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足りないのは喉の渇き

「転生したらスライムだった件」という作品があります。主人公が異世界に転生してしまいいろんな技を覚えて異世界で活躍する系。大企業もスタートアップも、成長企業も業績悪化企業も体験してきたけど、今から思えば同じ世界の中での出来事だったんだなと。民間から行政への転職は、「転職」という変化ではなく「転生」というべき変化でした。

この世界で「民間ではこうだ!」と力説してもコトは動かないです。その旧世界の経験は生かしつつ、アンラーニングして、この異世界で活躍するために必要なユニークスキルを獲得しないといけない。

その最初に必要だったスキルのひとつが”喉の渇き"です。

イギリスの諺に

馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない
You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.

教育研修に詳しい人から「受講者が仕事に悩んで渇きまくってるタイミングで研修をやらないと役立たない」と教えてもらった言葉。

行政のデジタル化も同様です。異世界からやってきた私が、突然に"デジタルやれー"と号令をかけるのは簡単だけど、それで人が動いたりコトが成せるほど世の中は甘くない。他人に仕事のデジタル化を提案することはできても、他人を無理やりデジタル化に取り組ますことはできない。喉の渇いていない馬を無理やり水辺につれていっても水を飲まないように、デジタル化という渇きをその人や組織が自覚していないのに、先端技術やデジタルサービスのことを提案したり無理やり押し付けても消化されない。

これまでとは違う世界でデジタル技術の導入を持続的に推進していくのには人々に喉の渇きを自覚してもらうことが大事でそれはテクノロジーの話というよりも営業プロセスに似ている。

営業マンは、

  1. 会いたくないから一回くらい会ってもいいかな

  2. 頻繁に会ってもいいかな

  3. 会うだけから無料お試し品を試す関係へ

  4. 無料お試し品からテスト購買の関係へ

  5. テスト購買の関係から定期購買の関係へ

のような関係構築業こそが営業の本質。

デジタルに強い渇きがない人に、どんなことに困ってるのか?やりたいことは何なのか?の話をちゃんと聴いて関係構築をやっていく。お試しで日常業務の小さな不便を解消して便利さを実感してもらい信頼の貯金残高を増やす。自らが主体的にデジタル技術を業務に取り入れてみようという人を少しづつ組織の中に増やしていく。なんでも解決する魔法の弾丸ような技術ありきで提案するのではなく課題ありき。


もう一つは渇きを感じるために外からのフィードバックを埋め込むこと。
提供者側は渇いてなくても行政サービスを受ける都民や企業側は強烈に渇いていたりします。これは大問題なのではあるが、大きな組織の中にいると利用者との距離が遠くなり利用者の渇きを検知するのが鈍感になりやすい。顕在化したのがコロナで、我々のアナログ行政サービスに対しては大きなご批判をいただきました。
危機的状況の時にだけメディアや周囲に叱責を受けて初めて利用者の渇きを理解する愚を繰り返さず、平時から継続的に渇きを理解できるようにすることが大事だ。それがフィードバック回路。定量や定性の双方のフィードバックで利用者の渇きを検知する頻度や感度を上げる。利用者の渇きを理解することで、自らも変わらねばと心の底から乾くようになる。

2年前に最初に都庁に来た際は、各部門をまわってデジタル案件を一個だけでいいから予算に入れましょうよ、という各局営業を始めた時は31案件が上がってきたけど、今では大小を含めると250を超えるデジタル系案件が始まりつつある。水を飲みたい人、部門が着実に増えている感触はある。むしろサポートすべき我々の方のパワー不足が課題になってきてる。もっと水場を拡張しないといけない。

だから今、複業型公務員を募集しています。週に数日でいいので行政という世界で働いてみよう、転生してみようという人いれば、ぜひご応募ください。5/15が応募締め切りです。ステマっぽくなってしまいましたが。


行政は今、多くの技術者を求めています。コロナやデジタル庁の発足もありかつてないほど行政の内部では、デジタル化をしなければという強烈な渇きが生まれているタイミングです。少しでも関心がある人はグーグルで17年間働いたマットカッツさんがアメリカ政府のデジタル部門に行って感じたことのTEDがあるけどぜひ見てください。

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