Mリーグ2020レビュー① セガサミーフェニックス編

昨年に引き続き、Mリーグ2020シーズンにおけるチームレビュー。当方で集計したデータを中心に総合的に判断し、各選手5段階評価による査定を行います。
シリーズ第1弾は年間総合8位・セガサミーフェニックスの特集です。

【チーム総評】雪辱を誓った2020シーズンはよもやのレギュラーシーズン敗退。トップは獲ったがラスも多く、攻撃指標壊滅で素点を失い最終節に力尽きる。

【チーム評価】攻撃:E 守備:C 加点効率:D 運:D 総合査定:E

このチームが脱落1チーム目に名を連ねることを予想できただろうか。2019シーズンのMVP・魚谷選手、連続無放銃記録・連続ラス回避記録の2つのレコードホルダーを持つ近藤選手、ダブルエースの活躍に胸躍らせたシーズンを振り返れば、選手4人全員のレベルアップが順調に行われればシャーレ獲得も時間の問題かに思われたがしかし、今季はトップラスの落とし穴にはまる。
Mリーグのレギュラーシーズンは各チーム90試合。単純計算23勝を挙げればトップ率.250を超え平均値をクリアする。加えて、8チーム中6チームが通過するレギュラーシーズンのレギュレーションであることも考えると23勝をクリアすると平均値でも4位~5位が期待され、カットラインは悠々クリアできる算段である。
また、Mリーグでは25,000点持ち30,000点返しの所謂オカ有ルールを採用しており、トップの順位点は50ptsと何はともあれトップが偉い。その前提条件の下、以下のチームポイントランキングをご覧いただきたい。

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ご覧のとおりレギュラー23勝は勝星だけではリーグ4位タイ。オカの20ptsがある分トップが偉いルールのMリーグでは23勝は悠々のカットラインクリアのはず……であった。フェニックスが嵌まった落とし穴のチェックポイント、注目は逆連対(3着・4着)の回数。ラス25回はリーグワーストタイ。逆連対は51試合でリーグワーストと2着の回数があまりにも少なすぎた。
順位点とオカで▲150ptsを失い、致命的だったのは素点。チームトータルで▲246.7ptsであり、(この指標の7位・格闘倶楽部が▲138.5pts)ぶっちぎりの最下位である。1トップが概ね60pts少々であると考えると4トップ分を素点で失っていることとなり実質は19勝。カットラインを争う20勝には届かない計算となる。

★チーム打ち筋確定値

こちらはチーム打ち筋データ。和了率が低く平均打点が高い一発長打タイプは昨季の傾向と同じデータ。
今季平均打点はリーグトップの7,084点だが、昨季のチームデータと比較すると昨季はレギュラーシーズン平均打点が7,404点であったことから、320点下がっている。加えて和了率は今季16.65%でワースト。昨季は18.88%で2.33ポイントの減少となった。この2ポイントダウンは大きい。なんと昨季の和了率チーム8位はEX風林火山で18.55%。昨季のワースト記録を大幅に下回る和了率では、流石に相対的に高火力と言えども着順を伸ばすことが厳しくなる。これに加えてリーチ成功率もワーストの40.74%であり、昨季のワースト・Piratesの42.34%を1.60ポイント下回り、軒並み攻撃指標で壊滅的な数値が並んでしまった。

昨季が出来すぎと言うのは簡単である。しかし、最後の最後までシャーレを争った2019シーズンを考えるとこの攻撃指標の低調ぶりには落胆の色を隠せない。攻守の数値が昨季を大幅に下回った2020シーズンは統計記録としては残るが、最終節まで脱落確定の状況を作らなかったのはせめてものもがき苦しみ抗った爪痕である。
奇跡の手役・打ち筋、ドラマチックを秘めるチーム性は十二分に備えている。感動体験のその先へ、燃える橙魂、不撓不屈の不死鳥軍団は傷を癒して、捲土重来の思いを胸にリスタートを切る。

【選手別査定】

魚谷侑未選手:徹底マークに苦しんだ昨季MVP。守備指標は好成績ながら、攻撃力が乏しく無念のマイナスポイント。泣きっ面に蜂で運指標も伸びずに屈辱の個人23位。

【査定】攻撃D 守備A 加点効率D 運E 総合査定D
◆個人成績
 レギュラー   26試合出場4勝 ▲179.3pts(23位/30名)
 セミファイナル -
 ファイナル   -

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昨季のMVPが苦しみに苦しんだ。昨季を通して堅守となり、守備については最高評価で査定したが、特に攻撃面では昨季データから大幅に指標が悪化した。
主要な攻撃データである和了率、平均打点、リーチ成功率について昨季と比較すると

今季和了率17.48% 平均打点:6,086点 リーチ成功率:41.25%
昨季和了率19.44% 平均打点:8,334点 リーチ成功率 41.54%


ご覧のとおり手数も少なく打点も下がってしまい、ゲームを決める一撃が減ってしまった。
加えて天運にも見放された。平均ドラ使用枚数は昨季1.55枚→今季1.07枚。裏ドラ的中率も昨季33.33%→今季24.24%と、MVPプレーヤーに試練を与え続けた。
無駄な放銃は少なく、耐えに耐え凌ぎに凌いだ悔しい2020シーズンを過ごした。冬の猛吹雪、新潟は春を待ちわび厳しい冬を豪雪と共に過ごしていく。越後人の開けない冬の時代はない。Mリーグの舞台で輝かせ、その手で二度目の春を掴み取りたい。

近藤誠一選手:鉄壁の守備力も今季は鳴りを潜める。大きく勝つ信念で平均打点はリーグトップながらも攻め手が伸びず、大魔神のDNAは檻の中に幽閉。

【査定】攻撃D 守備E 加点効率A 運A 総合査定C
◆個人成績
 レギュラー   22試合出場7勝 ▲46.7pts(18位/30名)
 セミファイナル -
 ファイナル   -

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23試合連続ラス回避、74局連続無放銃。前人未到人跡未踏の金字塔を引っ提げる大魔神も苦しいシーズンを送った。トップは勝率.250をクリアする7勝をマークするも、ラスの回数も7回というトップラス麻雀は予想だにしなかった展開だったか。
その麻雀スタイルはらしさを継続。昨季は上振れだったが親番平均収支も+886点で平均をクリア。和了した時のドラの活用具合も昨季を継続しているデータである。
プレイングスタイルの指標は昨季と大幅に変わっていない。
大きく変わっているのは「流局聴牌率」。昨季31.58%
のこの指標は、今季は47.54%と一気に16ポイント近く上昇する異常な数値である。近藤選手は終盤まで粘り込んで聴牌を取りに行くタイプではない。では、この数値の変化は何なのか?
原因は明らか。リーチ成功率の減少である。昨季51.67%だったリーチ成功率は今季34.72%と一気に17ポイントの大暴落。勝負手が実らず、また対戦相手も近藤ブランドで前に行きづらく、ツモられなければOKの徹底包囲網を敷かれた結果、攻撃指標が大きく削られた。
データを取って驚きだったのは守備指標の変化。昨季放銃率6.97%の超堅城のデータが今季は13.09%と倍とは言えないが、それでもほぼ倍近い放銃率の変化となったのはあまりにも想像ができない。
攻撃で攻めあぐね、焦って守備が崩れるキャリアではない。麻雀はあと1牌、その1牌が遠いときがある。リーチ後の1牌、たらればは厳禁の世界であるが、あの1牌を掴み取っていたらと悔やむ試合は何試合もある。
伝説のラス→トップの7mツモ、2021年3月4日の第2試合、あの執念でもぎ取った奇跡の倍満は記憶に新しい。目覚めよと呼ぶ声有れば、幽閉されている大魔神のDNAはいつでもあのMリーグの舞台に戻ってくるだろう。サポーターのみならず全Mリーグファンに届けるとびっきりの「感動体験」が2021シーズンでも見れることを大いに期待したい。
『だんっだよっ、コレッ!!あり得んのかよこんなことが!!?』

茅森早香選手:不調のチームメンバーを引っ張る孤軍奮闘を見せるも一歩及ばず。二盃口、槍槓のレア役和了者第1号に名を刻む。

【査定】攻撃C 守備B 加点効率E 運B 総合査定B
◆個人成績
 レギュラー   23試合出場8勝 +110.2pts(9位/30名)
 セミファイナル -
 ファイナル   -

22茅森

ポイントは見事昨季の▲157.9ptsを大幅に戻す+110.2ptsの9位フィニッシュ。個人成績としては十二分に及第点を獲得。
実は和了率・放銃率ともに昨季の成績からは低下している。(昨季和了率17.90%・放銃率9.26%)大きく伸びたのは平均打点。特に親の平均打点は昨季は6,770点リーグ25位。今季は親の平均打点が一気に伸びてリーグ4位の10,800点をマーク。フェニックスの全体的な傾向として一発長打を成功させたのは茅森選手だった。
槍槓和了、爆速清一色和了、二盃口ゲット、レア役も強烈手役も重量級猫パンチで仕留めた切れ味鋭いアタッカーが前述の魚谷選手、近藤選手と比較してゲームを仕留める和了が多かった印象である。
そして持っているのは裏ドラの寵愛。昨季裏ドラ的中率は42.31%でリーグ2位。今季も裏ドラ的中率42.86%で堂々3位。レア役に愛され裏ドラに愛され、運も味方した2020シーズンは個人としては中々面白いシーズンだったが、無念のチーム敗退の憂き目にあった。
チーム初の個人三賞は茅森選手の平均打点(2018シーズン・現在は廃止)であった。今年は初めて個人三賞をチームに持ち帰れなかった無念がある。不敵な笑みを浮かべるクールビューティがどの様な2021シーズンの立ち回りとなるか注目したい。

和久津晶選手:攻守ともに大乱調。自慢の攻撃力は火を消され、守備復調も遠かった。優勝の想いを残して、2年でフェニックスのユニフォームを脱ぐ。

【査定】攻撃E 守備D 加点効率E 運A 総合査定E
◆個人成績
 レギュラー   19試合出場4勝 ▲280.9pts(28位/30名)
 セミファイナル -
 ファイナル   -

23和久津

昨季課題だった守備についてはなんとか踏ん張る気概は見せた。データとしては昨季放銃率14.69%でリーグ最下位だった指標を今季は11.52%と改善はしたもののそれでも21位と低調。
それよりも何よりも勝利へ導く攻撃力。この指標は目を覆いたくなるような惨憺たるデータが並んでしまった。平均打点は7,610点と健闘したものの、和了率14.29%はリーグブービーリーチ成功率38.24はリーグ27位と下位陣に沈没。昨季はそこそこ攻撃指標のデータが良かったものの、守備指標の改善以上に攻撃指標の悪化が成績にもモロに反映されることとなってしまった。
要注目は連荘率の指標。20.83%でリーグ最下位、加えて親番平均収支も▲1,444点でリーグ最下位。この指標が伸びないということは親番のチャンスを活かせていないことになる。特に親番平均収支がマイナスということは親番をやればやるほど損ということになり、加点以上に親番のデメリットが大きかった証拠である。
この加点効率指標は2019シーズンでも伸び悩んでおり、昨季も連荘率18.92%はリーグ最下位。親番平均収支も▲535点で27位、本来チャンスタイムとなるはずの親番でほとんどいいとこ無しの状況ではどんな強者も抗えない。
先般、今季をもって契約満了となることが発表された。昨季の12月最後の試合、12月20日の第2試合、Mリーガーの殿を飾る29人目の勝者となったあの日を忘れることはない。あの勝利があったこそ今でもなお残るチーム連勝記録、4人で繋いだ5連勝がMリーグレコードとして残っている。
悔しさの波紋がユニフォームの皺となって刻まれた。その無念をネクストMリーガーに託して、和久津晶選手はチームから退く。最大限戦い抜いた和久津選手に敬意と健闘を讃えたい。

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次回は年間総合7位 U-NEXT Piratesのシーズンレビューをお届けいたします。