御率1.69と好投が光った。

広島カープ

10勝8敗で貯金2をつくった。
ソフトバンクに3タテを食らった以外は、5チームから勝ち越した。
6月7日、セ・リーグの首位に再浮上した。
「交流戦に弱いカープ」というイメージを払拭した。

秋山翔吾は4月27日から打順1番に固定されているが、交流戦でも対日本ハム戦で今季2号となる先頭打者本塁打を放つなど好調。
小園海斗は両リーグトップタイの5盗塁を決めるなど、走塁でも貢献。
末包昇大も交流戦では3番・4番を打ち、打率は低いが、チームトップタイの2本塁打、7打点をマーク。

カープ投手陣は交流戦、両リーグ最少の42失点、両リーグトップの防御率1.85を誇る投手陣の活躍が光った。
先発投手陣は大瀬良大地が対千葉ロッテ戦でのノーヒットノーラン達成を含み、23イニング連続無失点と好投。

九里亜蓮もチーム1万試合目となった対西武戦で今季初完封勝利を挙げるなど安定。森下暢仁も最後の最後で対西武戦で1イニング5失点したが、それまでは19イニング無失点であった。
クローザーの栗林良吏も7試合に登板し、7イニング連続無失点、5セーブ・2ホールドを挙げた。

横浜DeNAベイスターズ

日本ハムには勝ち越したものの、楽天、オリックス、ソフトバンクに負け越したが、後半、ロッテ、西武に3タテをくらわすなど、7連勝でフィニッシュで、11勝7敗と勝ち越し。借金は一時最大「6」から貯金1と、交流戦でV字回復を見せた。


ベイスターズ打線は両リーグトップの16本塁打。
特にタイラ―・オースティンが絶好調で、両リーグトップの5本塁打、両リーグ2位のOPS1.086、両リーグ3位タイの13打点を挙げた。
宮崎敏郎が6月6日以降、離脱したが、後半のロッテ戦から度会隆輝が再昇格すると、6試合連続打点を挙げるなど、7連勝に貢献した。

そして、ベイスターズこそが、交流戦のDH制をうまく活用したチームである。DHが使用できたビジター9試合で、なんと8勝1敗。
DHに入った選手の打撃成績は、打率.289、5本塁打、OPS1.105はリーグトップである。


ベイスターズ先発投手陣は東克樹が交流戦でも力を発揮、西武戦での完封勝利の1勝のみだが、開幕から5連勝を続けている。
新外国人投手のアンソニー・ケイアンドレ・ジャクソンも防御率2点台前半と安定。
大卒新人の石田裕太郎がデビューから2戦2勝、14イニングで1失点と救世主的な存在となった。
リリーフの坂本裕哉は防御率1.13、中川虎大も防御率0.93と光った。

読売ジャイアンツ

8勝9敗、1引分。
ソフトバンク、西武、ロッテ、日本ハムには勝ち越したが、後半、オリックスと楽天に3タテを食らい、6連敗するなど波に乗れなかった。特に1点差ゲームで4敗するなど競り負けが痛かった。


ジャイアンツ攻撃陣はエリエ・ヘルナンデス丸佳浩、吉川直輝が好調を維持。
特に交流戦初戦のソフトバンク戦でデビューしたヘルナンデスが打率.342、3本塁打、10打点と下馬評通りの力を発揮。

逆に岡本和真は3本塁打でリーグトップタイの14打点をたたき出したが、打率.221と低迷。坂本勇人も打率.189、長打は本塁打1本と二塁打1本だけと寂しい成績だった。
立岡宗一郎が左膝前十字靭帯損傷から復帰、5月21日に2年ぶりに支配下登録され、5月31日、ベルーナドームでの西武戦で722日ぶりにタイムリー安打を放つなど、西武戦・ロッテ戦で2試合にかけて7打席連続安打と復活をアピールした。


ジャイアンツ先発投手陣は戸郷翔征、山崎伊織は防御率1点台後半、井上温大も規定投球回には達しなかったが、防御率2.20、菅野智之も防御率2.95と先発の役目は果たしたが、救援陣が奮わなかった。

特に開幕から好投を続けていたアルベルト・バルドナードが交流戦に入って防御率7.94と大崩れ。西舘勇陽も防御率5.94と奮わなかった。

東京ヤクルトスワローズ

ロッテ、楽天、ソフトバンクに負け越したが、西武を3タテ、日本ハム、オリックスにも勝ち越し、9勝7敗2分けと貯金2をつくった。


スワローズ攻撃陣はドミンゴ・サンタナ、ホセ・オスナ、長岡秀樹の3人がチームトップタイとなる10打点を挙げた。
一方、村上宗隆は2本塁打を放ったが、打率.172と苦しんだ。
青木宣親は18試合中、14試合に出場、スタメンでも2試合でマルチヒットを記録するなど打率.269と存在感を発揮した。


スワローズ投手陣の防御率3.52は、ロッテに次ぐワースト2位。
特に先発陣で規定投球回に達したのはミゲル・ヤフーレだけで、18試合で9人の投手が先発する苦しいやりくりであったが、リリーフ陣は、大西広樹、山本大貴、木澤尚文、田口麗斗の4人が防御率0.00と踏みとどまった。
その結果、交流戦で挙げた9勝は全員、異なる投手が勝利投手となる「珍事」となった。
石川雅規は対楽天戦で5回コールドで完封勝利を挙げ、NPB大卒投手史上最長となる23年連続勝利を記録したり、奥川恭伸が対オリックス戦で980日ぶりに涙の復活勝利を挙げたり、嬉しい話題もあった。

中日ドラゴンズ

オリックス以外の5チームに負け越す苦しい展開ながら3タテを食らわず、7勝11敗で踏みとどまった。


ドラゴンズの攻撃陣はチーム打率.214と両リーグで西武、阪神に次いでワースト3位。
細川成也
はチームトップの打率.290をマークしたものの、ホームラン0本、2打点と苦しんだ。
オルランド・カリステが規定打席数未達ながら41打数14安打、打率.341、2本塁打と気を吐いた。

村松開人は交流戦直前まで打率.326で首位打者を争っていたが、交流戦に入り、61打数7安打、打率.115、OPS.285と絶不調に陥った。


ドラゴンズ先発陣は高橋宏斗が19回1/3を投げて1失点、防御率0.47と、昨季の防御率0.00に続き、交流戦でパ・リーグ相手に無類の強さを発揮した。
涌井秀章も6月14日、対ロッテ戦で節目の通算500試合登板を迎え、3試合で防御率2.25と好投したが、交流戦通算27勝目を挙げることはできなかった。小笠原慎之介も防御率3.20ながら0勝3敗。
リリーフ陣は概ね健闘し、齋藤綱紀、松山晋也が防御率0.00、清水達也、藤嶋健人も1点台、ライデル・マルティネスは7試合に登板して防御率1.29、両リーグで2位となる6セーブを挙げた。








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