帰ってきた猫。

私の実家では猫を飼っていました。
歴代3匹の猫を飼っていたのですが、これはそのうちの初代猫の話です。

キイチロウという名前のキジ猫で、私が中学生くらいの頃に飼っていた猫です。
実はキイチロウについてはあまり思い出がありません。
というのも飼い始めてしばらくして家に帰ってこなくなってしまったのです。

向かいの新築工事をしている家でウロウロしてたけど、駐車場を作るのに流しているセメントに巻き込まれたんじゃないかとか、不穏な話を聞いたりしたんですが、ともかくある日を境にキイチロウは家に帰ってこなくなりました。

それから1年ほどした頃でしょうか。夜も遅い時間、私が実家のリビングで一人でくつろいでいると、デッキに出る戸の向こうからガサガサ音が聞こえる…。気のせいかな?と思って最初は無視していたんですが、やっぱり何か聞こえる。気になった私は立ち上がるとカーテンを開け、戸を開けた。

するとキジ猫がその場から立ち去ろうと背中を見せて歩いている姿が目に入った。

「キイチロウ!」

思わず声をあげるとキジ猫はこちらに振り向き、軽く会釈をしてそのまま走り去ってしまった。

キイチロウはよく家に帰ってくるときに網戸をガサガサして開けてくれとしていたのだが、思えばそのガサガサ音はキジ猫が網戸を引っ搔いていたのだろう。

夜中に私が大声を出したので、驚いた両親が寝室から「どうしたんだ!?」とやってきた。私は事の一部始終を話したが、まぁとにかく夜も遅いから寝ようということでそのまま就寝に入る。

あのときのキジ猫が本当に居なくなったキイチロウだったのか、定かではないですが、猫が「家に入れてくれ」と網戸を引っ掻いてるときにもう少し早く開けていれば、もしかしたらキイチロウは家に戻ってきてくれていたのかもしれないと、少し後悔というか…心残りがある。そんな体験をね…したことがありますね。


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