偽りの大地:Tierra de falso
夕暮れ時のサーバルームは空調の風切り音がうるさいばかりで、妙に人の気配がなかった。ところが、ペットロスの女に言われるがまま架列(がれつ)の間をとぼとぼ歩いていると、ラックの彼方には作業者の姿がちらちら見える。
「ここで仕事する人もわりといるんだね」
ちょっと大げさなほどすばやく振り向いたペットロスの女は、キツめに『黙って』と口に手をやる仕草を見せ、また静かに歩き始めた。やがて目的の架列を見つけると、側面の制御盤でラックの閉鎖を解除し、メッシュ扉を開く。放熱ファンの音がわっ