2021年パ・リーグ「私的ベストナイン」

NPBは毎年、セ・パ両リーグごとのベストナイン、MVP、新人王を発表しているが、今年も12月15日に開催される”NPB AWARDS”の中で表彰される。
MVP、新人王に先立ち、ベストナインは12月14日に発表された。

「ベストナイン」は、シーズンで好成績を残した投手・捕手・一塁手・二塁手・三塁手・遊撃手・外野手のポジション別に記者投票によって1名(外野手はポジションに関係なく3人)選出される。

「ベストナイン」の投票資格を持つ記者は「全国の新聞、通信、放送各社に所属しており、5年以上プロ野球を担当している者」とされている。
ポジションごとに推薦する1名の選手名を記入し投票し、各ポジション最多得票の選手が受賞する。

しかしながら、「ベストナイン」の選出も、「ゴールデン・グラブ賞」ほどではないが、やはり困難がつきまとう。

①野手は、打撃、走塁、守備をどういうバランスで評価するか。
②複数のポジションをこなした選手をどう扱うか。
③リーグ優勝や、チームの順位への貢献をどう考えるか。


①については、勝利への貢献を表す指標であるWAR(Wins Above Replacement)を考慮するという考え方もある。
②、③についてはなかなか答えがなく、投票する記者の印象や主観に委ねられるているだろう。
②については、特にパ・リーグの場合、DHを兼任している選手が複数いる。
また、例えば、三塁手とDH兼任で半々くらい出場しているようなケースをどうみなすのか。
こういう選手はベストナインの投票では成績にもかかわらず、割を食ってしまう傾向にある。
(例外として、2016年に大谷翔平が「二刀流」を成功させ、投手とDHの両部門で受賞したことがある)

ここでは、2021年パ・リーグのレギュラーシーズンでの「私的ベストナイン」を選んでみたが、特に野手はOPS(=出塁率+長打率)という指標を基に、チームの成績をあまり考慮にいれず、個人の攻撃面(打撃+走塁)での貢献を中心に選出してみた。

先発投手部門 山本由伸(オリックス)

先発投手部門は、NPB史上8人目となる「投手五冠」を達成した山本由伸(オリックス)で異論ないだろう。ほとんどの指標でリーグトップである。
高卒2年目の宮城大弥も防御率、勝利数ともにリーグ2位で、山本由伸に次ぐエースとして期待以上の活躍を見せた。
楽天に復帰した田中将大はWHIPが1.03とリーグ2位、クオリティスタート率も73.9%でリーグ3位と、MLB帰りの貫禄を見せた。
加藤貴之(日本ハム)は防御率3.42だが、WHIPは1.05でリーグ4位、同僚の上沢直之の1.04と遜色ない。

セットアッパー投手部門 平良海馬(西武)
クローザー投手部門 益田直也(ロッテ)

選考対象は、シーズン38試合以上に登板した投手とする(河野竜生のみ先発での11試合の登板を含む)。

平良海馬(西武)は「開幕から39試合連続無失点」のNPB新記録を樹立、セットアッパーからクローザーに配置転換となり、NPB史上2人目となる「シーズン20ホールド・20セーブ」という記録もつくった。リーグ2位の62試合に登板して、防御率0.90は圧巻である。

佐々木千隼(ロッテ)は救援だけで8勝を挙げ、ホールドポイント(=救援勝利+ホールド)はリーグ2位、防御率はリーグ3位だが、WHIPは0.88とリーグトップ。
「勝利の方程式」の中で主に8回を任され、優勝争いをするチームの原動力となった。
難しい選択だが、セットアッパー部門では平良海馬を推したい。

クローザー投手部門では、益田直也(ロッテ)を推したい。
指標では他の救援投手に劣る点もあるが、リーグトップの67試合に登板し、シーズンを通してクローザーの地位を全うし、最後までチームの優勝争いを牽引した点を評価したい。

防御率、奪三振率、被打率トップは松井裕樹(楽天)だが、シーズン途中で離脱したのが痛かった。

捕手部門 森友哉(西武)

打率、OPS、出塁率、長打率を見ると森友哉が甲斐拓也を大きく上回っているが、試合、本塁打、打点などは甲斐が上回っている。
総合的に見ると、森に軍配を上げたい。

一塁手部門 ブランドン・レアード(ロッテ)

一塁手部門はブランドン・レアード(ロッテ)がOPS、長打率、本塁打、得点圏打率、打点などでトップ。
鈴木大地(楽天)は打率、安打数、得点などでレアードを上回ったが、ここはレアードを推したい。

二塁手部門 浅村栄斗(楽天)

二塁手部門は浅村栄斗(楽天)と中村奨吾(ロッテ)の一騎打ちだが、甲乙付け難い。
共に全試合出場を果たしている。
・浅村栄斗=OPS、出塁率、長打率、本塁打、四球
・中村奨吾=打率、安打数、二塁打、得点圏打率
・試合数、打点数は同数
浅村栄斗に不利な点があるとすれば、二塁手としての出場が126試合である点だ。
非常に難しいが、OPS、本塁打数が上回っている浅村を推したい。

なお、NPBの「ベストナイン」では中村奨吾が最多得票を集めた。

三塁手部門 茂木栄五郎(楽天)

中村剛也(西武)がOPS、打率、出塁率、長打率、得点圏打率でトップに立っている。
ただし、問題は中村が三塁手とDHの併用で、三塁手としては59試合、236打席、DHとしては56試合、231打席に立っていることだ。

対抗馬は茂木栄五郎(楽天)と宗佑磨(オリックス)になる。
茂木も遊撃手との併用だったが、三塁手出場時(101試合、404打席)のOPSは.800と、中村、宗を凌駕している。
一方、純粋な三塁手としての活躍を見ると、139試合のうち、三塁手で125試合に出場している宗佑磨という選択もある。
しかしながら、ここは茂木栄五郎を推したい。

なお、NPBのベストナインでは宗佑磨が初選出されている。

遊撃手部門 源田壮亮(西武)

遊撃手部門はOPS・打率でトップの源田壮亮(西武)で決まりに見えるが、ダークホースがいる。
藤岡裕大(ロッテ)は三塁手と遊撃手の併用だったが、遊撃手での出場のほうが多く(84試合、292打席)、遊撃手での出場時のOPSが.711、打率も.283で、源田を上回っている。
(藤岡が三塁手での出場時(64試合、200打席)はOPS.586、打率.217)
しかしながら、源田は盗塁数の多さが捨てがたく、やはり源田を推したい。
そして、藤岡は打撃面への影響を考えると、三塁手よりも遊撃手のほうが適性があるのかもしれない。

外野手部門 
吉田正尚(オリックス)
杉本裕太郎(オリックス)
柳田悠岐(ソフトバンク)

パ・リーグの外野手部門は、OPSリーグトップ3人をそのまま推したい。
吉田正尚(オリックス)は2年連続の首位打者と最高出塁率、同僚の杉本裕太郎(オリックス)は初の本塁打王、柳田悠岐(ソフトバンク)は本塁打28本はリーグ3位、二塁打36本はリーグトップであった。
ちなみに、パ・リーグの打撃三冠と盗塁王(4人)は7人のうち、盗塁王の一人、源田壮亮を除けば、すべて外野手登録である。

DH部門 近藤健介(日本ハム)

DH部門の選出も悩ましい。
何故なら、今季のパ・リーグには「DH専任」という野手はほぼいないからである。
DHでの出場だけで規定打席に達した選手はいない。
今季、DHでの出場がもっとも多かったのは、アルフレド・デスパイネ(ソフトバンク)の77試合、305打席だが、規定打席数に達していない。
そして、DHに向き、不向きの適性があるとしても、DHが務まらない野手はいない。

DHでの出場が多かった上位7人のうち、OPSを見ると、近藤健介と島内宏明の一騎打ちだが、両者の成績を比較すると、

・近藤健介=OPS、出塁率、打率、安打、二塁打、等
・島内宏明=本塁打、塁打数、打点(リーグトップ)、四球、長打率、得点圏打率

ただし、島内はDHでの出場が39試合、165打席(リーグ7位)しかなく、外野手として102試合、434打席を記録している。
一方、近藤はDHとして65試合、274打席(リーグ2位)、外野手として66試合、262打席となっている。
また、近藤はDHで出場した打席ではOPS.986、打率.326、8本塁打、47打点と、外野手として出場時よりもハイレベルな数字を残している。
DHでの活躍度、適性を考慮すると、近藤が妥当と判断した。

代打部門 アダム・ジョーンズ(オリックス)

「ベストナイン」に代打部門があるとすれば、アダム・ジョーンズ(オリックス)になるだろう。
ジョーンズはDH中心に180打席で打率.234、OPS.677、4本塁打であったが、代打では37打席で打率.429(28打数12安打)、9四球、出塁率.568、OPS1.032と無類の強さを発揮した。
MLB通算14年で通算1939安打、282本塁打を放った片鱗を見せた。

代走部門   和田康士朗(ロッテ)

文句なく和田康士朗(ロッテ)で決まりである。
和田は今季、96試合に出場したが、うち先発出場はわずか2試合で、代打が1試合あるものの、代走が62試合、守備からの途中出場が31試合という「代走」のスペシャリストと呼んでいい。
打席に立ったのはわずか24回で、19打数5安打、5四球、打率.263、1打点、0本塁打という記録だった。一方で、盗塁数は24個(失敗5個)は、パ・リーグトップタイで、初の盗塁王に輝いた。
24盗塁の内訳を見ると、自身の安打で出塁した5回のうち盗塁は1個だけで、四球での出塁時に2個、残り21個はすべて代走として決めており、代走で出場した3度に1度は盗塁を記録していることになる。
塁上にいた72回(代走62回、出塁10回)のうち、得点は25で、本塁生還率は34.7%である。

ロッテの2021年のチームスローガンである「この1点を、つかみ取る。」をまさに体現していた選手だった。

なお、「ベストナイン」の表彰選手は以下の通り。

https://npb.jp/award/2021/pl.html

ベストナインの投票結果は以下の通り。






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