NPB投手の1イニング最多失点:内藤幸三


6月4日、東京ドームで行われた読売ジャイアンツ対千葉ロッテマリーンズ戦は意外な展開となった。

セ・リーグ首位の巨人と、先日、11連勝を成し遂げたばかりのロッテとの対決であったが、ロッテの先発・左腕の小島和哉は3回、巨人打線に9者連続で安打を浴び、ノックアウトを食らうと、2番手の二保旭が小島の残した走者を還したたため、小島は1イニング11失点という不名誉な記録をつくってしまった。
試合は18-3で巨人が大勝した。

NPBの公式戦で、一人の投手が1イニングで10失点以上を記録したケースは確認できただけで以下の通りである。

ロッテ・小島は同僚の石川歩が2018年7月31日、釧路市民球場で対北海道日本ハムファイタイーズ戦に先発した際、初回に11安打を浴びてわずか2死を取っただけで降板し、記録した10失点を超えて、球団ワースト記録、かつパ・リーグワースト記録タイに並んでしまった。

NPB公式戦での投手の1イニング最多失点は12失点

NPB公式戦での投手の1イニング最多失点は、1リーグ時代のゴールドスターに所属した内藤幸三で、1946年7月15日、富山県の高岡高専グラウンドで行われた対近畿グレートリング戦の8回に記録した12失点である。

この日は高岡高専グラウンドで職業野球の公式戦が初めて行われ、ゴールドスター、近畿グレートリング(現・ソフトバンク)、阪神、セネタース(現・日本ハム)による変則ダブルヘッダーとなった。
第1試合のゴールドスター対近畿グレートリング戦は、グレートリングの先発・別所昭(のちの別所毅彦)がゴールドスターを被安打7で完封する一方、グレートリング打線は、ゴールドスターの先発・江田孝から14点を奪い、7回途中でノックアウトすると、8回には代わった2番手の内藤幸三から一挙、12得点を奪って、26-0とし、そのまま勝利した。
グレートリングの「26-0」はNPB公式戦で「最多得点差完封試合」として長らく記録され、2005年3月27日、千葉マリンスタジアムでのロッテ対楽天でロッテが26-0で楽天に勝利してタイ記録をつくった。
また、グレートリング打線は「毎回安打かつ全員安打、かつ全員得点」という、NPB唯一の記録もつくっている。

なお、第2試合のセネタース対阪神戦では、1試合で両チーム合計14失策という空前絶後の記録も生まれた。
実は高岡高専グラウンドは、高岡高専の校庭にある陸上トラックをまたぐようにつくられ、外野フェンスとしてロープが張られ、グラウンドには小石が散らばり、外野には雑草が生い茂るなど、整備がまったく行き届いていなかった。
阪神が初回の守備で2死から内野に飛んだゴロを3球を続けていきなり内野手が取り損ねてエラーするなど、計8失策、一方のセネタースも内野手がゴロを4つはじくなど6失策。

これに懲りたのか、高岡高専グラウンドでNPBの公式戦が行われたのはこれが最初で最後となった。

内藤幸三はこの年、57試合に登板、うち48試合に先発して完投は38で、防御率2.90ながら、19勝25敗という成績を残している。
先発したらとにかく勝負がつくまでマウンドを降りなかったようだ。

内藤幸三は2リーグ分立後の1950年、創設されたばかりの広島カープに移籍し、栄えある開幕投手として、広島に球団初の勝利をもたらした。
通算13年で、368試合に登板、うち277試合に先発して154完投、92勝141敗、防御率3.27という成績であった。



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