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浅川マキ ~撮影ノオト~

19歳の出会い

今年3月に仕事場を移転した。40年間使っていた場所なので、写真や資料が山のように貯まっていて、整理するのは難事業だった。その中で忘れていた記憶の細部を呼び覚ます、いくつかの資料が見つかった。大学に入学して1年目に友人たちと作った同人誌もそのひとつ。『曼珠沙華』と名づけた小冊子に「浅川マキのこと」という一文が残されていた。

写真のサークルに入部して、ドキュメンタリー写真に興味を持ち始めた頃、浅川マキの舞台と出会い、1年ほど彼女を追った。1969年のことだ。彼女の歌を初めて聴いたのは、渋谷にあったライブハウス「ジャンジャン」だった。黒づくめの服で、「夜が明けたら~」と歌い出したとき、私の中で何かが弾けたような気がした。けだるく、だがどこか明るいブルースは、19歳の女子にとって、何か深淵を覗かせてくれるものだった。

浅川マキが銀座のシャンソン喫茶「銀巴里」に出演した日、出番の合間に客席の後ろでくつろいでいた彼女に思い切って声を掛けた。それから舞台、楽屋、また旅にまでついて行って写真を撮り続けた。彼女は「しょうがないわね~」と半ば諦め顔で、受け入れてくれた。

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