Mリーグ2019レビュー④ KONAMI麻雀格闘倶楽部編

シリーズでお伝えする今期のMリーグの総括編。
8チーム29選手の今期の試合内容を、独自の指標で査定を行います。
第4回目のレビューは今期年間総合5位、KONAMI麻雀格闘倶楽部を特集します。

チーム総評:攻撃力が売りのチームに守備的選手を投入して化学変化を起こす。ムラのあるチーム状態が最終的には致命傷になった。

前回・雷電のレビューにおいて『Mリーグのチームには”らしさ“がある』と述べたが、この格闘倶楽部も一年間ブレることなく、チームの是を貫いた。
レギュラーシーズン序盤戦のスタートダッシュ失敗で一時期は最下位に沈むものの、序盤は前原選手が引っ張り、中盤はエース・佐々木選手が復調して上位戦線に名乗り。新加入・藤崎選手はギリギリ3着で凌ぎながら順位点を守り、今季大躍進火力の女王・高宮選手が著しい成長を見せて見事セミファイナルにコマを進めた。

グラフ1-1

昨年もだったが、格闘倶楽部が嵌まる落とし穴『シーズン序盤とポストシーズンの低調』が2年連続のファイナルを阻んだ。
セミファイナル16戦中4試合がノー和了。攻めてナンボの格闘倶楽部から攻め手が封じられるとどうにもならなかった印象がある。

格闘倶楽部の全体データをご覧いただこう。試合数が同じレギュラーシーズン90試合分のデータがこちらである。

【確定】レギュラーチーム打ち筋

【確定】レギュラー個人打ち筋

実に「らしい」データである。誰よりも和了って、放銃を恐れない。
攻撃的データのお手本の様なデータとなった。チーム和了率20.96%は8チーム中トップ、チーム放銃率12.59%は8チーム中最下位、しかし和了の手数とリーグトップのリーチ成功率が失点を上回るメリットを生み出し正に「攻撃は防御也」を見せつけた。

選手別総評

佐々木寿人選手:世界一千点棒を点箱に入れたくない男・積極果敢なリーチ攻勢は健在。惜しむのは痛恨のスタートダッシュ失敗

【査定】攻撃C 守備C 加点効率B 運A 総合査定B

11-3佐々木総合

11-1佐々木レギュラー

11-2佐々木セミファイナル

解説をするまでもなく、今季も物凄くリーチ棒をぶん投げた。たった1人で115本のリー棒を供託し昨シーズンから数えるともう276本のリー棒を卓上に出している。1試合平均3.29回のリーチをかけ、和了の6割近くがリーチで占められている。前のめりになりがちなスタイルだが、放銃率は高くとも平均放銃点は安めに収まっており攻めるときは攻め、振っても傷は最小限の麻雀となった。
打点アップの種は逃さず、平均ドラ使用枚数は通期で1.53枚、レギュラーでは1.58枚とリーグトップの数字で和了時の打点アップに向けた積極性がうかがえる。
しかし、惜しいのはスタートダッシュ失敗。開幕6試合で3着3回、ラス3回の連対ゼロ。2018シーズンを跨いで9試合連続逆連対はMリーグワースト記録なってしまった。チームのバロメーターがこの選手にかかっているとも否定できず、来季契約を結んだ時には先手必勝のスタートダッシュを決めてもらいたい。

高宮まり選手:急成長を見せた今シーズン。守備に課題を残すも手数で他者を圧倒して7勝獲得。通期勝率.250アップ達成。

【査定】攻撃A 守備E 加点効率C 運D 総合査定C

12-3高宮総合

12-1高宮レギュラー

12-2高宮セミファイナル

昨季は21人の選手中最小登板となり、味わったことのない屈辱を味わった。今季は吹っ切れたように和了を連発してレギュラー・通期での1試合平均和了回数が堂々トップ。10局近い1試合において平均3回和了する獰猛なベルセルクが正に狂戦士となって対戦相手をかき回した。
圧巻は和了内訳。実に68%がリーチでの和了でリーグトップ。打点に目覚めたハードパンチャーがリーチ棒を突き刺し女王の座を射抜いた。
課題はやはり守備。押しっぷりが売りの選手なだけに放銃率はかなり高い。レギュラーでの放銃率は12.96%とリーグ26位。セミファイナルは展開が悪い中何とか耐えた末に3試合で放銃1回の我慢の戦いだった。
通期で見ればプラスポイントでフィニッシュ。勝率.250、連対率.500、ラス回避率.750をいずれもクリアしMリーグ仕様の戦い方も習得したか。

前原雄大選手:大改革の2019シーズン。Mリーグ仕様にアジャストした副露戦法が大ヒット。イージーな放銃がなければ・・・

【査定】攻撃A 守備E 加点効率C 運B 総合査定C

13-3前原総合

13-1前原レギュラー

13-2前原セミファイナル

筆者が最も打ち方を変えた印象を持った選手が前原選手である。
攻撃的なスタイルは全く変わっていない。レギュラーシーズンの和了率25.11%はリーグトップ。1試合平均和了回数、リーチ成功率、いずれも高指標を叩き出し攻撃指標は上位を総舐めとなった。
注目は副露での和了割合。昨年レギュラーシーズンの前原選手の和了内訳の割合は『リーチ50.68%/副露28.77%/黙聴20.55%』であり、和了のうち面前での和了割合は71.23%であった。
今季のレギュラーシーズンを見ると副露の和了割合が37.29%と、実に8.52ポイントの上昇となっており、ガラリーのイメージが強い前原選手が高打点副露を繰り出し、Mリーグにシン・ゴジラが爆誕した。
その証拠に昨シーズンの1試合平均リーチ回数は2.89、今季はレギュラーシーズン2.75とこちらは▲0.14回となり、副露戦術が光った。
しかしながらガラリー一族の野望について回るのは守備力の低下。放銃率は通期13.48%でリーグブービー。そして、放銃期待値を見るとリーグ最下位。この指標は放銃率と平均放銃点の積であるため、前原選手はMリーグの選手の中で最も高い放銃率で高い放銃点を叩いているという指標を示している。
攻守のバランスを求めるところに指標上の改善のカギはあるが、【1回打てば2回和了すればいい】の精神でブレずにこのまま貫くのか、はたまた今季のようにアジャストをしてきた様にさらなる進化を遂げるのか、雀界の生けるプロジェクトXが齢を重ねても尚歩を進めていく。

藤崎智選手:世界一自己アピールするリーチ忍者見参で全く忍ばず。粘りの末に3着量産で順位点が伸びなかった。

【査定】攻撃D 守備C 加点効率E 運B 総合査定C

14-3藤崎総合

14-1藤崎レギュラー

14-2藤崎セミファイナル

湯水の如くガンガンリーチ棒をぶん投げていく格闘倶楽部ismに化学反応を起こしたドラフト指名の藤崎選手。そのデータは他3人とはあまりにも真逆のデータとなった。
まず、平均和了回数がレギュラーで1.90回でリーグ28位。この指標のレギュラートップは高宮選手の2.88回である。1試合平均リーチ回数がレギュラーで1.65回でリーグ最下位。この指標のレギュラートップは佐々木寿人選手の3.45回。なんと佐々木選手の半分しかリーチを打っていない。
同じチームで真逆のスタイルが同居しているのは、カードの切り方としては理解ができる。攻撃的な場面が求められる時の起用・逆に守備的場面の起用選択肢が多いに越したことはない。しかし、ここまで真逆なスタイルだとある種感動まで覚えてしまう。
さて、藤崎選手で特筆すべきなのは『リーチ成功率の高さ』である。これは勿論試行回数が少ないことも要因となるが、しかしシーズンを通じて65.00%のリーチ成功率は異常である。3回に2回の成功率は流石に聞いたことがない。
そして、レギュラーシーズンの和了内訳も独特であり、なんとレギュラーシーズンの親の和了は“全部”リーチである。副露と黙聴での和了はただの一度もない圧倒的平均打点を叩き出した。
シーズンを通して展開が恵まれず、何とかラスだけは回避したもののトップが偉いMリーグルールではオカの5ptsが大量の負債となった。また、ラス回避は優秀だったがその殆どが3着に留まっており、連対率は30%とリーグ最下位となったのが最終的なマイナスポイントとなってしまった。

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次回は、年間総合4位 KADOKAWAサクラナイツのシーズンレビューをお届けいたします。