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「ペスト」アルベール・カミュ

「ペスト」アルベール・カミュ(中条省平訳)

コロナ禍で再びベストセラーとなったというこの本。
確かに、コロナ禍を経験したので、リアルに感じるところが多い。70年以上前に書かれた本だけれど、政治家や市民が考えることは、今も昔もあまり変わらない。非常時に人間の根本が見えてくる、というところが哲学的。

主要人物のリュー医師の場面は、読んでいるだけでヘトヘトな気分になる。職務を全うし、早朝から深夜までずっと働きづめの毎日。コロナ禍の医療従事者などの方たちも同じような状況だったのではないかと思う。

登場人物が生き生きと描かれていて、それぞれのシーンが目に浮かぶようで小説として面白かった。訳者がよかったのと、2021年9月発売のコロナ禍での新訳を手に取ることができてラッキーだった。フランス語ができたら原書でも読んでみたかった。

人生初カミュ。巻末の訳者による解説とカミュの年譜もありがたかった。
解説にあった「不条理は何も教えない」がこの本のすべてだと思う。


この手の古典は、これまであまり読んでみようと思ったことがなかった。
今回、読むことになったきっかけは、この本↓

哲学書のコーナーでなんとなく目を引いて手に取った一冊。
身近な題材かつ平易な言葉で書かれており、読みやすい(文字も少ない)。哲学のとっかかりとしてよい本だと思う。

哲学といえば、はるか昔に大学の一般教養で履修したが、残念ながら何を学んだのかさっぱり覚えていない。唯一覚えているのは、出された課題が、考えても考えても答えが出ないようなテーマで筆が進まなかったこと。考えているその時が哲学だったのであろうと思うことにする。

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