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「菜食者は病気にならず肉食者は病気になる」というデータの真相

【「栄養学のアインシュタイン」キャンベル博士】

 ゲルソン博士の死後、数々の実験や大規模調査によって動物性食品の発がん性を証明し、植物性食品によるがんの予防・治療に決定的な理論を確立したのがT・コリン・キャンベル博士です。

 アメリカの名門コーネル大学、栄養生化学部名誉教授のキャンベル博士は40年余りにわたり、栄養学研究の第一線で活躍。「栄養学のアインシュタイン」と称される世界的権威です。(中略)

 1974年、中国の首相・周恩来が末期の膀胱がんに罹り、入院しました。みずからの死期を悟ったこの名宰相は政府に対し、がんについての国民の理解を深めるため国をあげての事業を命じました。それが「史上最大規模」と呼ばれる疫学調査です。

 実際、とてつもないスケールの調査でした。65万人もの研究者が数種類ものがんについて、1973年から1975年における死亡パターンを分類。調査の対象は中国全土の8億8000万人に上りました。

 周首相は事業完了前に亡くなりましたが、調査の結果は1981年、「がんの地図」というタイトルのもと中国で出版されました。そこには、さまざまながんの分布状況が示されていました。どのがんにも共通するのは、発症の集中地域があること、さらにその地域差が非常に大きいことでした。たとえば食道がんの場合、死亡率が地域によって400倍もの差があることを「がんの地図」は示していました。

 アメリカでも地域差はありますが、せいぜい2、3倍程度です。

 遺伝的に同じ中国人なのになぜここまで違いが出るのか?彼らを取り巻く環境、食生活に秘密があるのではないか、とキャンベル博士のヒラメキが働きました。

 そう考えた彼は、中国での現地調査を決心しました。史上最大規模の疫学調査を受けておこなうのですから、当然、これもスケールの大きなフィールドワークになります。彼が教鞭を取っていたコーネル大学をはじめ、オックスフォード大学、さらに中国予防医学研究所の共同研究「チャイナ・プロジェクト」としてスタートすることになったのです。

 中国へ赴いたキャンベル博士は、周恩来が命じた疫学調査を引き継ぎ、世界の栄養学史上に例を見ないほど徹底した調査をおこないました。

【菜食中心の地域は、がんの死亡率が必ず低い】
 こうして集めた大量の情報をコリン・キャンベル博士は克明に分析し、「中国における食と習慣と死亡率」にまとめて発表しました。1990年のことで、調査開始から10年近くの歳月を費やしたのです。その結果、食と病気の相関関係が9万4000件も明らかになりました。博士はこう述べています。

 「これは驚くべき数字である。すべての関係性をまとあげたあと、最も重要ななデータを数えると8000〜9000ほどあった。これほど多くの関係を分析したのだから、その意義は大きい。20人中19人が同じ方向を示せば、それが指し示す事柄は、真実と言える」

 調査で集められた情報は、何百もの表やグラフに整理され、さまざまな角度からの相互参照によって信頼性を検証したうえ、367の項目との関係性を示されました。プロジェクト・リーダーを務めたキャンベル博士は、調査の結論を、こう簡潔に語っています。

 「読み取れるメッセージはたった1つだけだろう。穀物や野菜や果物を多く摂取する、野菜中心の食生活、そして微量の動物性食品。これらと結びつく地域は、必ずがんや脳卒中、冠動脈性心疾患などの死亡率が低くなっている」

 こうして具体的かつ豊富なデータを得たキャンベル博士は、それまでのさまざまな研究から導いたみずからの結論、つまり菜食が健康に有効であり、動物性食品は有害であるという事実を再度実証することになりました。

 「ニューヨーク・タイムズ」は彼の調査研究を「これは、食生活と病の関連を調査した史上最も包括的な研究である」と評価しています。 真柄俊一〈がんは治療困難な特別な病気ではありません!〉より

✔️【真相〈真逆のエビデンス〉】

 似たような疫学データはほかにもあり、ヴィーガン、ベジタリアン、肉を食べる一般人(調査対象2万5000人)を6年間にわたって調査したところ、肉を食べる一般人の心臓病の死亡率はヴィーガンの8倍だったそうです。

 これはピーター・コックス〈ぼくが肉を食べない理由〉という本に載っているフィリップ研究というものなのですが、船瀬俊介もお気に入りのエビデンスらしく、コリン・キャンベルの〈チャイナ・スタディー〉とともに様々な自著の中でこのエビデンスを紹介しています。

 ところが不思議なことに、まったく逆のエビデンスが多く存在するのです。

【肉食のほうが健康にいいエビデンスの数々】

 たとえば日本、中国、韓国、バングラデシュの男性11万2310人、女性18万4411人を平均11年にわたって追跡し、がんや心血管疾患など、様々な死亡原因の調査がおこなわれたことがあります(フィリップ研究とは規模の桁が違います)。

 結果は肉の総摂取量が増えても死亡リスクが高まらないどころか、男性の心血管疾患死亡リスクと女性のがん死亡リスクが低下したのです!(AJCN.2013)。

 また、国連食糧農業機関(FAO)の2005年の出生時平均余命パーセンタイルでは、動物性タンパク質の消費量が増えることによって平均寿命がのびているのです。

 また、アメリカの全国健康栄養調査Ⅲプロジェクトでは、1万7611人を調査し、ホワイトミート(鶏肉、魚)の消費量が男性の死亡率を下げ、レッドミートの消費は全体の死亡率を上昇させませんでした(EJCN.2013)。

 もう1つ。オーストラリアの大規模なコホート研究。論文著者たちは言います(ちなみに「●●ベジタリアン」というのは、「動物性食品をたまに食べるベジタリアン」という意味)。

 24万3096人の参加者において……ベジタリアンと非ベジタリアンとの全死亡率に有意な差はなかった。また、ペスコ・ベジタリアンまたはセミ・ベジタリアンと、肉を常食している人との死亡率にも有意差はなかった。本研究では、ベジタリアン、セミ・ベジタリアン、もしくはペスコ・ベジタリアンの食事を続けることに全死亡率を低下させる独立した効果があるという証拠は認められなかった(Preventive Medicine.2017)。

 これでわかってもらえたと思いますが、船瀬俊介が金科玉条のごとく掲げる〈チャイナ・スタディー〉やフィリップ研究というのはあくまで「都合のいいエビデンス」にすぎなかった、というわけなのです。

【健康者&不健康者使用バイアス】

 が──とはいっても、〈チャイナ・スタディー〉やフィリップ研究で、菜食者より肉食者のほうが病気にかかりやすく、死亡リスクが高いというデータが出ていることは事実。これはどういうことなのか?

 実はこれ、健康者使用バイアスと不健康者使用バイアス(以下、健康者&不健康者使用バイアス)というもので簡単に説明できるものなのです。

 ヴィーガンというのは「超」がつく健康オタクです。

 酒・タバコをやらないでしょうし、よく運動をするでしょうし、一般的な飲食店には行かないでしょうし、ジャンクフードや加工食品も口にしないでしょう。

 一方、肉をよく食べる人というのは(糖質制限を実践している人や、オーソモレキュラー療法の治療を受けている人のような例外を除いて)あまり健康意識の高い人ではないと思います。

 酒・タバコをやるでしょうし、運動もあまりしないでしょうし、一般的な飲食店によく行くでしょうし、ジャンクフードや加工食品も年中腹いっぱい食べていると思われます。

 ここまで書けばわかってもらえたと思います。

 肉食者たちがかかる病気の犯人はそうした不健康行動であり、肉ではなかったのです。

 あまり知られていないのですが、これを健康者&不健康者使用バイアスというのです。

 こう考えるとニューヨーク・タイムズに「疫学調査のグランプリ」と絶賛されたチャイナ・プロジェクトとは、世紀の茶番だったと言えるかもしれません。

 中国人に病気が少ないのは野菜のおかげではなく、ただジャンクフードや加工食品を食べていないだけであり、一方、アメリカ人に病気が多いのは肉のせいではなく、ただジャンクフードや加工食品を腹いっぱい食べていたから──これが真相だったのですから。

【コリン・キャンベルを裏で操る支配者の存在】

 チャイナ・プロジェクトの指揮をとったキャンベルは「栄養学のアインシュタイン」と呼ばれ、あまたの有識者たちからの尊敬を集める偉人中の偉人です。 

 それほどの人でもこんな単純な事実に気づけなかったのですから、肩書や知名度で人間の能力を判断するのは恐ろしいことであることを痛感します。

 が──我々はキャンベルを笑うことはできません。

 〈ファクトフルネス〉のハンス・ロスリングと同じように、彼もまた「世界の真の支配者たち」から本人には気づかれないように利用されていた可能性があるからです……。

【まとめ】

 ●船瀬俊介がよく取り上げる〈チャイナ・スタディー〉やフィリップ研究は、単なる都合のいいエビデンスにすぎない。

 ●菜食者が健康で肉食者が不健康な理由は、健康者&不健康者使用バイアスで説明できる。 
 


 日本の国民病の1つである糖尿病。しかし標準治療は大変危険なものなのです。糖質制限による治療をぜひご検討ください。

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